第9話 delete アライグマ

ジャングルちほーへ向かう道中にて

『あの、途中で止めておいたバスを回収したいんですが……ラッキーさんが一緒にいるので……』

『構わないけど、電池ないんでしょ?』

『電池ならこの2号車に予備が積んであるわよ。』

『よくわかりましたね……!』

『さっきちょっと見えたのよ。』

『あれがアライさんたちのばすてきかい?』

『のだ。あれに間違いないのだ!』

『ラッキーさんもいますね。』

かばんが指し示した先にはラッキービーストが佇んでいた。

『カバン。待ッテタヨ。電池ガアッタンダネ?』

『はい。おまたせしました!』

早速車体前方のちょうどフロントガラスの下にある電池ボックスから電池を交換した。

ガッチャーンガッチョーン

ドルルルルルル……

『やったー!動いたよ!わーい!わーい!』

『アンタ何回もこれみてるんでしょ?よく飽きないわねぇ……』

はしゃぐサーバルにカラカルはため息混じりに言った。

『あはは……』

かばんがそのやり取りを見て笑った。

『よし、じゃあ出発しようか!』

『『おー!』』

しばらく車は道なりに進んで、ジャングルちほーはこはんエリアにたどり着いた。

『それじゃあ、この1号車に積まれたバケツを使って水をさばくに持っていきましょう!』

それぞれバケツに水を汲み、バスのトランクに積んだ。

その時だ。

『あれ?かばんじゃないか。こんなとこで何してんだ?』

ヒグマが声をかけた。

『あっ、アライさん達はな…うわっ——』

『ダメだよアライさ〜ん』

『そうだったのだ……』

『お前ら、まさか砂漠の奴らをなんとかしようなんて考えてないよな?』

流石は野生の勘。と言ったところだろうか。

『あっいや、その……』

『図星なんだな。やれやれ……お前の気持ちはわかる。だがな——』

ヒグマがいいかけると

『でも私たちだけでどうにかできる相手じゃありませんよ。』

キンシコウとリカオンだ。

『流石にオーダーきついですよ……』

『お前ら……確かにそうなんだが……ハンターじゃないフレンズをこれ以上巻き込むわけにはいかない。』

ヒグマは難しい顔をしていた。

『僕からも、お願いします!博士たちからの許可はあります……』

『あいつらのねぇ……』

『でもヒトの知能は必要になる気がするんです。我々だけでは正直手に負えません……』

『そうやって!ハンターが弱音を吐いちゃ—いや、しかし……』

ヒグマはしばらく考えて

『わかった。でもどうなっても知らないぞ……』

『あ、ありがとうございます!』

『その言葉はとっておけ……!』

『素直じゃないっすねぇ』

『う、うるせい!』

そんなやりとりの後、ハンターらを乗せたバスはさばくへと向かい直した。

『砂嵐の中にたくさんの砂セルリアンがいるのは少しだけ見えたんだが、なかなか近づけなくて……』

『ええ僕たちもそうだったんですが……水辺に移動した砂セルリアンが固まって一つの大きなセルリアンになると思ったんです。

ここ最近は水辺に大きなセルリアンがいることが多かったので。』

『なるほどねぇ、最近じゃいろんなところで砂嵐の目撃談もあったし、その線で間違いは無さそうだね。』

そうこうしている内二台のバスはさばくへと到着した。

『それじゃああの砂嵐の水をかけたらいいんだねー?』

『まかせるのだ!』

『お願いしますね!ハンターのみなさんは待機して、セルリアンを叩きます!』

『わかった!』

『いっくよー!』

サーバルのジャンプ力ゥ…ですかねぇ……

1m〜2m跳ねて水を撒いている。

やがてセルリアンは一つになり始めた

—ウガァァググゲギギギ…—

『行くか!』

—ガキンガキン!ガガガガッ!—

『なっ……!?』

『効いてないのか!?』

『近づけるようになったと思えばこれか!』

『ギンギツネ……アレ使ってみようよ……!』

『ええ!』

キタキツネに言われながらギンギツネは小瓶をセルリアンに投げつけた。

『これで……』

—ガァァァァァァァゴァグゲゲ……—

セルリアンはサンドスターの光を放出しながら縮小していき、最終的にフレンズより一回り大きいくらいにまで小さくなった。

『これなら!』

『うぉぉぉぉおおおおおおお!』

—パキン!—

『何ぃ!?』

『やっぱ固すぎますよ。』

『どうすれば……!』

『フェネック……』

—バシュッ!—

『アライさん?まさか……っ!』

フェネックが手を伸ばした先にはセルリアンに向かうアライグマがいた。

『やってやるのだっ!』

—ガガガガッガキンガキン!—

『まだまだのだぁっ!』

斬りかかるアライグマの目が輝きを放ち、身体からサンドスターが放出された。

—ズバァァ!—

『なんて力だ……!』

—ギゲゲゲゲェ!グゴゴゴグェギゲゲ—

『フィニッシュはひっさつわざで決まりなのだ!』

アライグマは武器を思い切り振りかぶり叫んだ。

『アライさん!クリティカルデッド!』

—ギガウグゲゲ!?—

アライグマの攻撃はセルリアンを完全に沈黙させたのち、セルリアンを消滅させた。

『うっ!?くっ……はぁ……』

その後着地したアライグマはその場で膝をつきうずくまった。

『アライさん!?』

『ハァ……フェネック……アライさんはもうダメなのだ……』

『え?そんな……やだよアライさん……』

『何よ、アライグマの言ってることは本当みたいじゃない……!』

アライグマの身体から放出されるサンドスターはみるみる量を増していた。

『フェネック……忘れないでほしいのだ。フェネックが元気に、ハァ……生きてさえいれば……アライさんは、満足なのだ。だから……頼んだのだ……!』

アライグマはフェネックの手にケースに入ったナイフとリボンを押し付けるように手渡し、消滅した。

『こんな……こんなことって…!』

フェネックは泣きながら受け取った形見を抱いていた。

『我々ハンターの責任だ。自分たちは……』

『人の知能も笑わせますね。僕は……!』

『かばんちゃん……』

アライグマの消滅は一行に暗い影を残した。


続く

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