第34話 同棲処分
晴れやかな朝、今日も妹と路地裏で手を繋ぎ登校する。
今日は天気と同様に僕の気持ちも晴れやかだった。
このまま学校迄手を繋ぐ……そう決めたから。
そして『お前たち何で兄妹で手なんか繋いでるんだ?』
と、問いかけられたらこう言い返す。
『僕達付き合ってるから』
僕も妹も事情聴取の嵐となるだろう、特に妹は学校のアイドル的存在。
大騒ぎになる事は目に見えている。
だけど、もう僕達は覚悟を決めた……まずは学校で、そして次は母さんに。
皆に祝福をして貰いたい……僕達なら出来る……。
そう昨日妹と、空と話をした。
僕と妹の手のひらに汗が滲む、二人の汗が手の平の中で混じり合う。
妹のしっとりとした柔らかい手の平を僕は構わず力を込めて握る。
絶対離すもんか……何があっても離すもんかと力を込めて握る。
「りっくうううううううううん」
その時背後から声が聞こえる。
「びううう」
「ひゃうう」
僕と妹はその声を聞いた瞬間繋いでいた手をあっさりと離す……。
「りっっくうううううん、たいへんだあああああああ」
僕達の手を繋ぐ姿、慌てる姿を見ていないのか? 声の主、そうハナカナコンビの花村さんが涙を浮かべて僕にすがるように近寄って来る。
「か、かなちんが、かなちんがああああああ……」
駆け寄るやいなや、花村さんは僕の服を掴み泣きながらそう叫ぶ……かなちん……金村さんか? 何かあったのか?!
「どうした? 何かあったの?」
言われて何時も一緒の金村さんが居ない事に気が付く、登下校、学校内、二人は磁石かってくらいくっついて行動している。それ故のハナカナコンビ……その片割れ、S極だかN極だかが居ない……。
「かなちん……停学だって……ひょっとしたら退学になるかもって……」
「「え?」」
僕と妹が同時に声を出す、いやこれは思いの共有とかではない……クラスメイトが突然停学と聞かされれば少なからず同時にこう声を出すだろうと、僕と妹の共有理論を展開している場合ではない……。
「な、何で?」
花村さんの言葉に慌ててそう返す、停学? 一体何をやらかした? やらかすとしたら金村さんではなく花村さんの方だと……。
「今なんか失礼な事考えなかった? りっくん!」
心を読まれ一瞬同様する……てか顔にクエスチョンでも出ていたか?
「そんな事よりはよ!」
とりあえずその理由を知りたい……金村さんに興味はないけれど中等部からの長い付き合い、クラスメイトに何があったか? 力になれるならなりたい。
「……かなちん……彼氏との同棲がバレて」
「「…………ええええええええええええ!」」
「兄妹シンクロ……」
花村さんが一瞬感心した顔になる、俺と妹が同時に声を上げた。このタイミングの良さは、やはり兄妹だった時の名残か、思いの共有か……。
「ど、同棲?」
同棲なんてどうせいっちゅーの? なんてお決まりの駄洒落を飲み込む……とりあえず事件性は低い、命に別状は無い事に一安心……。
いや……高校1年、ついこの間迄中学生だった事を鑑みると、かなりの事件性があるのかも……。
「かなちん……先週から彼氏の所に避難してて……それが誰かに見られたらしくて……」
「避難?」
そもそも彼氏がいるという事にびっくりなんだけど……。
「うん……かなちんに口止めされてるからあまり詳しくは言えない……けど、かなちんの家……色々あって……」
「……そか」
家庭都合……言えないのはわかる……実際僕と妹だって言えないで射るのだから。
「それで彼氏の家に? てか彼氏いるのか?」
高身長の金村さん、でもそのスタイルはモデル並み、ついこの間迄中学生とは思えない程の見た目、小さい花村さんと一緒にいるから目立たなかったけど……言われてみれば大人っぽく見え……確かに居ても不思議じゃない……。
「前に紹介して貰ったの……大学生のすごーく優しそうな彼氏さん……」
「そうなんだ……」
つまり金村さんは……既に大人に……。
昨日迄の金村さんの見方が180度変わる……子供っぽい花村さんに引っ張られていたけど……既に僕達よりも大人に……あんな事やこんな事が脳裏を過る。
「いてててて!」
そんな
「?」
花村さんが僕達の行動に首を傾げる……。
「と、とりあえず停学なんだ?」
僕は誤魔化す様に痛みに耐え何事もなかったかの様に言った。
「うん……でも今日の職員会議で正式に決めるみたい……」
「そか……」
中等部の頃聞かされていた……うちの高等部はごく最近迄古い校則が残っていた事を。
その中でも恋愛に関しては校内所か、校外でさえ禁止とされていた。
昨今の人権を考えその辺の校則は撤廃、制服も頭髪も自由とかなり緩くはなった。
しかし、この学校出身の教師も多く、今だその厳しい校則の名残は残っている。
なので恋愛……特に不純異性交遊等には厳しい先生が今だ多く存在している。
「どうしよううう、かなちん退学になったら……どうしようううう」
泣きながら僕にすがり付く花村さん、その小動物の様な姿、悲しそうな姿に、僕は思わずその花村さんのポワポワした赤い髪の毛を撫でてしまう……。
あああ、ついやってしまったと、花村さんの頭を撫でてしまった僕は慌てて妹を見ると、さすがにそれは見逃してやるって表情だった……助かった……。
「と、とりあえず……僕達で何か出来ないかな?」
停学は仕方ないとして、でもなんとか退学は避けたい……避けて欲しい。
クラスメイトがそんな事で居なくなるなんて事態は見たくない。
僕はそう花村さんに伝えると涙と鼻水でグシャグシャの顔で僕を見ながら言った。
「……せ、生徒会長なら」
「生徒会長……そうか……」
花村さんの口から、一人の名前が……生徒会長の朝見先輩の名前が出てきた。
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