第13話 僕の限界は近い


「ヤバいヤバいヤバいヤバすぎる……」


 妹が……空が可愛いすぎる……美少女すぎる。


 何? あの僕の腕を掴む姿……端から見たら爆発しろって感じだけど、実際にされたらもう……もう……あうううううう、うきゃああああああ。


 家に帰って部屋に入るなり僕は着替えもせずに床で転げ回った。


「惚れてまうやろおおおお」

 いや、もう既に惚れ捲ってるんだけどね……。

 

 しかも、しかもだよ……今、その美少女は僕の隣にいる……恐らく制服から私服……普段着に着替えてる。

 しかも僕に安心してるのかいつもそこそこ露出の高い服を着ているんだ……。

 普段滅多に履かないミニスカートやらノースリーブの服なんか着て惜しげも無く肌を見せ付けて来る。

 

 僕は兄なんだから、そんな格好をしても何も思わないって思ってるんだろう……まあ、当たり前だ、妹のそんな格好を見て興奮する兄なんて、いない……僕以外は……。


でも僕達は血が繋がっていない、いなかった、だからもうそ当たり前ではない。


まあ元々当たり前ではなかったんだけど。


 今までは我慢出来た、自分を抑えられた……でも今は……自分が抑えられ無い……欲望抑えられない……駄目だ、駄目なんだ……血の繋がりが僕をおかしくさせている……。


 妹に対して僕の気持ちは既にとっくの昔にカンストしている。そこに来て妹との血の繋がりの否定……。


 これが兄妹同士の恋愛小説やアニメとかだったら、少しありきたりで陳腐な結末、でもハッピーエンドでエンディングになるんだろうけど……。


 現実には昨日まで兄妹だった二人が突然兄妹じゃないと言われて、じゃあお付き合いしましょう……なんて事になるわけが無い。

 そもそも兄妹同士での恋愛自体があり得ないんだ……妹が僕の事を好きなんて事はあり得い事だったんだ。


 だから……今から、これから少しずつ僕の事を男と認識して貰い……妹との距離を兄妹から他人に……そして恋人に……ああああああ、何で言っちゃったんだあああ……。


 そうなんだ、僕は昨日ずっとお兄ちゃんでいるって言ってしまったんだ……妹はそれを聞いて安心していた、そんな顔をしていた。


 昨日の今日でやっぱり実は他人で良かった、前から好きでした。

 なんて言えない……それこそ僕の信用に関わってくる……。


 家族で兄妹が恋人になる……そんな事可能なんだろうか?


 ドキドキする過程を全部すっ飛ばして家族になってしまってる……いや、僕は今でも妹の事を思うだけでドキドキする。

 

 でも……妹は? 空は僕にドキドキしてくれるのか?

 床で転がりながらそんな事を考えていた。すると……。


『コンコン』


 扉の向こうからノックの音が、空? しか、いないよね……。


 僕は慌てて起き上がり扉に駆け寄った。


 昨日と違い普段は僕が扉を開けるまで妹が自分で部屋の扉を開ける事はしない。

 なので昨日いきなり開けて入って来たので、何事かと思いビックリしたんだ。


 転げ回っていたので軽く全身の埃をはたき、少し髪を整えてから何事も無かった様に平常心を装い、ゆっくりと扉を開くと、やはりそこには妹が立っていた。


 しかも……まだ肌寒い時期なのに、さっき言った様な格好をしていた。

 ノースリーブの肩だしニットに超ミニスカート……ニットの裾が長くて一瞬何も履いてないんじゃないかって位短い。しかも生足姿でもう何処を見て良いかわからない位の格好だ。

 

 そしてその妹は、ノートらしき物と文房具を胸に抱えていた……。


「───」


「……お兄ちゃん?」


「あ、いや……えっと、どうしたの?」

 おっとまずい、軽く死んでた……息もしてなかった……後1分程妹が僕を呼び掛けなかったら、僕は蘇生しなかっただろう……。


「あ、あのね、えっと……明日から授業だし、高等部になったら勉強大変だって言うし、一緒に勉強しようかな? って……」


「……ああ、うんいいよ」


「わーーーーい」


 本当に可愛すぎる……今すぐにでも妹を抱き締めたい……イチャイチャしたい……でも、駄目だ、そんな考えを持っては……もっとしっかりしないと、妹は僕を信頼してそう言っているんだ、だからいつもの様に、こんな格好をしているんだ。


