第2話 本編 小さなテント
面接を終えて、入ったドアから出てきた人間に、外の椅子に座っていた人間が声をかけた。
「良かった・・・・やっと人が出てきた・・・・一人ぽっちなのかと思った」
十代後半のがっちりとした体つきの、いかにも賢そうな彼に、これまたよく似た感じの彼も答えた。
「そう言えば他の人は?さっきまで数珠つなぎでここに人がいたのに」
「それが、廊下の先見て、ホラ」突き当りにある通路をまばらに人が通っている。何人かさっき見た人間もいる。二人は不思議そうに顔を見合わせたが、すぐ同じことに気が付いた。
「そう言えば面接官達の座っている方にもドアがあった。そっちから出て行ったのかな?」
「行って・・・見る?」
「待っているように言われただろう?」
「だけど、あの先までだったら」
もし部屋から誰か出てきても、そちらの方を見ていれば大丈夫の様な距離だったので、二人は素早く歩いた。
そうして人が通って行くのと反対方向を見ると、おおよそここには似つかわしくない、暗い色の、小さなテントが通路の左右にいくつかあった。テントの外側には文字が書いてあるものも、どこかで見たことのある模様や、色のあるものなど様々だった。
「占い? 何故こんな所で? 」
パイロット訓練校の面接であるはずだ。二人はまた顔を見合わせて、この状態をどう考えていいのか悩んでいた。
すると
「君達! 」
さっきいた方向から、明らかに中年男性の声がして、二人は元の所へ戻った。彼らは不思議そうな顔をしてこの男性を見つめた。男性もちらりとその方向を見て、しばらく出す言葉を考えるような感じで、それでもはっきりとはまとまらない様子だった。やっと、
「あの・・・あれは君たちには関係ない、気にしなくていいよ」若い二人が納得できる説明ではなかったので、一層彼らは不安げな顔をした。それを見て申し訳なく思ったのか、今度はとても小さな声で
「本当はあと数時間後発表なのだが、言っておこう。君たちは合格だ。面接官全員一致で」その言葉にはとてもうれしそうな顔を見せたが、この二人は本当によく似ていて、その自分たちにとって最も嬉しい言葉が、目の前の不思議なものへの追及を打ち消すことはなかった。知的好奇心と言うのか、それは向学心にも素直に結びつくものであるとは、その男性も分かっていた。この点では面接や、彼ら二人の調査データ、簡易的な脳波分析でも、全宇宙総合文化科学大学並みの、ずば抜けて高い値を示していた。
「気にするなと言っても気になるよね。あれはつまり神頼み的な行為だよ。特殊空間航路が荒れて、多くのパイロットが犠牲になった。若い子をパイロット特性順に育成しても、それでも・・・・」その言葉は三人ともに下を向かせて
「総司令部からの意向でね、今回その・・・まあ合格線上の子たちがね。君たちはそうではないし、これから頑張ってほしい」
「ハイ・・・・・」大人が期待したような明るい返事ではなかった。
「行って・・・占いを受けてみたい?」
そう男性が呟くと、二人とも顔を見合せて、どちらかが「出来れば」と言った。
「何を言われるかまでは分からない。君たちが不安になるようなことを言われたらとは思うんだが・・・それでもかまわないかい?」
「はい」二人とも答えた。
「それでは行っておいで、他の子たちは用紙を持って入っているが、君たちは占ってもらうだけです、と言ったらいい・・・」
「わかりました」明確な返事だった。
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