『女神ソルディナ①』

『女神ソルディナ①』




 ある日の森。




『——くうか〜ん』




 揺ら揺らと、川を目指して進む光の球。




空間くうかん




 徐々に形を得て、響くのは歌声。




「毎度、空間売り屋」


「領土に領海、領空にも何彼なにかと便利な空間はいらんかね〜」




 くぐって三つの光の輪。

 通る己が溶ける風の中で行われる——物質世界への最適化。




「……ふっふっふ。好みのリサーチもかんぺき


「"取り込む"ならやはり似姿にすがた、似た振る舞いこそがさいてき




 己の気の向くまま。

 すらりと伸びる背で声色は高く、かかとも高く。

 自らが過去に作りし戦争の神々にも似た銀色を各所に持って。

 その起伏が豊かな形は急にかがんだかと思えば、道端に並んで咲く二輪の百合花ゆりばなを指によって小突き——愛でる笑顔で頷く者。




自称じしょうは『ボク』、他称たしょうは『キミ』として」


「性格は"穏やか"に、"柔らかく"」


「"ひとを愛する神"——それは、元々もともと




 女神の形で『ギチギチ』に張り詰める胸を"溢れぬよう"収めて一回転、見得を切る。




「ふんふん……ふふん♪」


「"迫る全知全能"とは即ち——"目指す色々いろいろ"」




 自らを規定する境界線さえブチ破って"道化神トリックスター"。

 息巻く膨張の化身はおのが権勢を示す意味でも『きれいめの若娘ギャル姿すがた』で吠えよう。




「『"妖艶ようえんなお姉さん"でもある』ということで——その相成あいなほうり、また実際に成ることもあたうのだ」


「だからこそ、"我ら"は言ってやらねば——えぇ? 大神ガイリオス! なぁ!? 大神アデス!!」




「『完全』を名乗りながらそうは成れぬものへ——"エッチなお姉さんにも成れずして何が全知全能か"ッ!!」




「"ね"! "偽りの完全よ"!!」





「クックックッ……! フッハッハ!!」





 背後の木陰で尾行をする娘の女神ラシルズへと妖しく歪めた口元を見えるよう——。

 更にはその後ろか何処かで潜伏して様子を窺っているのであろう暗黒女神アデスへも挑戦的な笑みを見せて——かれた川水えさに飛び付こう。





「フォハハ——いや! むっふっふ〜♪」





 鼻歌うたいし虹彩異色オッドアイ

 それは『おう』——王、時々、姫気分。



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