第22話 妹とデートしたい


 妹がどんどん積極的になってくる……嬉しい、凄く嬉しい……。


 妹は今や僕の為になのか? 昼のお弁当ならず、母さんの代わりに夕飯迄作り始めた。

 今までも時々作っていたので妹の料理の腕はみるみる上達していっている。


 まるで……僕のお嫁さんの準備でもしているかのような……。


 僕は最近妹から貰ってばかりだ……僕も作ると言ってもさせて貰えない……家の事は全部妹がやってしまう……じゃあせめて学校でと思っても……周りを気にして積極的になれない。


 これじゃ駄目だ……妹に対して何か返さないと……もう正式な兄妹では無いのだから……貰ってばかりでは愛想を尽かされてしまう。


 そう考えた末に、僕は思い付く。


「空、日曜日どこかに行かないか?」

 今日も学校から一緒に帰宅すると着替えもせずに二人で家のリビングでお茶を飲み始める。

 1秒でも一緒にいたいから、僅かな時間も離れたくないから。

 甲斐甲斐しくもお茶を入れてお菓子を用意する妹……僕は何かしなければと妹をデートに誘った。


「どこか?」


「うん、えっと……デートの誘いって言うか……」

 女の子と付き合った事の無い僕……どうやって誘っていいかわからずしどろもどろになる。でも……ただどこかに行こうって誘うとただの買い物になっちゃう……ここははっきりデートと言わないと……。


「行く! 連れてって!」


「あ、ああ勿論、えっと何処に行きたい?」


「お兄ちゃんの行きたい所!」

 やっぱりそう言った、前にも言ったけど僕達は兄妹になろうと、心のどこかで兄妹にならないとと思っていた。

 気に入られるべく、仲の良い兄妹でいる為、無意識にお互いの好きな物、好きな事を好きになろうと、いや、なってしまっていた。思いを、好きを共有していた。

 僕はこの間、これを思いの共有と名前を付けたんだけど、これが原因でどうしても自分の意見よりも相手の意見を尊重して合わせてしまう。この間僕達は話し合い、兄妹という関係を壊した……けど……それで全てなくなったわけではない。今でも僕達は兄妹だし、お互いを尊重しあい、そしてお互いが好きっていう思いは続いている。多分妹も……。


「いいんだよ、空は最近頑張ってるから、そのお礼なんだから……今度は僕が空に返さないとって……」


「頑張って無いよ、お兄ちゃんが好きだから……わたしが好きでやっている事だから、だからお礼なんていい、一緒に行ければどこでもいい……ううん行きたいの、お兄ちゃんの好きな所に行きたいの!」


「うーーん、でもなあ……まだ共有の癖が抜けて無いのかなあ……」

 まだ僕の好きな物を好きになろうと努力してしまうのか? 妹はどうしても自分優先では言ってくれ無い……。


「あーー、まだ言ってるお兄ちゃん、違うよ、これは私のわがまま」


「わがまま?」


「うん、お兄ちゃんを知りたいの、知ってるけど……誰よりも私はお兄ちゃんの事を知ってるけど……でも全てを知ってるわけじゃない……兄妹じゃ無かったって事を知らなかった様に……だから……もっともっと知りたいの……好きな人の事を知りたいっていう……私のわがまま、私の欲望なの……」


 妹は僕を見つめてそう言う……うるうるとした瞳、ああ、なんて可愛いんだ……何で妹は……わかっていたけど、ずっとそう思っていたけど……何でこんなにも可愛いんだろうか……はっきり言って自分とは違い過ぎる……今まで何の疑いもなく妹と思っていた自分は馬鹿なんだろうか? いや、やっぱり僕は心の奥底では疑っていたのかも知れない、妹もそうだったのかも知れない、だから僕達はお互い好きになったんだろう。

 改めて納得する。この天使の為なら、僕はなんだって、自分の命さえも失っても良いとさえ思ってしまう……僕は妹の為なら喜んで死ねる……いつでもこの身を死神に捧げても良いと思っている。


「わかったよ……じゃあ僕の行きたい所を……日曜日迄に考えておくよ」


「うん楽しみ、……あのねお兄ちゃん……私ね……今、今すぐに出来る事……一つだけしたい」


「今すぐに?」


「うん……今すぐに……」

 妹はそう言うと、ソファーに腰を掛けたまま、ニッコリ笑って僕にじわじわとにじり寄って来た。 






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