第23話 お兄ちゃんの匂いお兄ちゃんの感触。


 学校から帰宅するとすぐにリビングに行く、お兄ちゃんも私も何も言わないで自然に二人一緒にリビングへ直行した……。


 部屋に戻って着替える時間が勿体無い……1秒でも長くお兄ちゃんと一緒にいたい。


 お兄ちゃんと二人でお茶を飲みながら…まったりタイム……普通友達とかと一緒にいると、何か喋らなくちゃって思ったりするけど、私とお兄ちゃんはそんな気の使い方はしない……無理に喋らなくてもいい……一緒にいるだけでホッとする……一緒にいるだけで楽しい……。

 私とお兄ちゃんは、昨日今日出会った様な関係じゃない……長年一緒にいるからこそ、そう思える信頼関係。

 ある意味、私とお兄ちゃんは長年連れ添った夫婦の様な関係でもある。


 ……と今まではそう思ってきた。


 兄妹の信頼関係……家族としての信頼関係……。


 今まではそうだった……でも……今は違う……今までの関係ではなくなった、私たちは兄妹じゃなくなった……。


 不安……満たされたい……私は今お兄ちゃんで満たされたい……。



「空、日曜日どこかに行かないか?」


 そんな事を考えながら、リビングでお茶をしているとお兄ちゃんが突然私にそう言った……え、え、これって……デート? お兄ちゃんからデートのお誘いが!


 (嬉しい……でも……違うの、私は直ぐに、今直ぐにお兄ちゃんで満たされたいの……)


そしてお兄ちゃんはまた変な事を言う……デート先を聞かれ「お兄ちゃんの行きたい所」と言った私に気を使ってるとか、思いの共有とか……だから気なんて使って無い……好きな人となら何処でも良いのに……。


 この間から私とお兄ちゃんの間に今までに無い細い溝の様な物が出来た気がする……。

 だから私はお兄ちゃんに言った……この僅かな溝を私の不安を取り除く為に……。



「うん、お兄ちゃんを知りたいのもっともっと知りたいの……好きな人の事を知りたいっていう……私のわがまま、私の欲望なの……」

 

 私がそう言うとお兄ちゃんは少し考えて……納得してくれた……。


「わかった……じゃあ僕の行きたい所を日曜日迄に考えておくよ」


「うん楽しみ……でね、あのねお兄ちゃん……私ね……今、今すぐに出来る事……一つだけしたい」


「今?」


「うん……今すぐ」

 今日の朝……私の心に出来た小さな闇を取り除く為に、お兄ちゃんに一つお願いをする。


「うん……いいよ」


「わーーーーい」

 そう言われ私は思いっきりお兄ちゃんの腕に抱き付いた……はうううん、お兄ちゃんの腕に顔を、胸を押し付ける……ふわわわわ……。


「ちょ! そ、空…………いや……ううん、何でもない」


「────えへへへ……お兄ちゃんの腕……お兄ちゃんの手」

 全身でお兄ちゃんの腕に絡み付く……しゅきぴなお兄ちゃんと繋がれる……ああ、朝からのモヤモヤが、私の心に出来た闇が晴れていく。


「──これがしたかったの?」


「ぶうう、お兄ちゃん今日花村さんにされて喜んでた……」


「よ、喜んで無いよ!」


「べーーーーだ、花村さんのおっきいおっぱいの感触を楽しんでたんでしょ!」


「だから楽しんでないってば……」


「だからこうやって塗り替えるの……お兄ちゃんは私の物だから……」

 さらにお兄ちゃんの腕をギュッとする……花村さんの事を忘れさせる位に、お兄ちゃんの得た感触を全部私で塗り替える様に、強く強く抱き締める。


「空以外の人に興味なんか無いよ……今……凄く嬉しい……あと……その……気持ちいい……」


「ふへへ、お兄ちゃんのエッチ……」

 良かった……花村さんと比べられて幻滅されるかもって不安だったから……。

 私はそう言われ嬉しさのあまり、さらにギュッとお兄ちゃんの腕に抱き付く、ソファーに座るお兄ちゃんの腕に全身で絡み付く……はうううしゅきしゅき……。


「……うん……空の前だと……僕はエッチになるんだ……」

 そう言うとお兄ちゃんは片腕で私の頭を抱く。


「ああ! お、お兄ちゃん……駄目……今日は……朝、髪……洗って無いよう」

 お兄ちゃんが私の頭を抱く、お兄ちゃんの顔が髪に埋まる……今日はお弁当作りで朝シャンする暇が無かった……恥ずかしい……もし臭かったら……。


「大丈夫……いい匂い……空の匂い……」

 お兄ちゃんの深呼吸の音が聞こえる……恥ずかしい……でも……嬉しい……。


 私もお兄ちゃんの腕をもっともっと抱き締める、一つになるくらい、お兄ちゃんの腕に溶け込むくらいに抱き締める。


 そして……顔をお兄ちゃんの脇の辺りに埋める……はうううお兄ちゃんの匂いがする……蕩けそうになるくらい……お兄ちゃんの匂いで頭の中が一杯になる。


 お兄ちゃんの匂いで満たされていく。


 今はこれで満足……でも……どんどんエッチなっていく……お兄ちゃんと二人……私達はどんどんエッチになっていっている。


 デートに行ったら……私達はどうなっちゃうんだろうか……。



【あとがき】


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