魔釣り少女 終
リーベによって放たれた
そして使い魔が見えなくなるとリーベは目を閉じ神経を集中させる。
使い魔と釣り竿を繋げている魔力で出来た釣り糸で使い魔が何処に居るか何をしているか把握し時々竿を動かしては使い魔が動きやすいように動かし今回の獲物であるドラゴソウがかかるのを待つ。
グリンはリーベを唯々見ているだけ。
リーベに見ていろと言われたのもあるがずっと動物を狩っていただけの自分が魔物相手にどうこうできる訳もそれ以前に魔物の知識はほぼ0。
同行の申し出をした時の父の「足手まといになるだけだ」発言を今更になって痛感するグリンであった。
「!!!! かかったです!!」
釣り糸が強く引っ張られるとリーベは引っ張られないように踏ん張る体制になる。釣り竿に魔力を流し使い魔を通してドラゴソウの様子を見ながら広場に誘い出す。
使い魔をドラゴソウの口ギリギリに近づき踊るように蝶のような鰭を動かす、そうするとドラゴソウは使い魔を捕らえようと噛みつこうとするが使い魔はフワリと軽く避ける。ドラゴソウはそれが気に入らずしつこく追いかける。
そんな事を何回か続けていく内に。
「来たです!!!!!!」
広場に蔓状の植物が絡まり竜の姿になったような巨大モンスター、ドラゴソウが姿を現した。
初めて見る魔物にグリンは「ヒッ!」と情けない声を出し、リーベはというと釣り竿を通し使い魔に命令を送る。
――食べられて下さいです。
命令を送られた使い魔はその場に止まるとドラゴソウは喜々と使い魔に噛みついた。
「おい!! お前の使い魔食われたぞ!!」
「使い魔は不死身です、魔力を与えれば直ぐに再生するです」
「そういう意味じゃ無くて!!」
「それにピンクちゃんは匂いを出して誘き寄せるだけが仕事じゃないです」
満足げにしていたドラゴソウだがウトウトとし始め、そしてズシン!! という音と共にその場で眠り始めた。
巨体の魔物が無防備な姿で眠る姿にグリンはただ呆気に取られリーベは得意気にニヤリと笑う。
「ピンクちゃんは眠りの妖精の力を入れて育てた使い魔です。ピンクちゃんを口に含んだ魔物は強烈な眠りの力によって眠ってしまうのです」
「は、はあ」
「さて、果実を回収するです。猫魔法・猫の手!!」
ミッケに教わった猫魔法で右手を猫の手に変えるとリーベは眠るドラゴソウの顎に近づく、其処には赤く実る果実が生っていた。
リーベは猫の手から鋭利な爪を出し果実を切り取るとグリンに見せつけるように果実を見せる。
「これが解毒剤に必要な果実です」
「これが・・・・・・、これで妹が回復するんだな」
「はいです。さて、母さんが解毒剤を作る準備はしている筈です。帰るです」
「ああ、そうだなってドラゴソウはこのままでいいのか? こんな無防備じゃ誰かに狙われるんじゃ・・・・・・」
「この後、草むらに隠れて違う使い魔を使って目覚めさせるので問題ないです。だから、先に果実を持っていってほしいのです」
そう言ってリーベがグリンに果実を渡そうとした時だ。
『グギャアアアアアア!!!!!!』
雄叫びを上げながらドラゴソウが目を覚ました。
「う、そ、です? ピンクちゃんの効果はビリジアンちゃんじゃないと・・・・・・」
「危ない!!」
動揺からドラゴソウの攻撃を避けれないリーベをグリンは手を引っ張ることで何とか躱し、グリンはリーベを守るようにドラゴソウと対峙する。
「あ、ありがとうです」
「大丈夫か? 何で目覚めたか解らないけどどうする? いやどうすればいい? 俺には魔物の知識はない、だから教えてくれ!!」
力強く言い放ったグリンの体が震えている事にリーベは気付く、それでも起きたドラゴソウをどうにかしようとリーベに教えてほしいという彼の姿に育ての母を勘違いで殺そうとした少年という考えを改め、そして動揺で何も出来なかった自分を悔やんだ。
――何もしないっで言ったのに何も出来なかったのは自分の方です!!
