第25話 お台場デート


 お台場に到着しレインボーブリッジ遊歩道から外に出ると目の前にお台場ビーチが見える。

 それを横目に見ながらUターンし今歩いて来たレインボーブリッジ遊歩道の下にある『台場公園品川第三台場跡』に二人で向かった。


 お台場のテレビ局や海を見ながら公園を歩くと、川の土手の様な物が目の前に見えてくる。

「滑るよ、気を付けて」


「うん」


 レインボーブリッジからずっと手を繋いだままの僕は、妹のを先導する様に、

少し先を歩く。


 そして、滑りそうな階段を先に昇り、妹が滑らない様に、妹を助けながら第三台場跡地に入った。


「ふわーーー」

 土手を昇ると先程上から、レンボーブリッジ遊歩道から見た景色が目前に広がる。

 その景色を見た瞬間、いつもの様に妹がため息混じりの声を出す。昔から変わって無い……妹は感動したりすると、いつもこんな声を出す。


「……これが何百年も前に作られたんだからなあ~~」

 海に浮かぶ要塞……なんか中二病臭いけど、でも……凄くロマンを感じる……そして妹も同じように感じてくれている……僕と同じ物を見て、同じように感じて、感動してくれる……それが凄く嬉しい、妹の事が更に愛しくなる。


「お兄ちゃん……あれって何?」


 今僕達は土手、正式には土塁の上にいる。土塁とは敵からの攻撃を避ける為の防御壁の事だ。

 その土塁をぐるりと取り囲む中に何やら遺跡の様な跡があった。


「──釜戸とか弾薬庫とか守備兵の休憩所跡だって」

 妹に言われ僕はスマホを使って調べた。まさかこんな所でこんなにも歴史を感じられるなんて……思っていなかった……。


 僕達は、身近に感じる歴史という物が好きで時々一緒に出掛けていた。

 出掛けるといっても、お城や名所旧跡等見に遠出したりしない。身近な、例えば近所の旧街道等を散策して昔の人がここを歩いたとか想像したり、名もない石碑を観賞しに行ったりしていた。


「凄い、凄いいい!」

 僕からそう聞いて妹は素直に喜びの声を上げた。


 そうなんだ……妹は……本当に昔からこうやって、マニアックな歴史好きの僕と一緒に出掛け、同じ物を見て一緒に感動する……してくれる。

 

 ずっとずっと前から、こうだった……結局の所、僕達の芯は何も変わって無い……関係を、思いを壊した……壊れたって言ったけど……僕達の本質は何も変わっていない。

 

 妹の言う通りかも知れない……好きになる理由なんて無い……そして結局それは難しい事じゃ無いのかも知れない。


「お兄ちゃん大砲はどこ?」


「いや、大砲は無いから、大砲を置いた跡、砲台な」


「どっちでもいいよ、行こう」

 妹は俺の手を引き土塁を歩き始めた……ずっと繋いでいる手、暖かい手……離したく無い……これかもずっと……。

 そして……僕は一つの結論を出し、一つの決断をした。


「──今日しかない……」


「……ん? お兄ちゃん何か言った?」


「……ううん、何でも無い」



◈ ◈ ◈



 現在は公園になっている第三台場跡を、後に、して……洒落じゃ無いぞ。


 再び来た道を戻り当初の予定だったお台場ビーチを二人で散歩する。 当然泳ぐわけじゃ無いけど、でも初めての二人きりでの海……好きな人と二人きりで海を見るのが……妹と見るのが、僕の夢の一つだった。


「あーーーー! お兄ちゃん! また昔行った海の時の事思い出してるでしょ!」

 夢が叶って感動していたのを勘違いした妹が突然怒りだす。

 妹が言ってるのは、小学生の時の家族旅行……妹の水着が取れて僕が水着をもって追いかけ回したあの事だ。


「いや、でも今言われて思い出した……大きくなったなあ空」


「うわ~~セクハラだ、しかも嫌味まで! お兄ちゃんのバカ! エッチ!」

 

「ごめんごめん……でも嫌味じゃないよ……ずっと一緒にいたから……気が付かない事ってあるし」


「ぶううう、またそうやって誤魔化すんだから、お兄ちゃんズルい……」

 

 誤魔化してなんかいない……ずっと一緒にいたから、小さい頃から一緒にいたから……僕達はずっと、全く疑う事無く……ずっと兄妹だと思っていた。


 妹もそう思ってくれたのか? 二人で海岸を見ながらベンチに腰をかけた。ずっと手を繋いだまま、ずっと海を見ていた。


 何時間もずっと、昔を思い出しながらずっと……。




【あとがき】


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