第32話 恋人同士でする事
いつもの生活、いつもの暮らし……。
学校から帰ってきて、一緒に夕御飯を食べ、そして部屋に戻る。
いつも通りの生活……でも一つ違う事がある。
隣の部屋に、僕の隣の部屋に僕の彼女がいる……。
隣と言うのは文字通り隣、隣の家ではない、勿論マンションの隣でもない。
隣の部屋、一つ屋根の下に今僕の彼女がいる……まあ妹なんだから当たり前だけど。
部屋のベットに寝転びながら、少し落ち着いて考えてみた。
この状況を改めて考えると……結構色々と問題が浮上してくる。
まず親バレだ。
僕達が今付き合っている事は両親には言っていない……まあ、ついこの間迄血の繋がっている兄妹だと思っていた僕達、血が繋がっていない事が判明した途端じゃあ付き合いますって宣言するのは……おかしいよね?
お前ら兄妹の頃から……なんて疑いを持たれるかも知れない……いは、まあ、兄妹の頃からお互いに意識してたんだけどね。
ベットで改めてそんな事を考えていると、不意に妹の部屋が気になる……今何してるんだろう……壁一枚隔てている向こうにいる妹に思いを馳せる。
こんな事今までは考えた事なかった。
逢おうと思えばいつでも逢える……だからこそ思ってもみなかった。
妹に逢いたいなんて……こんなにも気になるなんて……。
別に隣の部屋にいるのだから、一つ屋根の下にいるのだから、会えばいいじゃないか……とそう思う自分と、これからは彼氏彼女の間柄、少しは遠慮も必要なのでは? 等といいわけがましく思う自分……要するに照れ臭いのだ。
今すぐ隣の部屋に移動してノックをすれば、愛しの君がパジャマ姿で迎えてくれる……筈。
でも……恋人となった今、あのふわふわパジャマは破壊力が凄すぎる……。
童貞を殺す服……。
童貞……。
そう考えた瞬間僕の耳がカッと熱くなる、乙女の様に頬が熱くなる。
妹は彼女……僕の初めての彼女……。
突然隣の部屋の妹が彼女になってしまった為に、心の準備が全く出来ていなかった。
そもそも妹がずっと好きだった、ずっと前から好きだったので、僕は彼女なんて作ろうなんて思いもしなかった。
いや諦める為に誰かを好きになる努力はした、でも出来なっかった。
なので……彼女が出来た時、どうすれば、何をすれば良いのか、僕はわかっていない……。
彼女が出来たら……デートして、手を繋いで、キスをして……そして。
そんな手順は知っている……どこかで聞いた事はある。でも実際それをどう進めて良いのかわからない……妹との付き合い方が、彼女との付き合い方がわからない。
近くに居すぎるからこそ、どう付き合って良いのかわからない。
誰にも聞けない、こんな関係のカップルなんて早々いないのだから……。
僕はベットの上でバタバタと泳げない人がプールに飛び込んだ様にとにかく足をバタつかせる。
そう……僕は今溺れている……溺れかけている。
妹に……妹との恋に……。
好きで好きで堪らない、どうにもならない妹への気持ち……伝える事も誰かに相談する事も出来なかった。それがまさか妹に伝えられるとは、そしてまさか叶とは、頭の中が、視界がピンク色に染まった、世界がキラキラと光って見えた。
そして一晩過ぎて、段々と視界が開けて来ると、僕は途端に不安に襲われる。
これからどうすれば良いのか……。
僕と妹の将来……学校での生活、これからの付き合い方……。
不安が襲う、初めての彼女は初恋の人、ずっとずっと好きだった片思いの君。
僕の大事な妹……大事な家族……。
様々な思いが交錯する。
僕はいてもたってもいられずベットから立ち上がりウロウロと部屋を徘徊する。
母さんはまだ寝ていない……今部屋に行くのは……そもそもなんて理由をつけたら……。
理由もなく会っても良いのだろうか? 妹は今何をしているのか?
僕はもう我慢出ないと、何も武器を持たずに魔物に立ち向かう勇者の如く部屋の扉を開けた……すると……。
「! お、お兄ちゃん……」
「……え?」
扉を開けるとそこには、魔物ではなく……愛しの妹が、僕の彼女が立っていた。
「あ……えっと……」
ふわふわパジャマ姿、真っ赤に染まる妹の頬、か、かわええ僕の彼女、僕の妹……僕の天使……。
「……えっと……は、入る?」
「う、うん……お邪魔します……」
僕は扉を大きく開き妹を部屋に招き入れた。
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