第5話 Aの決意/Sの暴走

プレーリーの一報を受け、こはんエリアへと向かうかばん達。バスを使って2〜30分程度の時間だが、気持ちの焦る彼女らにはとても長い時間に感じられた。

『あ、あれでありますよ……!』

『かなり大きいわね……せめて、小さくできれば……』

(そうよ、小さく……何かつくり出せれば!)

ギンギツネは少し考えた後、続けた。

『ねぇ、もしセルリアンの隙をつけたらこの小瓶に破片を詰めてくれない?』

そう言いながらギンギツネは小瓶を取り出した。

『なるほど、何か、思いついたんですね!』

『がんばろー!』

『うん、頑張ってみる……!』

『そうね。なんとかして奴の隙をつきましょ!』

—だがどうやって?—

一同は同じ事を考えていた。ただ1人を除いて。

『この先に落とし穴を掘るでありますから、みなさんは誘導していただけないでありましょうか!?』

『ああっ!確かに、プレーリーさん、穴掘り得意ですもんね!』

かばんがうなずきながら言った。

『じゃ、かばんちゃん!いつものだね!』

かばんの中からマッチを取り出して火をつけるかばん。

『やっぱり慣れない……』

かばん以外は火から身を引きながら言った。

『準備出来たであります!』

『よし!行きますよ!』

かばんが松明で誘導してしばらくすると

ズドォォォン……パラパラ……という轟音を立てセルリアンは穴にはまった。

『やったであります!』

『今だよ!みゃみゃみゃ!』

『『おー!』』

全員で攻撃しながらセルリアンを削っていた。その時だった。

『早くそいつから離れろーーッ!!』

かばん達の前に現れたのは例のマントに身を包んだフレンズだ。

『ああっあなたは……!』

『早く離れるのだッ!!……ハッ!?』

『その喋り方……もしかしてアライさんですか?』

かばんが目を丸くして尋ねる。

茂みの影でフェネックが『やってしまったね〜』と言いたい気持ちを必死で抑える中、謎のフレンズは言った。

『ぐぬぬ……バレてしまったのだ!そうなのだ。アライさんなのだ!』

そう言いながらアライグマはマントを脱ぎ捨てた。

意外にもあっさり認めたアライグマに、フェネックは少し驚いていた。

『あの、アライさん。後で、お話があります。』

『?、まぁわかったのだ!かばんさんの話ならいくらでも聞くのだ!』

そう言うとアライグマはセルリアンの手足を切断、イシを一突きして撃破した。

———少ししてから———————————

『話とはなんなのだ?』

『気になるねーアライさーん』

アライグマとフェネックがかばんに尋ねる。

『えっと、アライさんの持ってるその武器のことなんですが……』

かばんが刃物を指差して言う。

『あぁ、これのことなのだ?それがどうかしたのだ?』

『実は、その武器、あまり使わないほうが、いえ、絶対に使ってはいけないんです!』

かばんが真剣な眼差しで言った。

『ど、どういう事なのだ?』

アライグマはかばんの肩を掴みながら訊いた。

『この武器は、恐らくですが使用者の……つまりアライさんのサンドスターを著しく消耗させてしまうんです……!』

『それって……!アライさんの寿命が無くなっていくって事!?』

今までに見せた事もない、尋常ではない程に取り乱したフェネックがかばんに尋ねる。

『アライさん、早くそんなもの捨てよう?』

半泣きでアライグマに言った。

『いや———』

『えっ?』

『嫌なのだ!』

『どうして?死んじゃうかも知れないんだよ!?』

『フェネック、ごめんなさいなのだ……でも、この力がなければ、みんなを、何より……フェネックを守れないのだ!』

『ッ……!』

言葉につまるフェネックをよそにアライグマが続ける。

『アライさんはこの力が使える内に、できるだけ、いや、全てのセルリアンを倒してみせるのだ!パークの平和は、アライさんにお任せなのだ〜!!』

『どうして——』

フェネックが泣きながら言った。

『どうしてアライさんはそんな簡単に命を投げ打てるの!?私は……私は……アライさんがいなくなったら……っ!』

『すまないのだフェネック、でも——』

『でもじゃないよ!もっと私の気持ちも考えてよ!!』

そう言うとフェネックは走り去って行った。

(……フェネック、すまないのだ、でも今更やめたところでアライさんに残された時間は少ないのだ。せめてフェネックが安心して暮らせる世界を、作らせて欲しいのだ……)

アライグマはそんな事を考えながらも、フェネックが気に掛かって仕方なくなり後を追った。

あまりに重過ぎてかばん一行はしばらく静観していたが、我に帰りバスで後を追った。

『この先には確か……さばくちほーです!』


物語の次なる舞台はさばくちほーだ。


続く

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