第2話 終焉の先

ボップはピクシーが住むエルダーの森に向かっていた。

だが、行き着く前には険しい終焉の怪物という谷がある。

なぜ、終焉の怪物と呼ぶのか。昔からこの地の先には刃物のような尖った足場や侵食谷がある。凄く細い道を歩くのだが、この谷の気候や危険な場所で谷が侵食されている。細い道の周りには尖った刃物のような足場が続く。一つ間違えれば、その落とし穴に落ちてしまう。この地の気候は風が強く、雨もよく降る。今は冬。冬が最も危険。もう雪がちらついてきている。

早く脱出しないと、命に関わる。この谷では予想もつかない怪物という名の自然や猛威が振るう。凄く危険な地へと一変する。ファイナル・モンスターで生きて出られる者は多くはない。それが、終焉の怪物と呼ばれる理由。

だが、実際はエルダーの森に行くのに、絶対通らなければいけないという訳ではない。その近くには、優雅な道・グラスロードがある。そこをとおれば、危険なくエルダーの森に辿り着くのだが、あまりにも遠回りになるため、ボップは危険を省みずファイナル・モンスターを選んだ。ファイナル・モンスターはエルダーの森への近道で、早くて1日で到着できる。

危険はないが、遠回りになる道と危険だが、近道になる道。ボップは危険なほうを選んだ。

ボップは怖いと同時に、どうしてもピクシーを誘いたい! という信念で、行動していた。ボップは優しい子だ。というかすごい純粋で無邪気で可愛い子だ。

大きな催しで、ピクシーと仲良くなりたい。そんな気持ちがボップを動かした。

ボップが谷に入って、数時間が経過した。風が吹き、雪がちらつきから、本格的に降りだした。降雪量が多いためつもり始めた。すると、風と雪が混じり、激しい吹雪へと変わった。

その吹雪はボップの身体中を痛め付ける。まるで、硬い小石を何回も投げ付けられているかのような痛みだった。

ボップは表情を乞わばせ、顔を腕で守り、ずんずんずんずんと、一歩ずつ、ガタガタと震えながら進んだ。凄く寒くて、辺りが暗い。

怖い、家に帰って暖かいシチューを食べたい……

ボップは、吹雪の中を歩いた。ひたすら。暗くて何も見えない。もうすぐ、あの怪物のところだ。ちゃんと見て歩かないと、落ちてしまう。ボップは何とか、眼を霞めながら暗闇の中を歩いた。ちょっとずつ。積もった雪をザクザク音をならして、ボップが歩いた道には足跡が付いていた。

ボップは、立ち止まった。かすかにみえる辺りには、雪の上から少し刃物もような岩がみえる。

ボップはごくんっと唾をのみこんだ。

見れば見るほど、ぶるっと鳥肌がたち寒気がする。

それに、よく観ると、昨日雨が降ったのか、雨水がこの寒さで凍っている。鋭い牙のようだった。この一面に恐怖を感じた。

エルダーの森はこの先、終焉の先にある。ここは避けては通れない場所。

ボップは意を決して、吹雪の中を再び歩き始めた。

なぜか眠くなってきた。眼をごしごしと拭いて、すこしずつ歩いた。

眠い、眠気がボップを襲う。眠気と怪物に押し潰されそうになるがボップは力強く踏ん張り歩いた。

何時間この吹雪の中を歩いたのかわからない。

ボップの視線の先、暗闇の中に一つのランプが見えた。ランプの隣に、木でできたレトロな看板がある。読むと、「 Elder Forest 」と書かれている。

どうやら、もうすぐそこがエルダーの森のようだ。

ボップはランプの火を見て、暖かい光に包まれた感覚になった。寒くて、怖くて、辛いこの吹雪を歩いて、凍えそうでも踏ん張る。そして、早くピクシーのところへ行きたい。そう想いがランプの火の光がボップを優しく包んだ。


「 この光は? 暖かい… 溶けそうだ 」


ボップは口をむにゃむにゃとさせ、眼をこすり、この吹雪の中、あと少しでエルダーの森に着く。そして、暖かい火をみて、安心したのか、心の緊張と恐怖がどうでもよくなり、いっぺんに取れた。


そして、ボップはあと少しのところで看板とランプの前で、眼をつむり、倒れてしまった。




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