 妹は僕の事を今でもお兄ちゃんって思ってくれているんだ……。その信頼を裏切ってはいけない……。


 僕はそう気持ちを落ち着かせ、妹に部屋に入るように促すと、当たり前だけど妹は何の躊躇いも無く嬉しそうに部屋に入って来る……あ、そうだ着替えないと……。


 部屋に入ると妹は勝って知ったる感じで部屋の真ん中に折り畳み式のテーブルをセットしている。


 それを見て、僕は少し慌てて制服を脱ぎ、部屋着に着替え……。


「きゃっ!」


「え?」

 妹の小さな悲鳴を聞き、僕は振り返ると妹は真っ赤な顔で僕を見ている。


「ど、どうしたの?」


「う、ううん……そ、そうだよね、うん! 大丈夫……うん」


「? う、うん……」

 妹が何を言ってるのか? 何が大丈夫なのかよくわからない……とりあえず僕は上着とシャツを脱いで、いつも着ているパーカーに着替え、下を…………あ!


 僕は再度振り返ると妹はさっきよりも真っ赤な顔で僕を凝視している……えっといや……その……。


「あ、あの……空……ごめん、ちょっと恥ずかしいから、一瞬向こう向いてて……」


「あ、ああ、うん、そうだね、うん、そうだよ、何してるんだ私……」


「ご、ごめんね」


「ううん、気が利かない私が悪い、うん」

 妹は正座をしたまま扉の方を向き僕に背を向けた。


「あ、うん、ごめん、すぐ着替えるから……」

 兄妹なんだからとあまり気にせず着替えてたけど、そうだよね、いや、でも……小さい頃から一緒にお風呂に入ってたけど、今はなんとも言えない微妙な関係、しかも最近は妹との接し方に悩んでいた僕は、このさらに複雑になってしまった関係にどうして良いのか益々わからなくなっている。


 とりあえず今そんな事を考えても仕方ないと、急いで着替えて空の前に座った……いや……改めて見ると……まずい、ヤバい……空の格好……色っぽすぎる……。


 好きな女の子が目の前で肩を出してそしてノートをテーブルに置いたのでわかったけど……胸元も結構大胆に開いてる。さらにはミニスカートで……パンツが……。


 こんなの慣れている筈なのに、いや、慣れてなんかいない、ずっといなかった。

 慣れている振りをしていただけ……。


「あ、それしてくれてるんだ……嬉しいな」

 僕は妹の何処を見て良いかわからず胸元を見てしまう。

 するとその大胆に開いてる胸元に僕がプレゼントしたネックレスが見えた。


「あ、うん、これ凄く気に入ってる……」

 そう言うと妹はかなり開いているにも関わらずさらに胸元を指で押し下げネックレスを胸元から表に出す。

 妹の小さな膨らみの一部が見え……や、ヤバい……。


「ネックレスってやっぱり服の外に出すのかなあ? お兄ちゃんどう思う?」

 妹はネックレスを胸元から出したり入れたり出したり入れたりする……な、何? 妹は僕を殺しに来たの?


 っていうか……さっきから気になっているんだけど……あれだけ大胆に胸元を押し下げても……その……全然見えないんですけど……その……ブラが……。


 まさか……ノーブラ?


 それから勉強が始まっても、妹はモジモジしたり、足を崩したり、一休みと言ってベットに寝転んだりする……いや、落ち着きが無いのは昔からなんだけど……。



 妹じゃなければ、これが恋人同士で彼氏の部屋だとしたら、間違いなく誘ってるとしか思えない……。


 妹は一体……どうしちゃったんだ?


 そして僕は……こんな事をする妹に対して、どうすればいいんだろうか?


 


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