第6話 戦場
『追いかけましょう!』
『気をつけるでありますよー!』
激情のまま走り去ったフェネックを追うべく、バスに乗り込むかばん達。さばくちほーに向かう途中、としょかんに差し掛かった時、ギンギツネは言った。
『私は、としょかんに残るわ。』
『ど、どうしてですか?』
困った様子で問いかけるかばんにギンギツネは答える。
『みんなで回収した、セルリアンの破片を使って発明が出来そうなの……私にはサーバルやカラカルのような攻撃は出来ないし、かばんほど瞬時に判断は出来ない……だから、私は私の《場所》で戦いたい!』
ギンギツネの瞳は真っ直ぐにかばんを見つめていた。
『……わかりました!それでは、これを!』
かばんが小さい何かをギンギツネに投げ渡す。
『これは……鍵?』
『はい、二号車の鍵です。ギンギツネさんなら使いこなせるかと。』
『わかったわ、ありがとう!』
『……ギンギツネが残るなら、ボクもそばにいたい。同じ場所で戦いたい!』
『ちょっと何言ってんの!?わがままは——』
『わかりました。ついていてあげて下さい!二人なら寂しくないでしょうし!』
『ちょっと、からかわないでよ!……でもまぁ、悪い気はしないわ、ありがとう。』
こうしてギンギツネ、キタキツネはとしょかんでセルリアン対策を講じた。
『では、行きますよ!』
『うみゃー!』
『アライさんも乗せて欲しいのだ!』
アライグマは叫んだ。
『アライさん……わかりました!一緒にいきましょう!乗って下さい!』
アライグマが乗り込み、かばんがアクセルに足をかけた。その時だ。
『待つのです。』
『さばくには行ってはならないのです。』
博士たちがかばんの前に降り、そう言った。
『どうしてなのよー!?』
カラカルが尋ねる。
『さばくちほーに行ったハンター達から報告があったのです。』
『さばくには大型セルリアンがいるという話なのです。』
『それなら戦闘する気はないので、大丈夫かと…』
『それはこちらが先に発見できた場合の話なのです。もし先回りされれば負けは必至なのです。』
『それに、報告はそれだけではないのですよ。』
『"さばくちほーには黒い砂嵐もあった。サイキョー過ぎるから近づくな"ヒグマからの言伝なのです。』
『黒い砂嵐……?』
『そうなのです。さばくは今とても危ないのです。近づかせるわけにはいかないのです。』
『我々、長なので皆の安全も守るのです。』
『なら、尚更さばくに行かなければなりません。』
『どういう意味なのです?』
『さばくにはフェネックさんが向かってるんです……!』
『なるほど、先程走り去った影はフェネックでしたか……』
『しかし……。』
『お願いします!絶対みんなで帰ってきます!だからここを開けてください!』
『そんな事は当たり前なのです。』
『必ず帰ってくるのですよ。我々は料理を……いえ、あなた達を待っているのです。』
博士たちはそう言って道を開けた。
『ありがとうございます……!』
(戦う場所……か。)
ブロロロロォ……という音と土煙を立てて車はさばくへと向かう。
———ギンキタサイド—————
『早速始めるわよ……』
5つの小瓶に詰められたセルリアンのサンプルを細かく確認しながら、ギンギツネは様々な物質と合成していた。
『うーん、ダメねぇ……』
ギンギツネはため息をついて言った。
『ねぇ、何か手伝える事ない?』
キタキツネが尋ねた。
『珍しいわね。あなたがそんな行動的になるなんて。』
ギンギツネは少し驚いた様子で答えた。
『うん。ボクもみんなの為に、闘いたいって思ったんだ……!』
キタキツネは真剣に答える。
『そっか……それじゃ、今から言うものを持ってきてくれない?』
『わかったよ。ボク、覚えるのは得意だから……!』
『ありがとう。それじゃ…… 鉄粉、水、バーミキュライト、活性炭、食塩、ニッケル、ビスマス、をそれぞれ20gずつお願い。』
『わかった。博士たちに聞いてみる。』
『頼むわ。』
——数分後————
『持ってきたよ!ギンギツネ。』
『ありがとう。私の仮説が正しければこれで……!』
ギンギツネは持って来てもらった物質を合成した。
『どうかな……?』
『や、やったわ!成功よ!見て、キタキツネ!』
そこには収縮していくセルリアンの破片があった。
『サンドスターと化合して収縮する……その名も《チヂコマールZZ(ダブルゼータ)》!』
ギンギツネは試験管に詰めた物質を掲げて自信満々で言った。
『変な名前……しかも聞いたことある気がする……』
『細かいことはいいの!とりあえずかばんに合流するわよ!』
ギンギツネは部屋から出ながら言った。
『博士!行ってくるわ!』
そう言った後、ギンギツネとキタキツネはバスの2号車に乗り込み、アクセルに足をかけた。
(待ってて、かばん!今から行くわよ!)
続く
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