『魔剣(?)——ダメ、ゼッタイ②』
『魔剣(?)——ダメ、ゼッタイ②』
「——"刀剣の類い"を見つけたのですけど……」
口で言う通り、手では己が発見した『剣』を持つ美の女神イディア。
今まさに『魔剣』を主題の話をしていた師弟の前で結果的に"実物"となる一振りを掲げ、紫の電光が
(……"魔剣"じゃん)
「なので……どうすれば
「……事の
すると、程なくして冷静に応じたのはこの場の最年長である女神アデス。
弟子と魔剣を隔てるよう間に立つ大神の前、当のイディアから現状に至った訳が明かされる。
「はい。……今日は出掛ける前に貴方や我が友にもお伝えしたよう外部で友神と会い、今まさにその帰りで近くを歩いていたのですが……」
「……」
「……すると、今し方の辺りで何やら"力を放つ
「……そうして、"
「はい。大賢たる貴方へ判断を求め、可能ならその"対処"も願いたいと言う訳なのです」
「……
聞かされたアデスでは赤く暗い邪視が件の刀剣を流し見て、結わえた髪の弄りを一回、二回。
そこから数秒の間を置き、問題を持ち込んだ美神に視線を戻してから所感を述べる。
「先ず優先して危険性についてを述べますと『それほどではない』——"私にとっては対処が容易なもの"であります」
「……」
「また回収をした貴方の判断にも大きな過ちはなく。言うように女神イディアでも凡その"呪いを寄せ付けぬ備え"はあり——けれど、"触れるより先ずは報告"を入れるべきでした」
「……
「ならば必要以上を責めず、以後は何より自らと周囲の安全を重んじ……奇遇にも今まさに『
「ですので、此度の対処は我が方で引き受けますがしかし——女神イディアでも次からの、"更なる注意"を願います」
「……はい」
極神の二柱から護られる美神の判断に計算違いはないとしながら、しかし『何が起きてもおかしくない統合宇宙では自他の安全に一層で気を払え』との意を告げる——低めの音程。
その冷厳の御言葉の後では頭を下げていた美神に手招きで『剣を見せよ』と身も寄せさせ、責任者の咎める行為は此処で区切られ終わる。
(……自分も気を付けよう)
そうして、厳しい雰囲気を感じ取った青年の手前。
神の眼力で物の詳細を読み取ったアデスよりの刀剣分析、口に出される鑑定結果。
「……ふむ。それこそは星の生み出される圧や熱といった"宇宙の力によって鍛えられた
「作製の理由は兎も角で"何処かの神"が作り、誰かに授けては当初の担い手より"流出した物"だろう」
それは真実、"
状況から鑑みて十中八九は『大敵の暗黒そのもの』か『側に置く川水』を標的とし、要は『場を掻き乱すための押し付け』だろうとは——言わず。
"絶対的存在から明確に狙われている"と無闇に教えても、"恐怖させてしまうだけ"。
だから未知の化身は多くを語らぬまま、巻き込まれた女神を案じて発する言葉。
「……女神イディア自身に、些細なものでも変わった所はありませんか?」
「はい。現状で"不調"と呼べるようなものはなく……けれど」
「……」
「釈明としては、私が思わず好奇心で物を手にしてしまった最たる理由でもあるのですが——"
「刀剣を手にしてから?」
「はい」
「音声の内容は?」
「『
状況を掘り下げてみると美神が掴む物からは『
「……ならば、
「"私の"……」
「『
物騒な語も聞かれ、けれど乱れず慌てぬ長命の者たち。
「……その
「はい。今の所は……あ——後は、『
「……"
「いえ、特には。……理屈は分からないでもありませんし、正直に言って過去に"そういった事"を考えたこともあるには……"ある"のですが」
「……"排除を許さぬ己がいる"?」
「はい。今では、"恐ろしく"」
「……確かに、"それも一つの手段"と思いつつ」
「ですがそれでも、やはり"他者の犠牲によって理想を叶えようとする姿勢"そのものに"疑問"は残りますので……"
やはり場数も踏み、博識がゆえ。
こうした事態でも落ち着いた神々で事態は着実に解き明かされ、解決に向けても話は徐々に進展を見せよう。
「……了解した。であれば依然として危険性は低く」
「……」
「"
「実を言って
「単純に持ち主の言動を読み取って分析。其処から算出されたある種の扇動・直線的命令が聞こえるだけの単純な作り」
「後は精々、触れた手から
差し迫っての危険がないことを明確とされ、青年でも次第に流れる水や風にそよぐ葉といった風景の音が意識で安堵に思い出される。
「状態を総評して——"流石は女神グラウ"」
「彼の柱が威光の前では宇宙の魔剣も波を発するのみ。殆どはただの
(……大丈夫そうかな?)
「他で際立った異常は?」
「ないかと」
「でしたら、予定通り此方で対応策を検討しますので僅かの間、その場での待機を」
「はい。恩に着ます」
そうしてイディアは了解の頷きを示しての立ち位置を動かさぬ待機。
けれども青年が送る不安げな視線に気付いては髪の房を薄い緑から黄色に変え、気を和らげながら無事を示す意味でも笑みを浮かべての雑談。
「——我が友。私としては大丈夫だと思うのですが、貴方から見てどうです? 危険な様子はないでしょうか?」
「は、はい。こっちからも特に問題のない、いつものイディアさんで——剣を持つ姿も様になっているようにしか見えないです」
「……ふふっ。お褒めの言葉を頂いてしまいました。有難う、我が友」
「……
青と黄の交差は腕を組む大神女神の開口によって其処で遮られ、魔剣の対処を担う彼女によって状況はまさしくその段階へと移行する。
「……こほん。先ず何よりそれらしい物に触れず。適切に距離を置くことは大切と言い」
「だけれども、今のように"事情があって己が曰く付きを預かる場合"には——どうするか」
「丁度いい機会ですので、そうした状況判断によって危険物と相対した時の、"処理"を」
「"実際の一例"として、私がお見せしましょう」
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