『闘争≠競争・インダクトロンファイト!!①』
『闘争≠競争・インダクトロンファイト!!①』
『インダクトロンファイト』
それは——『遊び』の中で
「——ウォォォォ!!! いけぇェーッ!! ビギナーダクター!」
「タフに快進撃っ! みせてやれェェェ!!」
(————"決める"!!)
そして、飛び交う声援の中。
他の参加者や老若男女の恩師たちに観衆が見守る会場中央。
既にその情熱が
その
(
『
そう。
これは遊びに向ける情熱——新たな『
(俺の————『ミズチマル』!!!)
その"芽生えの物語"である。
————————————————
そうした新進気鋭の——数ヶ月前。
「——ここまでだ。青年」
「……っ!」
「もはや進軍は止まらない。"王の前で
(くっ! ここで——『
興じる
格下となる札の効果を寄せ付けぬ『魔王』の軍団を操るアデス
「『隆盛進化』——それは格を上げる
「そして『
「で、あるからして……青年の操る格下を踏み越えて再開の——"
手札で口元を隠しては目で
机を挟んで向かい合う彼女らの動き、椅子に座ったまま。
けれど選んだ札を場に置く動作に合わせては映像が立体的に起こり、また風さえ演出に吹く多目的の空間で風前の灯火——今まさに青年の持ち点が吹き消されんとしている最終局面。
「終わりだ。我が眼前に
「……いや、まだです! ——『
「……」
「『自分の場に
だがして、諦めていなかった青年は恩師を引き寄せてからの
その一発逆転を狙った見事な一手が
「これで、今日こそ初勝利を——」
「"それはどうかな"——
「——なっ!?」
「『場の魔王を亡き者とし、新たにその格下二体をこの番のみ王として緊急擁立《きんきゅうようりつ』——そして、出現した新たな魔王の"特殊能力"……!」
「『
逆転されかけての痛み分け——いや、『ダメージを両者に与える半分にしておいて自分だけは損害を免れる』——
「! そ、それじゃ——」
「私は
「——……ま、負け?」
「はい」
その一連の応酬によって結果は——アデスの勝利。
「優位に於いても手は緩めずの、全力。それこそは私から貴方へ示す
不敗、暗黒大神、連戦連勝。
万能の神はやはり遊戯にも熟達し、様々な対戦形式で何十度めかの今日も負けが込む青年、恩師と遊べて楽しくも落とす肩。
「……それにしても強すぎません? 運が絡むものでも全然、勝ちの目が見えないんですけど……?」
「確かに勝負事では運に左右される要素も多々ありますが、"それ以外"の制御や選択が自立で可能な部分で最善手を打てれば——自ずと勝率は上がってくるものです」
「……そういうものです?」
「ええ。例えば"山札から引くもの"。引きたくない札を早めに集合から取り除いて、残す引きたい札を手に出来る確率を少しずつ上昇に導いてやることで……その"圧縮"は遠からず"奇跡の引き"を手繰り寄せてくれましょう」
「……確かに中身の数や内容が分かっている確率の話ならそうですが……ぐぬぬ」
(自分でもそうやってはいるんだけど……アデスさんの引きが強すぎる)
「……ふふっ」
その向上心がある故により良い結果を諦めきれぬ姿、愛しく。
また悔しげに札の片付けを始める青年を鑑賞して穏やかに微笑む女神は、熟練の己が初心者を負かし続けることに多少なりとも罪悪感を抱いたのか。
「……勝った・負けたで大して失う物はなくとも、それでも競技や対戦は勝てないと気も落ち込みますね?」
「……誰のせいだと思ってるんですか」
「ごめんなさい、我が弟子。口を尖らせる貴方の、そうした姿も『見たい』と思ってしまえば私で負ける気も起きないのです」
「……」
「何より先ほど言ったよう『敗北を演じる』のも競い合いに於いては『相手を軽んじる』一種の失礼であるからして……でしたらもう少し初心者でも勝ちを拾える、"上位に参入し易いもの"はどうでしょうか?」
「……?」
権能によって自身の山札を暗黒に仕舞い込んだアデスは其処から入れ替わるような形で"
「"勝利への渇望"こそはやはり身を動かす原動の力。貴方が意気軒昂ですと保護者の私も嬉しくなれますから、また色々と支援でお付き合いしますよ」
「……これもカード——札の遊び?」
「はい。これまでに見る限り、貴方がする札の切り方も思い切りは良く、十分に私の好む
「……『インダクトロン』?」
「然り。『インダクトロン』——先までの札と同じ製造会社の扱う"
青年の読み上げたそれこそは実験都市で大いに人気を得て昨今も盛り上がる"玩具"、時に趣味の名。
目標もなく、暇を持て余してもいるが故で誘われるままに間もなく青年も飛び込むことになる——"新たな世界"との
「完成させたそれ自体を操作して戦わせる遊びが人気で……けれど、"勝ち負け"や"他者との比較"なしに組み立てては飾る平穏な模型趣味として純粋に楽しんでもいいですから——どうです? 我が弟子」
「また貴方と私で楽しく、一緒に遊んでみませんか?」
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