『第二十四話』
第四章 『第二十四話』
(た、多分——当たった……!)
暗色の蓑で身を包み、伏した体。
頭巾から覗く眼光は青く、冷ややかで。
前に向けて盾を構える様は如何にも"狙撃手"の青年。
(きっと『掠めた』程度だけど、
突如として切り替わった視界の、その光景。
昇る蒸気——"奪われる光の熱"。
破竹の勢いで勝敗を決しようとしていた戦いの神に損傷は只の一つもなく。
されど、その背で射撃は爆ぜ、集中の意識を削いだのも間違いなく女神の放った『水』であった。
(立ち位置からの座標と時間、ピッタリ)
(そしたら——"次"!)
再び今に実を結ぶ、恩師との鍛錬。
有事に備え、学び知った対神の技『対光神戦闘』は——敵方に後手を強要する超高速の電撃戦に追従が出来ずとも——標的の出現地点を予測して撃つ偏差射撃。
隠れ蓑に身を包み、冥界に満ちた暗黒の壁を遮蔽物として気配を潜めていた水神。
彼女という青年は偉大なる盾を『銃』のよう変えて指示に従い、方々に動いては暗黒を残す自らの師を頼りの
そうして訓練で教えられた各地点で今、『先に置いた重水の狙撃』によって見事——光神の熱気に水の弾丸を当て、僅かながらにも"敵の力の象徴たる熱量"を確かに削ってみせたのだ。
(次——)
「——水を差すのか」
「我ら極みの神の——"神聖なる戦い"に」
だがそして、達成感に喜び騒ぐ暇はなく。
(——"次"だ……!)
何やら呟く光の大神ゲラスを——揺らめく銀の炎が如き威容は真面に見れば『毒』であるが故、意図的に——無視して、伏した体で横に『ゴロリ』と転がる乱入者。
露見した狙撃地点を即座に捨て、現在地で暗黒が形作る足場の縁——崖下を目指し、素早く移動。
「決して——"満たされぬ"」
「『大戦』などという『色塗り
「
対する戦神は狙撃の始点に一瞥もくれず、けれど隠さぬ苛立ちの色。
生涯で初めて湧き立つ畏敬の念、その矛先を濁され銀の怒髪——逆巻の光炎。
『無力ながらも目障りな羽虫の如き水』、『些事をどうしてくれよう』と理知を携えながらに憤り——。
「————ッ"」
然りとてやはり、光の眼下。
不安定な丸底人形の如く妖異に立ち上がる——未だ健在の暗黒大神。
目下最大、最重要にして最も危険な
かと言って、"微々たる熱を奪いし冷却水"の存在も不快で——難易度は更に上がり——『上等』と。
"怒り喜びながら"に舌を打っての神は吼える。
「——フッ!」
「"
掲げた片手。
「——"失せよ"——!!」
視線送らぬ片手間に——
(次——)
だが、五本の線を描き、光線。
青年に差し向けられた攻撃は取り分け暗黒で圧を掛けられながら速度を大幅に減衰。
因りて重圧を撥ね除けて進む先——既にルティスは迷いなく崖から身を落とし、下へ向かって急加速。
青の青年へ向かった線は直前で渦の中に標的を隠されて虚しく空を切り、勢いのまま昇る天で爆ぜ——広く、冥界を照らす。
(立ち位置を基点に——左へ)
渦から転び出る女神はそうして、次の狙撃地点。
的確に用意された姿勢補助の暗黒足場で即座に俯せとなり、伸ばした盾の右腕に左手を添え——震えを制御の微調整。
大神同士の頂上決戦——師が一方的に押し込まれる状況に理解が及ばずとも尽くす己の最善で再び暗黒の標べに従い、引き続きの狙撃を先んじて戦神の出現場所へ置こうと水を——。
(————"!")
装填した水、奇妙な揺れ。
盾からの警告によって騒めく肌感覚——"迫り来る波動"を感知。
(何か、
従って、青年は直ちに攻撃再開を中止。
優先して緊急時の取り決めに従おうと努め——けれど、自身の判断よりも速くに動き出す盾に引かれるまま——"流れで構えさせられる防御の姿勢"。
(——る————)
遅れて、次に認識が盾越しで見るもの——"獣の牙"。
(————っ"ッ!?)
