第3話 灼炎皇姫と能力

ほんのり甘い匂いが漂う。彼女は一瞬だけこちらに視線を向けてすぐグレン学園長へと向ける。その視線は若干の戸惑いが見られる。

「紹介しようイリス会長。こちら新しく編入する事になった皇 理玖だ。先日教えたように彼女の護衛も務める。でこちらがイリス・アステリアだ」

 学園長がハンドサインで互いに向き合うようようにと指示を出す。

 目に入ったのはワインレッドの赤い長髪。腰あたりまでありすごいサラサラである。目は魔眼持ちなのか両眼共に魔力が宿っており瞳孔には炎が煌めいている。月光眼の対の魔眼【太陽眼】か。身長は170位か。女性としては大柄で美人。資料からは純魔術砲撃と思っていたが全体的な体のつくりはしっかりとしているし出ている所は出ているし引っ込んでいるところは引っ込んでいる。

「初めまして皇くん。紹介にあったようにエレオノーラの姉のイリス・アステリアです」

「こちらこそ。妹さんの護衛を務める事になりました皇 理玖です」

 差し伸べて来た手を握る。これは大丈夫なのか?気に入れたのだろうか。

「よろしくね、同業者」

 蠱惑的な笑みを浮かべてそう言って来た彼女に思わずドキリとした。それは瞳を見たのだろうか。それとも覗いたのだろうか。

 


 その困惑は膨れ上がると共に右の月光眼と左の太陽眼が爛々と輝いていた。

「ええ。左目に誓って」

「頼むよ魔法使い」

 その言葉にぞっとするが陛下を通して伝わっているのだろうと思い野暮な考えを捨てて彼女を視る。


イリス・アステリア 階位レベル7

能力値

筋力C 500 耐久D450 敏捷C550器用B650魔力A700

スキル

魔力増大 魔力増幅 魔術改編 太陽眼 杖術 槍術士 収納 火炎魔法 鑑定 集中 指揮

称号

灼炎皇姫スカーレット・プリンセス


 流石はアステリア家が誇る才媛。魔力系や改編能力が高い。というか火炎魔法って超攻撃性だな。怖い。燃やすわよとか言わないよな、言わないよな?

「にして同じ眼に見られると分かるのね」

「そうですか。先に覗いたのは会長でしょうに」

 ちなみに僕のはこうだ。


皇 理玖 階位レベル8

能力値

筋力A700 耐久A700 敏捷A700 器用A700 魔力A700

スキル

剣聖 銃聖 無限収納 太陽眼 月光眼 召喚 鑑定 看破 完全察知 神魔導 契約 無詠唱 詠唱破棄 並立思考 英雄覇気 階位操作 俯瞰視点 完全記憶 錬成


称号

魔王殺し 英雄殺し 支配者ドミニオン 守護者デフェンダー 切り札エース 

 

「皇くんは少々特殊だと聞いていたけどここまでとは」

「学園長も見たんですか」

 予想外の場所からのコメントになんとも言えない気持ちになる。勝手に視た灼炎皇姫はともかく拳聖、貴方もですか?プライバシーという言葉が飛んでいく。いや偽装できれば良かったのだろうが生憎と今は別の事に全神経を使っているので能力面を隠蔽するほど余力がない。

「そう言えば会長は生徒会一年副会長を探していたな」

 ピキリ。何かとんでもなく嫌な予感がして冷や汗を掻き始める。いやなまさか

「ええ、書記はエレオノーラが担当しているので。もっとも階位が現時点で一番高いのは私の7。何よりも実力を求められる我が学園で生徒会を務めるのに相応しい人などそういませんから」

 チラッ。何かを訴えかける2人の視線は獰猛な肉食獣が乗り移ったように見える。

「それに何処かの誰かさんの契約武器の1つ生聖銃セフィロトには対魔道士用の弾や無力化の弾があると聞いたのだが」

 チラッ。拳聖それ機密情報なんですけど。いや陛下づたいで聞いたら意味もないな。

「まあ、それは素晴らしいですね。後、伝説の魔眼を持っていれば良いんですけど」

「何故に2人して僕を指すのですか?護衛ですよ」

 その言葉に副会長に就かせたいらしい2人は猛勢に出る。

「だってそうじゃないと合法的にエレオノーラを守れないじゃない」

「そうだ。彼女を狙う連中もまさか編入と副会長と目立つ奴が護衛とは思わないだろう」

 それは否定しないが。コレ何かあるな。

「副会長くらいは良いですけど。ところで訳ありですよね」

「それはないよ。ただ…」

 ニヤリとコンソールを操作しながら言う学園長。

「レベル6の問題児がいるのよ」

 何か嫌な予感がした同時に後ろの扉が開かれてズカズカと歩き僕や会長には目も向けず学園長の机まで進む。そして机をバンと叩く。

「学園長何故、俺を1年の副会長にしないのですか!?」

 あーこれは問題児だわ。するとかの拳聖は右目で軽くウィンクをする。その意味を正しく理解した僕たちは首肯する。

「なぜかって?もう既に任命したからだよ。一年部最強を」

 そして月光眼の力も多少借りながら始める。

「じゃあ宜しくね!皇理玖副会長」

 柔らかな笑みを浮かべ僕に告げてくる。親しみの意を込めても良いんじゃないかと思うが多分なにかしらの狙いがあるのだろう。

「ええ、こちらこそお願いします。イリス会長」

 それに応えるように僕も笑みを返しそのセリフを告げる。互いの目にある炎の煌めきを見ながら。

「という事だ。彼は諸事情で入学に間に合わなくてね。編入という形だがこの学園の一年部に入るんだよ。そして彼の履歴を視る以上、彼以外に適任はいない。仕事処理能力の高さはかのエレオノーラ嬢が一番だ。巷では無能少女と呼ばれているが私はそうは思わない。というか生徒会役員は会長であるイリス・アステリアが決めることだ。そして彼女が任命した以上彼女が罷免するか彼が問題行動を起こさない限り罷免は学園側はできない」

 まあ起こさないだろうがと付け加えるように言う学園長。そっと会長を見るとそうらしい。ただ例外もあるみたいな唇の動きがあったが。それは多分アレだろう。

「決闘だ!皇理玖。もはや生徒会会長にも認められたお前が逃げるわけないだろう?」

「…」

「…」

 一旦、沈黙が起こる。例の問題児以外は全て彼の元へと視線を集めている。

「お前、誰だよ?せめて名乗りと自分が負けた時のチップくらい言え」

 そうただ冷酷な口調で嘲笑うように告げた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る