第8話 お兄ちゃんの隠し事
様子がおかしい……誕生日からお兄ちゃんの様子がおかしい……。
一体なんなんだろうか? 私を避けている様な……お母さんを避けている様な……。
今までこんな事無かった……。
明日は入学式……まあ中高一貫校の私達にとっては校舎が変わる程度の事だけど……、それでも……高校生になるんだ、勉強も一段階も二段階も大変になる……。
でもそんな事はどうでもいい、私にとって最優先事項はお兄ちゃん……あらゆる事よりも優先される。
私はふわふわパジャマを脱ぐ……ついでに下着も交換するため全部脱ぎ捨てる。
だって……今からお兄ちゃんの部屋に行くし……もしだよ……もしも……何かあった時の為に……、何かってなんだよってどこからか突っ込まれている様な……でもでも……これは私の決まり事、いかなるチャンスも逃さない……。
裸になって鏡の前に立つ……身体のチェックをする……お兄ちゃんに見られた時の為に……はあああ……見れば見るほど貧相な身体……誕生日の時言ってたよね……痩せすぎだって……お兄ちゃんって豊満な人の方が好きなのかなあ……おっぱい大きい方が好きなんだろうなあ……。
今から胸のサイズが倍になるはずも無い……私は諦めて真新しい上下セットの可愛い下着を付ける。お兄ちゃんに見せる為に買った……そんな事は起きないけれど、そう考えるだけで楽しい、妄想する事が気持ちいい……。
そして明日の入学式に着て行く予定の、学校指定の制服を身に纏う。
うちの学校、中等部は制服を着用しなくてはならなかった、だけど高等部は私服登校も可能になる。
ただし入学式等は指定の制服を着用しなくてはならない。
うちの学校は他にも色々とめんどくさい校則なんかあったりする……特に高等部は……古い学校の古い校則、その辺は今後変わって欲しいなあ……なんて思っていたりする。
制服を着るとまた鏡の前に立つ、スカートのシワや背中にゴミがついてないか、一回りして確認する……よし完璧。
私は裾や肩のチリなんかをもう一度サッと手ではたき、少し気合いを入れて部屋を出た。
行き先は勿論隣の部屋、お兄ちゃんの部屋。
お兄ちゃんの部屋の前で深呼吸、扉に顔を近付け耳をすませて中の様子を伺う……うん……お兄ちゃんは居る……ちゃんと気配はする。
そして『コンコン』と扉をノックした。
『はは、はい!』
中からお兄ちゃんの声がした……やっぱり様子がおかしい……。
「お兄ちゃん……入るよ」
返事も待たずに扉を開けた……一瞬迷惑だったかな……突然こんな事したら……嫌われちゃうかもなって思ったけど、でも……今は緊急事態、私は心を鬼にしてお兄ちゃんの部屋に入った。
「そ、空、ま、待って……」
机の前扉に背を向けて座っていたお兄ちゃんは、慌てる様に私の方に振り向いた。
「ごめんねお兄ちゃん……あのね制服着たんだけど、どうかなと思って?」
「え、あ、いや……この間も見たし……似合ってると……思うよ」
お兄ちゃんはそわそわしながら私を見てそう言う……やっぱり何か変、いつもなら……もっともっと褒めてくれるのに……。
私はお兄ちゃんをじっと見る……お兄ちゃんの目をじっと……じっと…………あ、今机の方をチラッと見た。
「お兄ちゃん? 後ろに何か隠してる?」
「へ? いや……な、何でもないよ……」
やっぱり何か隠してる……なんだろう…………なんだ……あ……ああ、そうか…………エッチな奴だ!
そうか、お兄ちゃんも遂にそう言うのを見るようになったか……やっぱり高校生だもんね遅すぎる位だよね?
「お兄ちゃん……エッチな本見てたでしょ?」
「……は?」
「どんなのみーーてーーたーーのーー?」
あはは、それを見れば、お兄ちゃんの好みがわかる……やっぱり豊満な人が良いのかな? 見てたのはおっぱい大きい人なのかな? ちょっと妬けるけど……大丈夫! 私はそう言うのには理解あるから! だから、みーーーせーーてーー!
私はお兄ちゃんに素早く近付くとお兄ちゃんの背後にある物を覗き見た。
「そ、空! やめろ!」
お兄ちゃんは机の方に振り返り身体を被せる様に何かを隠してた…………でも……お兄ちゃんって痩せてるし身長もあまり高く無いし……一見女の子の様な体型……。
だから隠そうとしたけど、全然隠しきれて無かった……。
「それって……戸籍? この間の? 何で?」
「──いや……な、何でもない……」
「何でもないなら何で隠すの? それに何が書いてあるの?」
「だから……何でも……」
「お兄ちゃん……それを見せて……ここの所何かおかしかったのは……そのせい?」
「…………」
「お兄ちゃん!!」
私は強い口調でお兄ちゃんを呼んだ、一体なんなの? 何が書いてあるの!?
そう言うも、お兄ちゃんは暫く動かなかった……でも私も退かない……お兄ちゃんが心配だから……お兄ちゃんの悩みは私の悩みだから……。
「──お兄ちゃん……お願い……見せて……ね?」
今度は優しく諭す……するとお兄ちゃんは諦めたのか……ゆっくりと机から身体を起こす。
そしてクシャクシャになっていたその戸籍謄本のシワを手で丁寧に伸ばした。
伸ばし終わったお兄ちゃんは私の方に振り返ると私を見た。その顔は凄く悲しそうで、泣きそうで……そんな顔でゆっくりと私に渡す。
私はそれを受け取ると……その戸籍謄本をじっと精査した。
「────え……」
「……うん……」
「……そんな…………嘘……」
あまりのショックに私は目の前が真っ暗になった。
そう…………私は……お兄ちゃんの……実の妹じゃ…………無かった…………。
【あとがき】
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