第15話 醜い僕の思い(カクヨムのみ書き下ろし)

 

 妹がいる人に聞いてみたい、妹に対してエッチな妄想をした事はあるだろうか?


 まあ、殆んどの人は勿論無いと答えるだろう、むしろそんな妄想を抱く方が気持ち悪いって思うに決まっている。


 妹や姉に対して恋愛感情を抱いたりみだらな妄想、性愛を抱く弟や兄の場合の事を俗にシスターコンプレックス、シスコンと言う。


 コンプレックスは元来複合と言う意味の言葉だけど、シスコン、シスターコンプレックスのコンプレックスは姉や妹に対して兄や弟が性愛すると言葉として用いられ、そう認識され使われている。


 本来のコンプレックスとは心理用語で感情の複合体と言う意味であって、現状使われている性愛を差す物ではない。


 そして僕も初めは妹に対して抱いていた気持ち……好きという感情……それは勿論シスコンではあるのだが、ここで言う性愛と言う意味でのコンプレックス、いわゆるフェティシズム的な物では無かった……。


 純粋に好きだと……ただただ、好きだと、そう言うと気持ちだけだった。



 しかしある時、妹が僕に言った一言で……その言葉を聞いた瞬間僕は本来使われている意味でのシスコンだったと気付いてしまった。。



 ◈◈◈



「ねえお兄ちゃん……お兄ちゃんって彼女いないの?」

 いつもの様にリビングで寛いでいると、ソファーに深々と座りスマホを眺めていた妹が突然、僕に向かってそんな事を言ってきた。


 それを聴いて僕は一瞬腹が立った……そんな人いるわけ無い……僕が好きなのは空なのだから……空の事を好きだと、僕の気持ちも知らずにそんな事を聞いてくる妹に一瞬腹が立った。


 でもその腹立ちは直ぐに収まり逆に疑問が芽生える……なぜ突然こんな事を聞いて来たのか……?


 少なくとも今までそんな嫌な事、僕が嫌な思いをするなんて事を聞いて来ることはなかった、いや、それどころか僕と妹は、殆んど喧嘩をした事はない。

 相手の事がなんとなくわかる……そして同じ物が好き……ずっと一緒にいたからだろうか? 僕達は不思議なくらいに相性が良かった。

 

 まあだから僕は妹の事を好きになったんだろうけど……。


「……いないよ」

 妹の意図はわからないが、当然いない物はいない、僕はストレートにそう答えた。


「何で作らないの?」

 続けざまに妹はそう聞いてくる……一体なんなんだ? なぜそうまでしつこく聞いてくるんだ?

 僕はさらに疑問が増す……今まで妹は決して僕をバカにする事は無かった、兄貴の癖に彼女もいねえのか? って言う嫌みではないのは確定している。


 ならばと、ちょっとずるいけど、僕は質問に対して質問で返した。


「空こそいないのか?」

 そう聞いた瞬間僕の心拍数が跳ね上がった……そうだ、もしここでいるって答えたら……僕はどうなってしまうのか……妹に彼氏が出来たら……今まで考えない様にしていた事を僕はつい聞いてしまった、自ら絶望の縁に立ってしまった。

 しかし後悔しても既に遅い……言った事はもう取り消せない……覆水盆に返らず……僕は物凄い緊張感の中で妹の答えを待った。


「……いるっていったらどうする?」

 僕に向かってそんな事を言ってきた……その瞬間、僕の中で何かが変わった……悔しい、辛い、苦しい、様々な感情が沸き上がった。


 コンプレックス……そう複合した感情……が沸き上がった。


 そして気が付いた……僕は妹が欲しいって事に、自分の物にしたいと言う感情に、そしてそれは家族として一緒にいたいと言う意味では無かった事に……僕は気が付いてしまった。


 妹が欲しい……何もかも……全てが欲しい……そして誰にも渡したくない、妹の……その全てを……。


 僕の中で激しい気持ちが、毒々しい憎悪の気持ちが沸き上がる。


 他人に取られるくらいなら……今ここで妹を……。


 そんな事を考えた瞬間、それを思った事に気が付いた瞬間、頭を殴られた様な衝撃が僕を襲った。


 なんて事を考えたんだ……そんな事を一瞬でも考えてしまった自分が情けない……そんな事をしたら全てが終わってしまう……妹を不幸のどん底に落としてしまうのに……って思った……。


 自分はなんて醜いんだろうって……実の妹に対して……こんな気持ちになってしまった自分が情けなくて……悔しくて……死んでしまいたいくらい辛い気持ちが襲って来た。


「お、お兄ちゃん!?」


 妹が驚きの表情で僕を見ている、いや、見ている気がする。


 気がすると言うのは、既に僕は妹が見えなくなっていたから……涙が溢れていたから……。


「お、お兄ちゃん! ど、どうしたの?!」


 マズい……どうしよう、どうこの場を逃れるか……溢れる涙の理由……その意味は、理由は言えない……今思った事は絶対に言えない……。


「いや、空が急に変な事言うから驚いてコンタクトずれちゃったよ、ゴミが中に……いててて」

 僕は慌ててそう言った……妹に嘘はつきたく無かったけど……でも……どうしようも無かった。


「ご、ごめんお兄ちゃん、冗談だから、ごめ、ごめんなさい」


「……あははは、そか冗談か……うん……ちょっとコンタクトつけ直して来る、いててて」


 僕はソファーから立ち上がると、そう言って洗面所に向かった。


 ──良かった……本当に良かった冗談で……僕はそう思った。


 でも……これではっきりした。


 僕はシスコンだと言う事が……僕は妹を愛している……家族としてでは無い……。


 妹を一人の女性として愛している……という事に僕はその時気付いてしまった。



◈◈◈



 そして今、目の前にミニスカートを履いた妹が……。


 また僕の中でドロドロとした感情が沸き起こっている。


 でもこれは、今のこの感情は違う、今までとは違う……。


 僕はもうシスコンでは無い……だって妹は……妹じゃ無かったから……。





【あとがき】

 カクヨムだけの書き下ろし

 ちょっと暗かったのでなろうには入れなかった話です(ヾ(´・ω・`)


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カクヨムコン短編出品作品

ラブコメ部門

『妹に彼氏が出来なかったら、俺が責任を取る事になった。』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054893367777

恋愛部門

https://kakuyomu.jp/works/1177354054893419319

「ツインズ」

他にも数点出してますので合わせて宜しくお願いしまーす。(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾


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