第5話 養子縁組?
誕生日ケーキは2つ、それぞれのケーキを食べたい分だけ切り分けをお皿に盛ってリビングに持っていく。夕食の後は、いつもリビングで妹とコーヒーを飲みながらお喋りするのが昔からの習慣。
今日もいつもと一緒でリビングにてお喋りをしながら妹と二人でケーキを頬張る。
嬉しそうにモリモリとケーキを食べる妹……本当に妹は何をしても可愛い……妹は声も綺麗で愛らしい……どんなにくだらない話でもまるで美しいオルゴールを聞いている様な感覚になる。
ずっと一緒にいるのに一秒も飽きない……むしろそれぞれの部屋に戻るのが惜しいくらい……出来れば同じ部屋で生活したい位だ。
ケーキをある程度食べた所で僕は立ち上がると、リビングの引き出しに隠しておいた妹へのプレゼントをそっと取り出す。
するとプレゼントのリボンに引っ掛かり1枚の封筒が僕の足元に落ちた。
市役所? その封筒には地元の市役所の名前が記載されていた。
とりあえずその封筒と一緒にプレゼントを持って妹の前に座りちょっとわざとらしく咳払いをしてから背筋を正し妹を見つめて言った。
「空、誕生日おめでとう」
僕はそう言って綺麗に包装されたプレゼントを渡した。
「あ、ありがとう……お兄ちゃん……嬉しい……開けてもいい?」
「いいよ、気に入るかなあ?」
好きな人に上げるプレゼント……探す時は滅茶苦茶楽しいけど、上げる時は滅茶苦茶緊張する。気に入って貰えるか? 心臓がドキドキする。
妹は丁寧に包装を剥がし、出てきた紫色の綺麗な小箱をゆっくりと開いた。
「──わあ……き、綺麗……」
「……銀のネックレス……前に空が欲しいって言ってたから」
「うん……これ欲しかった奴……嬉しい……ありがとうお兄ちゃん」
「うん……」
妹が前から欲しがっていた物だったけど、気に入って貰えるか凄く不安だった。でも、妹の笑顔が見れて、嬉しそうな姿を見れて、凄くホッとする。
「付けていい?」
「うん、いいよ」
そう言うと妹は髪をかき上げネックレスを付ける。妹のうなじがチラチラと見え、僕はドキドキしてしまう。
「どう?」
今日は首元が大胆に空いている肩出しセーターを着ていたので、凄くネックレスが栄えた……うん……綺麗だ、ネックレスを付けた妹は物凄く綺麗だ。
「……う、うん似合ってるよ、凄く綺麗……」
「えへへへへ、ありがとうお兄ちゃん」
満面な笑顔なる妹……ああ、上げて良かった……3か月小遣いを貯めた甲斐があった……。
「…………でもでも、お兄ちゃん?」
自分の胸元のネックレスをじっと見ると妹はニヤニヤとし始める。そして満面の笑みから、少し意地悪そうな、小悪魔的な表情に変わった。
「……ん?」
「ネックレスを贈る意味ってね、貴女を縛り付けたいって聞いたけどお、お兄ちゃんは……私を縛り付けたいの?」
「ば! そ、そんな……わけ」
「あはははは、冗談だよお」
そう言ってはしゃぐ妹…………でも……そうだよ……僕は妹を離したくない……妹を縛り付けたいって思って……それを買ったんだよ……そう言いたかったんだよ。
「全く……」
危ない……自分の思いがバレる所だった……誕生日祝いだからと少し羽目を外しすぎたかも……僕はそう反省をして、さらに落ち着こうとコーヒーを飲む。
そして飲みながなんとなくテーブルに目線を落とすと、さっき拾った封筒に目が行く。
僕がじっとその封筒を見ていると、僕の視線の先にある封筒に妹も気が付く。
「それって……」
「ああ、さっき落ちたんだ、なんだろうって? 何か知ってる?」
「うーーん、ああ、なんかお母さんが言ってた、高等部に行く手続きで住民票が必要だって……」
「? いやでも、手続きってもう終わってるよな?」
週明けに入学式なんだから……。僕はその封筒を手に取り中を覗く。
「なんか、お母さん間違えたって言って慌ててもう一度取りにいってたけど……」
間違えた? 何を? 僕は封筒の中身を取り出した。
「戸籍謄本?」
「ああ、よくやる奴だ~~お母さんおっちょこちょいだねえ」
「うん……」
しかし僕はもう妹の話が、言葉が頭に入って来なかった、なぜなら謄本の妹の名前の横に意味の分からない文字が書かれていたから。
妹の名前の横には……。
〖養子縁組〗
と、そう書かれていたから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます