第6話 妖精の華園と護衛対象
エレベーターはあっという間に最上階に着く。チーンと音が鳴り扉が開き花の香りが漂う。
通称妖精の華園と呼ばれるだけあって見渡す範囲の壁は花柄だし造りや照明はメルヘンチックだ。幻想的な光が廊下を包む。学園の敷地ギリギリに建てられたこの寮はすぐ近くに海がある。海に面している角部屋がイリス会長でその隣が件のエレオノーラ嬢で一番学園に近い位置があの風紀委員長でその隣が九重先輩。でエレオノーラ嬢と九重先輩のあいだにが僕の部屋らしい。ちなみに上階になるにつれて部屋が広くなって居るとの事。部屋をチラッと見た限りでは前金で頼んでいたものが完全に揃っていた。
「理玖くん。エレンに貴方の事を紹介したいのだけど時間良い?」
一通りの荷物を整理し終えるとイリス会長がスマホ型デバイス通称収納電話から聞いてきた。
「ええ。会長の部屋に伺えば宜しいでしょうか?」
「そうして頂戴。できれば武装も軽めにしておいて」
「畏まりました」
ズボンのベルトに素早く鞘とホルスターを取り付けセフィロトとアルティメアを収めて部屋を出る。例の収納電話が部屋の鍵にもなるらしい。そしてオートロック。万が一忘れても魔力波動を登録しておけば良いらしい。なお魔力波動とは個人が持つ魔力の周波であり僕の周波はflying fafnirという曲らしい。構え矢を放てって弓矢そこまで得意じゃないんですけど。
そんな事を考えているうちにイリス会長の部屋の前に着いた。まあ隣の隣なので当たり前だ。
ノックを4回して入室の許可を求める。
『空いているわよ皇くん』
なぜか明るい口調で告げて来た。
「失礼し」
ますを告げ終わる前に飛んできた矢を拳で叩き落としずっと隠し持っていたナイフを左手に出して首元を狙った鉛玉を弾きそのナイフを投げる。右に体を倒してゴム弾を避けて右足でまた矢を逸らす。魔術無効化の魔法を詠唱破棄して使い周囲の魔術発動を全て無効化する。代償としてはこの魔法発動中は他の魔法が使えない。さらに天井から迫ってきた短剣を壁を傷つけずに跳ねて戻ってきたナイフで迎撃してその人物をなげてお腹に右膝を乗せて左手に持つナイフを首筋に当ててセフィロトを右手に抜き背を向けた玄関に銃口を向けて告げる。
「失礼します。ところでコレは何でしょうか?イリス会長に九重先輩。あとベランダに居るお2人も」
全員の息を飲む音が聞こえる。その内の2人が武器を下ろしたのでセフィロトとナイフは収めてイリス会長の上から退く。ただ依然として首元に手刀を置きアルティメアの柄に右手を置く。
「すみません皇くん。そこのお嬢さま2人が如何しても試したいと言うので」
一番最初に告げたのは九重先輩。背後の殺気はもともと薄かったのが消え完全に友和状態になっている。
「試して悪い、皇副会長。流石に乙女の園に男を入れるのと護衛としての腕を確かめたかった」
今度はベランダにいた黒峰先輩がそう告げた。ただ彼女から感じるのは畏怖と尊敬と驚嘆。となるとあとはこのシスコン2人だ。どっちがどっちかは簡単に分かるが。
「さて会長。このような格好なところ申し訳ありませんが上の魔法式解いてくれませんか?」
押し倒したような状態で緊張している会長に告げるが意味を成さない。そっと立ち上がりセフィロト抜きその式に銃口を向ける。
「
そしてその引き金を引く。
魔力で構成された弾丸が銃口より放たれ式に着弾。その瞬間、刹那にして魔法式が魔力へと還る。
「
仕方ないとは言え床に強く打ち付けた会長に完全治癒を使い回復させる。
「ふぅ。強いね理玖くんは。私たちの全力だったのに」
「限られた空間でですから次第点でしょう。それにこれ外の娘のためですか?」
チラッと太陽眼をベランダに向ける。するとベランダから黒峰先輩が出てきてその後を付随するように少女が入り込んでくる。
銀髪に蒼眼。全てを凍らすような精緻な形をした美少女がサラサラな髪を靡かせ現れる。
その少女は暴力的なまでに美しかった。
「初めまして私の護衛。私の名はエレオノーラ・アステリア。巷では無能少女と呼ばれているわ」
後悔や戸惑いに憤りを感じる凛とした声が耳元に届くただちょっとした好奇心もあるように思う。
「こちらこそ。エレオノーラ嬢。不肖この皇 理玖が貴方の剣となり盾となりましょう」
いま、ここに1組の歪なコンビが結成された。片方は魔術の才0の無能少女。片方は特殊経歴を持つ青年。
彼らは未だ知らない。その選択がありとあらゆる世界の不条理や闇へと戦うことになろうとも。
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