第4話

 ルーンは私の無二の親友と言ってもいい。学校内では教室以外のところではよくそばに寄ってきて一緒に話した。渡り廊下や裏庭など、人があまり来ないところにいるのが多かった。誰かが近くに来ると、彼はわざとらしく「にゃー」と鳴くのだ。

 その点、丘の上ではいつも何か自慢話をしてくれた。私たち二人だけしかいないのだから、話が途切れることもなく、私の読書冊数は少しずつ減っていった。口が忙しくなると、目は活字を追えなくなるらしい。


 ルーンは私の知らないことを教えてくれた。

 例えば、ねこの魂は七個もあるらしい。魔女がねこを、特に黒ねこを好んで使役に選ぶのはそれだけの理由があると、胸を張っていった。他のねこに比べて聡明なのだそうだ。ルーンが言うのだから間違いないと思う。

 他にも、涙が薬になることや、くじけたとき勇気をもてる魔法の呪文。とにかくいろんなコトを教えてくれた。


 あの日、私たちはほんの些細なことでケンカをした。理由も思い出せないくらい小さなコトで。

 私は曇空に背を向けて、丘から一人駆け出した。その日から三日、雨が降り続いたので私は丘には行かなかった。学校でもルーンの姿は見かけなかった。

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