第10話 終幕
『アライさん…』
アライグマが消滅し、失意の中バスは図書館への帰路についた。
『……だから。だから言ったんだ!巻き込みたくないと!』
ヒグマは激昂していた。
『フェネック!お前が……っ!』
ヒグマがフェネックの胸ぐら掴んだ。
『ちょっと、やめなさいよ!』
—パシィッン!—
『……はぁ!?』
『……頭冷やしなさい。』
『うぅ……』
『どうすれば……』
『モウ直グ、としょかんダヨ。かばん。』
ボスの無機質な声に我に帰ったかばんは機械はいいなぁという考えが頭をよぎった。
『お前たちの帰りを待っていたのです。』
『出迎えなのです。』
博士と助手がとしょかんの入り口前にフワフワと浮いていた。
『ありがとうございます……セルリアンはなんとかなりました。』
そそくさと立ち去ろうとするかばんを博士が呼び止めた。
『待つのです。かばん。お前は何かを隠しているのです。』
『お見通しなのです。我々は賢いので』
『はは……やっぱりそうみたいですね……』
『実は、アライさんが、消滅しました……』
『消滅?動物に戻ったのではなく?』
『それはおかしいのです。』
(もしかして失敗したのですか……?)
(おそらくその可能性が高いのです。)
『サンドスターを使い果たしたのではないのですか?』
『……何、その言い方。気に入らないんだよねー……』
『フェネックさん、落ち着いてください……!』
『ふむ、消滅した以上我々にはどうしようもないのです。』
『今は目の前の脅威が去った事に——
『だーかーらー……!』
—バシュッスババッ—
『……っ!?』
『何をするですか!』
『あーもう!フェネックやめてよ!』
サーバルが制止し事なきを得た。
『……もういいよ』
『あ、ちょっ、フェネック!?』
フェネックはさばくへ駆け出して行った。
『帰るのかな……?』
『だといいんだけど……』
『私たちも温泉に戻るわ。お客さんいるだろうし……』
ギンギツネがそう言った後『そのお客さんはもういない』とキタキツネはいいかけて、や
めた。理由はわからない。
————————————————————
2人は宿に戻った後、雪かきを始めた。
『あっ……』
雪の下には使い込まれた風呂桶とタオルがあった。
不思議とソレをギンギツネには見せてはいけない気がしてそっと雪の中に隠した。
—————————————————
フェネックはさばくのある場所に向かっていた。
『ここ……アライさんと初めて会った場所だよ……覚えてる〜?』
そんなことをうわ言の様に呟くフェネックの脳裏には思い出が走馬灯の如く流れ始めた
『私たちでヒーローになろうよー』
『フェネックが…元気で…』
『そうだよ、最初の約束……破ったのはアライさんじゃない。ふふ……でもいまなら、私たち一つになれるよ〜』
——ズシャァッ!——
『ウッ…ゴブッ…ガハァッ!』
完
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