『世界で最も自由な者①』

『世界で最も自由な者①』





「それは世界で最も——"自由についてを悩む者"」





 未来視に頻発する"見落とし"、演算のしきれぬ"無明むみょう領域"。

 転じては即ち"世界に忍び寄る破滅の気配"や"己の崩御可能性"。

 それら宇宙を脅かす要素を現世に認め、けれど現実味の帯びるものと視野に入れつつも『』歩くのは——大神。




「因りて今も、"無限の鎖"が如きで悩みは絶えず。けれど『それはそれ』として——」




「——水着仕事みずぎしごと穴場あなば冬場ふゆば


「そして光の神は肉感的に寒さを知らず——……むぅ。われながら"隙間ニッチを攻めたい発案"でした」




 まさしくぎんが如き光る長髪は頂点で重力おそれぬ勇気の稲妻、整えた前髪では王冠を模した髪留め。

 右目は銀、左は濃いめの褐色で見る今に、過去に、未来。

 自らが整形デザインした神秘的な長身美女の艶姿あですがたに娘の選んだ白い羽衣も良く馴染み、熱肌ねつはだに接するは『川遊び』も想定しての水着。




「"己のさんとすること"のためにも楽しく、頑張って」


「"心のまま"の『自由に』とはまさにこのようで——あるのでしょうかねぇ……?」




 水着。

 内側に着用するそれを流用しては多様の『モデル』的な——『グラビアアイドル』としても活動をするソルディナ女神。

 それは市井しせいまぎれ、企業のトップ一従業員いちじゅうぎょういんふんして働く、アレ。

 自らの子供の頑張りを確認する意味でもこれまで度々にやっている体験の、ソレ。

 なので今回は『グラビアアイドル』の頂点に立とうと下積み一つの撮影を終えた、その帰り道——夕刻に差し掛かる森で彼女は思った。




「またしかして"苦悩"と言えばソルディナ。今の吾が身は"善良に思い焦がれる女神"なのですが……『』とは」




 好敵手に対して『善良の神にも相成あいなれる』と宣言した手前、ならば『善』とは何かと。

 それは当初、"暗黒の大神に警戒を緩ませよう"との意で口から出た"形ばかりの表明"に過ぎず——けれど、"大真面目でもある神"。

 "小煩い娘"も——『シャイニング当て身』『なんのシャイニング当て身返し』『スーパーシャイニング当て身』『きゅうん』で寝かしつけた今を"好機"と。

 独言が良く響いて波の返る"孤独"に身を置き、"内省ないせい"で以ても考える。




「……? 難しいですね? それこそ多く関係して語られる『正義』のように他者を守り慈しんでは、時に"傷付ける"ことも出来よう概念」


「……『善良』や『正義』が『悪』や『誤ち』の"叩く棒"として用いられることも考慮すれば、その広く命が"内に有する攻撃性"をどれだけ"抑えられる"——"意識して理性的に制御できるかがかぎ"でしょうか?」




「……そう出来るのが『優しき』か?」




 腕を組み、圧力を受けて形を変える膨張の胸部。

 その大山が如きで女神の足元は見えずとも、どころか瞑目して口を波線のように動かしてはつまずきなく進む悩みの麗神仕草。




「……む〜う。"アカシックな記録きろくとしての自己"を参照しても取り扱いには細心の注意が必要となりましょうが……兎角」


「考え直すにしても此度こたびは"あの川水"を参考にしてもう少し、しとやかに。気を抜けば直ぐに漏れ出る邪神の色も抑えて……抑えて」




 特に当てもない、ぶらぶら。

 仕事の終わりで時間もあることだし暫くは"善良探し"に出かけよう。




「〜〜♪」




 森を行って、岩を跳んで。

 不意に立ち止まり、しゃがみ込む女神。




「難しいですね〜〜吾が子〜〜」




 自らの足下へ穢れのない神聖の熱に引き寄せられてやってきた白い狐や猫のような神獣を撫でる『よしよし』——。




此処ここにも其処そこにも彼処あそこにも吾が子——吾がが沢山〜〜♪」




「……でも、んですね。神王ボクも——魔王かのじょも」





「むぅぅ……そうした"小難こむずかしいことを考える担当"は『人類種じんるいしゅ』と相場を決めている——」





 だが、そうした穏やかな交流の時も長続きはせず。

 "自らに酔える"か、"酔って苦悩を一時的に忘れられるか"と。

 お忍ぶ世界の王が自然に笑みを浮かべようとしていた——"その時"。






「"いいから従え"!!」

「ひっ——ぃ、……ぁ——」






 聞こえる怒号。

 それに怯え、王の周囲から獣は離散。

 声の波を遡って入り組んだ数百メートルを先で木の幹が裏——神の目に付くは"人の群れ"と、それに囲まれ"襲われている少女"。




「……深々しんしんふゆ森林しんりんに似つかわしくないのは……"人間にんげん"。やはりの、吾が子〜」


「これは意見を求めるに丁度よく、ですが何やら"お取り込み"の様子で——」




 "危機にある一人の少女"。




「確か……"あの若者"も"一人の少女を助けよう"としていた——」






「や、やめ、て、くだ……——」






「——……"吾が子を助けよう"と」




 立ち上がる女神で呟き、その怪物で感情の読めぬ"くうの顔"。




「……それなら、やはりはの良い——上等です」




 誰も答えのくれぬ世界で『善』とは『良』とはの苦悩を抱えながら。

 往々にして『とく』の行いへと、改め臨むは神——神々の王。





「"善悪の試される"難しい場面だ。色々と挑戦のし甲斐がいはある」





 燃える光炎ほのお虹彩異色オッドアイ——此度の"標的"を見定める。



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