気付けば光神の守護によって光神の攻撃を受け止めた女神の細腕、華奢の体に伸し掛かる重圧。
先に冥界で降り注いだ光は変じ『光子の白虎』と成りて獲物に飛び掛かり、今まさに牙を剥いている。
「——"、———、、—ッ——!!、!」
齧り付く赤白の光は熱く。
護られた輝きの右腕に喰らい付かれ、『押し負けん』と踏ん張る青黒の女神。
(こ、————っ"!!)
(————の"——ッッ!!!)
込める意地に自責に、言語化して考える間のない色々の思いを乗せ——決死に踏ん張って輝く青色。
盾の表面で回す渦の勢い——相手取る"虎の形をした光"。
力一杯に振った腕で、思いきりにその——"命でない兵器"を弾き飛ばして。
「————"!??"」
けれども敗北の虎、飛び散った光は再び集まりて変じる『多頭の龍』へ。
その瞳で生まれる数多の輝き——『銀河複数』に囲まれては『川水』など余りにも無力。
(
四方八方、
究極龍で漲る電光。
信仰によって手早く得られた幻想の形は、掛けられた費用の少ない
先の防御が後を引いて未だに仰け反る青年へ——"今向かえ"、"光の集中砲火"。
「——————
だが放射の直前——鈍い音。
"超重力"で閉め落とされ、上下の顎でぶつかる龍の口。
また同時に例えでなく、空間で実際に沈み込む怯えの色は青年。
「"————……"」
真下に開いた落とし穴。
川水の玉体を引きつけ——受け止める柱は暗黒。
(——、————?、?)
『——遅れを許せ。我が弟子』
(——! アデ————)
『そして、信じ続けろ』
『この私を』
穴の閉じる間際で口も動かさず。
しかして高速通信で短文を伝え残した後——。
『——"!"』
一瞥の邪視は穴の外。
口に光漲る龍ら——捻り潰して、鏖殺。
『——"!!"』
だが続けて、息つく暇もなく——鳴り響く"警告"の音。
それ、
救出して小脇に抱えていた青年女神を真横に開けた渦の中へと——。
「は、はい——わ——————!」
逃すために放り込んでの——直後。
「
入れ替わりで次元に飛び込んだ——超光速の刺突八百万。
瞬きの間に四肢を貫かれ、空間で釘付けとされるは暗黒神。
「だがそれでも、貴様にとっての『
「"命綱"とするには——余りに頼りない」
冷や水がなんだ、猛攻は止まぬ。
拳が通り抜けて加速する
殴打を女神の腹に
「足し引きでは貴様の
「今のオレは超光の大神。
「————訳もない!!」
撃ちきる衝撃、女神を飛ばし。
光神の纏う赤白の鱗粉——光の散弾、乱反射。
範囲攻撃は止め処なく、主要の的の暗黒少女を撃ち続ける。
(————!!、!?)
そして当然、散布された光は青年の下へも。
粒は集合して鋭利の
熱の余波に晒され、蹲る伏兵の——"宇宙災害"に備えて"防災頭巾"替わりとした盾の上、振動の音を立てながら紙一重に通過。
「決定的な綻びが生じた——瞬間!」
「
余波によって邪魔者を牽制しながらも集中的に暗黒神を狙う光輪の群れ。
削られて行く不可視の防御輪郭で摩擦の音は金切り声の如くに火花、散らし。
「果たして!
熱風が起こす竜巻の中心で翻り、銀の渦を描いて揺らめく戦神。
加速——摩擦——鍛造。
自らの脚に束ねた光輪を"一振りの刀剣"と更に戦時中で鍛え——燃えよ長脚、極みの鍛治神。
「ぬ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"————アデスッ!!」
輝ける炎熱——"大回転"。
大神の重ねた防御膜を尚勢いで削り、薄皮とし——。
「————
寸分違わず——斬り込む刃。
比較的明るい肌の白色を覗かせた女神の首筋へと差し込まれる光の線は、凶刃。
面輪と肩の隙間を駆け、首の切断で以て『光の溢れる勝利とせん』と走りに、走りて——走る
「——————"!"」
けれど。
その走った罅は鋼鉄めいた女神の玉体でも、またその纏う防御のものでもなく——今まさに光を超えた速度で進んでいた刃。
即ち、その攻撃を的確に肩と顔で挟み込むような不審な動作で。
"鈍足女神"の首元で挟まれると同時に微小ながらも罅を走らせたのは——。
不可解にも何故か。
攻撃に晒された暗い闇でも黒でもなく——剣で伸ばした光の方であったのだ。
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