第5話 理由と女子寮

「お父さんを潰すのに力が欲しいって如何いう意味だ?」

 そんなプライベートに土足で踏み入りますかね?風紀委員長。

「親父は非合法実験や奴隷売買とかの禁忌に手を染めているんだ。ただの対魔物用だけならいざ知らず同じ人に兵器を向けるのは嫌なんだ」

 若く青い考え。ただその気持ちは分からなくもない。

「兵力に対抗するのに兵力しかないのは分かっている。がそんな事のためにこれ以上の環境破壊が起こるのはコリゴリだ。人工的に異能者や魔術師にスキル保持者を作る狂気の実験が行われているし助けてと泣き叫ぶ者を辱め家畜同然の扱いを見て救いたかった」

 …。捜査が足りていないな。こちらに引き込むか。上杉軍閥の技術は惜しいものがあるし何より護衛のために欲しいものが幾つかある。一部はイリス会長に頼めばなんとかなる。

「理解したが条件がある」

「何だ?」

「それは——」



「ねえ理玖くんあの条件本気なの?」

 学園寮への道を歩いている時案内してくれている会長がそう振ってきた。

「ええ。でも会長なら眼を使えば分かるのでは?」

 月光眼の隠蔽を防げるのは太陽眼と神眼のみ。それ以外ではほぼ不可能。故にあの場で告げた条件が本当の望みであるのが分かるのは会長ただ1人。ちなみに返事は一晩保留。まあ妥当なところだろう。

「いや正直意外というか。あの3つの銃じゃあ足りないの?」

「セフィロトやサードは本来大型や戦術級ですしスピリアは霊の喚起が必要なので汎用型魔銃は有ったほうが便利でしょう。自衛手段にもなり得ますし」

 とある一部分を伏せ告げる。まだ何丁か銃はあるし無限装填のクロスボウもあるので絶対に必要かと言われれば何とも言えないが。

「そうエレンのことも考えているのね」

「ええ。なるべく必要にならないようにはしますが万が一もあります実技や体育は男女別ですから。まさか女装するわけにも行きませんし」

「でも似合いそうよね。体の線は細いし喉仏も出てなくて充分高いし。歩幅もほぼ女の子の感じがするし」

 しまった。ついやれてしまうから口を滑らせた。前にも一度やらかして半年のほとんどを女装させられていたのを思い出す。なぜ女性は僕を女装させたがるのだろうか?

「知り合いにメイドとしても食べていけると言われたほどですから。一応無限収納に色々入れているので」

「それは良いことを聞いたわ。私の収納じゃあ屋敷一軒分だから」

「それで充分と思います。ところで今覗かれているのはエレオノーラさんですか?」

 ついこれ視られている感覚がしたので太陽眼で視返みかえしたら銀髪そして蒼眼の美少女がこちらをのぞいていた。

「ええ?この距離で分かるというかエレンも何覗いているのよ?」

「まあ悪意を感じないのでこの距離でようやく気が付いたんですが」

 にしても鬼のような形相だな。姉が姉だから妹もそうなのか?報告書に近親百合ップルとは書かれてなかったはず。それとも無能なためそんな調査もなかったのか。

「私が男性を連れていることはほぼないからね」

「執事でもですか?というかかなり見られてませんか?」

 なんというかカメラが3台ほどにその他多数の視線が。

「エレンの護衛が男子寮に居ても意味ないでしょ?」

「…予測はしていましたが女子寮ですか。いざという時は近いほうが良いので文句は言えませんね。ところで男子である僕が女子寮って問題がありそうですが?」

 現在進行系でとんでもない悪意がとんで来ているし。

「そのわりには慣れているという気がしているよ?護衛も執事も召使も申請さえあれば女子寮に入れるわよ。もっとも在学中に務まるものではありませんけど」

「よく修道女の沐浴に付き合わされましたから。たかが集団生活の場で気を乱していたらここに居ませんよ。執事検定メイド検定どちらも1級ですから」

 それになぜか巫としての訓練もさせられたし。肌が白磁のように白いのが原因か?

「理玖くんって男の子だよね?なんで女性系統のもの持っているの!本当は女の子だったりするの?」

 それ自分でも疑問に思っています。

「一応生物学的にも鑑定でも自分でも男だと思っていますよ。なんなら確認しますか?」

「いえ遠慮するわ。っと着いたわね。渡しそびれたけどコレ、カードキーで学園内の買い物で使えるから。金額は口座から引かれるけど」

 渡されたのは旧時代のスマホサイズの板。というかまんまスマホ。現代の主流の通信デバイスは腕輪型か眼鏡型もしくはアミュレット型だ。魔術文明との交流でAR技術が進歩したためである。

「便利ですね。必要ないですけど収納と自己鑑定があるようですし」

「私たちのような高位魔眼持ちはほぼどちらも持って産まれるからね。あくまで自己鑑定は精度が低いから当てにするものじゃあないけど」

 どうも鑑定出来るのはステータスのランクとスキルにレベルのみらしい。いやそれだけ分かれば充分か。魔法は分からないらしい。そのため会長は火炎魔法については無視していたらしい。なんでも太陽眼には偽装も少し出来るそうで。いやこの場合は鑑定妨害か。始めて知ったわ。だって神をも惑わす月光眼があるんだもの。


ピッ。

ピッ。

 どうもカードキー一回で1人しか入れない仕様みたいだ。いやゲームじゃないし。そして僕のキーだと男子寮にも入れるらしい。謎だな。もちろん他の男子生徒で申請が行われていない限り入ることは不可能である。


 そんな厚い警備を通り一階のフロントに入る。一階と地下は共用スペースで温泉や沐浴の部屋トレーニングスペース食堂娯楽室などいろいろある。ただ部屋にはシャワールームにリビングもあるとの事。あと女子寮らしくコスメ関係も充実しているらしい。そして女性用下着などの部類もこことのこと。それ以外は学園内のショッピングモールやスーパーなどで手に入るとのこと。幸いにも一階は文具系や食料品、日用雑貨。地下一階に装備関連や消耗品などでその他は地下二階以下。そこまでいかなければ十分だ。

「会長その方は?」

 地下一階まで案内してもらっているとふいに後ろから声がかけられる。振り返ると純和風の美人さんがいた。ふむ薙刀か珍しいな。

「あら九重さん。この人は私やエレンの多種的な使用人で皇 理玖というの。階位8で一年部の副会長を務めてもらうことにしたわ」

「それなら同業者ですね。初めまして皇くん。私は九重 穂希です。三年部で会計を務めております。以後お見知りおきを」

「こちらこそお願いします九重先輩」


「ところでエレンちゃん大丈夫なのですか?」

「?」

「あっ!理玖くん急ぐよ」

 何があったのだか。知らないが会長が腕を掴みエレベーター向けて駆ける。その後ろには九重先輩も居る。何か非常に不味い気がする。過去の経験からそう感じていた。

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