第5話


 雨も止んだ四日目。

 休日だったこともあって、私は昼過ぎから丘に向かった。さすがにルーンに謝りたかった。話す相手の居ない三日間に、私はかなり堪えていた。


 丘の、いつもの場所に着いた私を待っていたのは、元気なルーンじゃなかった。

 獣道を歩きながら遠目に何かがあるのがわかった。黒いかたまりだ。見間違えるはずのないくらい、純黒のかたまり。


 嫌な予感がして私は駈け寄った。

 かたまりはルーンだった。


 彼はすっかり体温をなくして固まっていた。

 抱きかかえると力無く垂れ下がった尻尾が、動くことは二度となかった。


 私は泣きながら謝った。もう何を謝りたかったのかさえ分からなかったが、とにかくルーンを抱いたまま謝り続けた。


 今までいくら誘っても私の家にも来なかった彼は、きっとあの雨の中もここにいたに違いない。

 だからって、こんなに冷たくなってしまったらもう話もできないじゃないか――


 ルーンの――ルンペルシュツルツキンの嘘吐き……ずっとそばにいてくれるっていったのに……

 涙が枯れるまで泣いた私は、彼を傍らに寝かせて素手で土を掘り返した。

 彼を寝かせるためにどれだけ掘ればいいのか分からなかったが、水分をたっぷりと含んだ土は思った以上に柔らかかった。


 ルーンに土をかぶせるときも視界はひどくにじんでいた。

 小さな棒を墓標に見立てて『ルンペンシュツルツキン』と書き込んだものを突き立てた。

 私はこの丘に独りでいるのが辛くて早々に後にした。

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