参:護る者として・Ⅲ(記録終了)

 戦闘開始からしばらくの時間が経過した。

 イディウムの機転による迅速な移動の先で、手短な指示に従って行われるプラエスやイディス・ナインによる数度の砲撃。その度に消えていく、撃破された敵性兵力や守れなかった友軍の光点表示。

 そして、それらの動きを見守りつつ、イディウム達は最初に布陣した地点へと戻り、待機していた。

「戦局は、ほぼ決定したかな? プラエス、前線の脅威目標は?」

「んー? ほぼ処理し切ったカンジ。見えてる範囲に重MLメタルレイバーは居ないし、他はイディスが押さえてくれてるから、問題なーし」

 互いに、自分の視覚に投影されている戦域図の動きを見ながら、注目している目標の有無や、友軍と敵軍双方の兵力の流れを参考に、自分たちがどう動くべきかを考えていく。

「これなら大丈夫っぽい?」

 プラエスは手元の仮想キーボードを操作して、幾つか目印として付けていた戦域図のマーカーを消しつつ、大口径スナイパーキャノンの撤収を始める。

「みたいねぇ。なら、この後の無線に注意しながら、帰る準備でも始めましょうか。イディス、聞こえる?」

 呼びかけると、一、二秒ほどのノイズを挟み、イディス・ナインとの通信回線が開かれた。

『はい。無線感度は良好です』

「そろそろ撤収を始めるから、そっちも帰還準備して良いよー」

『了解しました。次の砲撃の後で帰還いたします。こちらは見ていませんが、メディアのヘリコプターが上空から撮影しているようですので、ひっそり移動します』

「あー、そうねぇ。そんな感じでお願い。さて、こっちも準備、準備っと」

 装置に接続している手を動かし、イディウムは機体各部の挙動を戦闘用モードから通常用モードへと切り替えていく。その操作に従い、武器と一体化している腕部の武装が格納されて通常の手が現れ、背面、脚部各所に装備されている推進装置が、空気が抜けるような音共に外部に向けて露出していく。

同時に、プラエス側からの入力によって、展開していた大口径スナイパーキャノンや小口径狙撃砲の砲身が折り畳まれるように動き始める。そして最後には弾頭装填部とほぼ一体化する程度まで格納された。

「右側の大口径スナイパーキャノン。左側の小口径狙撃砲。どっちも格納終わりー」

「ほーい。ならゆっくり移動しましょうかねぇ」

 次は足を動かし、イディウムは機体の脚部に後退を入力していく。軽い振動と体へのゆっくりとした圧を感じると同時に、二人の視界に映る景色が流れ始める。

そうしてそのまま、イディス・ナインと合流すると、輸送車両カーゴの退避予定地点へと向かうのだった。


 その後。

 戦闘を終えて、報酬と基地の兵士達からの称賛を受け取った二人は、無事に自分たちの拠点へと戻ると、シャワーなどで体の汚れや疲れを癒し、本格的な休息に入った。

『我々、大河ダーフゥ重工防衛軍は、を不倶戴天の敵である大天ダーティエンインダストリーの卑劣なる奇襲攻撃部隊に勝利した。この勝利は、我ら大河重工の製品と軍事力が優秀であると言うことを世界に対し証明したと同時に……』

 プラエスは、愛用のリクライニングチェアに寝転がりながら、ラジオのスピーカーの向こう側で声を大にして勝利演説を行っている、大河重工企業軍の司令官である壮年の男性の声を。一方のイディウムはソファで、テレビで生中継されている大天インダストリー広報部主催の記者会見を、何処か冷やかな態度で聞き、或いは見ていた。

 演説では、如何に自分たちが正義であるかを。

 記者会見では、如何に自分たちに責任が無いかを、それぞれ言葉巧みに主張している。

(どっちも戦場では死ぬことの無い、殺害してはいけないタイプのデフォルトヒューマン。私らからすれば、どっちの主張も、ただの茶番なんだよねぇ)

 早々にラジオを消して居眠りを決め込んだプラエスの様子に苦笑しつつ、イディウムもまた、テレビの画面を消すのだった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る