パンッと気合いを入れる意味で頬を叩き、グリンを力強い目で見据える。
「少しの間だけドラゴソウを引きつけて下さいです!! 念の為、襲われないように俊敏の魔法を掛けるです!!
その間に私は魔術を、ドラゴソウを撃退出来る子を喚ぶです!!」
「毎日、獲物を狩るために山の中を走ってるんだ走りも体力も自信あるぜ!! 十分に引きつけてやるさ!!」
「それは頼もしいです!! では、猫魔法・猫の足!!」
グリンの足が猫の華奢な足へと変化するとグリンは「おおっ!」と感嘆の声を上げるがドラゴソウが噛みつこうとするのを察知し逃げる。
猫の俊敏さと跳躍を得たグリンはそれを利用してドラゴソウから逃げる、真っ直ぐに時々ジクザクに、ドラゴソウはムキになって追いかけ始めた。
ドラゴソウがグリンに夢中になっている間にリーベは再び釣り竿に魔力を注ぎながら詠唱する。
――深海の底に住まう
――我が契約に従い此処に現れよ。
――全てを喰らい尽くす口で我が敵を飲み込め!!
「出でよ!! スナップドラゴン!!!!」
釣り竿から大きな口をぱかりと開けたドラゴソウの何倍も大きい竜が姿を現す。
そして現れた途端に
吐き出されたドラゴソウは強く地面に叩きつけられた衝撃でそのまま気を失い、キューと小さな声を出して動かなくるとリーベとグリンは安堵からその場に座り込み、お互いに目が合うと笑い合った。
こうして果実採取は成功したのであった。
――数日後。
リーベは魔魚を釣りにいつもの池で釣りをしていると其処に「よう!!」とグリンが現れた。
「お久しぶりなのです。妹さんは?」
「元気だよ。全快した後に森に行った子達と一緒に奥に行ったことを怒られたけどな」
「まあ、それはしょうがないのです」
果実を持ってきた後、ボロボロの姿に驚かれたが無事にミッケは解毒剤を作り妹に与えた、与えた瞬間に熱は下がり苦しんでいた妹からスースーと穏やかな寝息が聞こえると両親もグリンも涙を流し喜んだ。
喜ぶ姿を見てリーベとミッケは御礼もそこそこに帰った。
「それはそうと何の用です? 御礼はしっかりと貴方の両親から貰ったです」
「い、いや~、あれ以来、姿を見てなかったし元気かなって!!」
「ふ~んです」
「それにあの時、ドラゴソウがどうして起きたのかなって思ってさ。君が言うには強烈で他の使い魔でないと解けないんだろう?」
「・・・・・・・・・・・・」
リーベは迷っていた正直に話すかどうかを。
採った果実を探す際、状態異常回復の呪文が刻まれた投げナイフを見つけたのだ。
魔物ハンターであるリーベには覚えがあった、魔物を狩ることで生活しているが故に魔物との共存を推奨するハンターを敵と見なし魔物撲滅を掲げる組織が居ることを。
そして、その組織がハンター達の狩りを邪魔しているのをリーベは知っていた。
でも、その事を話したら自分の隣に居る心優しき少年はきっと首を突っ込むに違いないと思ったから。
「さあ、知らないです」
と解らないフリをした。
だが、運命は残酷だ。
リーベだけでなくグリンも巻き込まれる事件が起きてしまいグリンが狩人から魔物ハンターに転向し、そして聖域を守る守護獣を巡り組織との戦いに身を投じる事になるのだが、詳しい話はまた今度に。
魔釣り少女 うにどん @mhky
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
亡き母の夢/うにどん
★8 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます