第13話

第13ー1話二人の交渉と新生活

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 それからと言うもの、多少ピリピリしながらも、わたし達は穏やかに仲睦まじく暮らして、秋は時々父親と会っていたので、わたしにも会う時に紹介してくれたし、父親は理解ある人でわたし達の関係を祝福してくれたので、この親とならまだ上手くやっていけるかなと思いました。

 それで卒業の時に友人同士は、時々ちゃんと連絡を取ろうと約束して、野分ちゃんの緩い返事に秋がまた突っかかる様な事にもなっていましたが、概ね良好に進んでわたしも含めて皆和やかに別れられたのです。

 秋はその後の二次試験で、物凄くいい大学に受かってしまったので、却って学費はそれほど掛からなくて、わたしの母への秋の心理的な負担も少なくなったのではないでしょうか。


 わたしはと言うと、ちゃんと事前にオープンキャンパスも行って、願書も出しておいてから、大学側にも自分の事を伝える事を忘れずに、その配慮がされる大学なのは確認しているので、不安もありましたが多分何とかなるのではないかと考えていました。何とかなると、多少は楽観視出来るメンタルも育って来たようなのです。


 そして大学入学前に、何かと便利だろうから、わたしは頼み込んで秋にもUSAIとそれの拡張機能を追加するインプラント手術を、簡易に出来る事もあって勧めてみて、それを秋も前々から興味はあったみたいでもあるし、わたしとエミリーの関係が羨ましかったそうで、早速それで契約に行った事も覚えています。

 幼少期より教育を施しているUSAIよりも多少使いにくさや、これからの教育は難しい面もあるでしょうが、成人してから購入する人もまだまだいるし、それだからと言って不便を感じる様な作りにはなっていないはずなので、今では大いに使いこなしている様が、秋を観察していれば見る事も出来るのです。


 秋はそのUSAIを〈無月むげつ〉と名付けたみたいで、これはわたしのいない時はその彼女で、癒やしに変えようと言う意図があると教えて貰いました。

 わたし、月夜が無いから無月とは、何とも考えたものだと言うのか、それとも安直だと言えばいいのか、それとも秋らしいのかもしれないのか、微妙に評価に困るネーミングセンスです。


 大学の入学式――わたしが通う所は形式的これがあったのです――に行くまでの束の間の時間には、わたしに色々使いこなし方を聴きながら、そしてエミリーにもコツの教えを乞うて、徐々に自分に最適なフォーミングをし始めました。


 秋は既に十八歳になっていましたけど、わたしは三月になってようやく選挙権が得られる年齢に到達したのもあったし、卒業するまでの厳禁が学校を卒業した事で、ついに解禁になったのですが、かなりお互い緊張していたのを覚えています。


 婚前交渉だとか言って昔気質に怒らないで下さいね。わたし達は、自由にその権利を行使してもいいと、自分達で信じられるようになったので、そうしたまでです。だからと言って、誰かが充分に慎重にするなら、高校生で恋人と交合に至る事をわたしは否定する訳ではありません。


 それにしてもその初回には困りました。いえ、初回だけではなかったですね。

 秋は上半身への攻めは随分手慣れて来ていた様子だったのに、下半身への愛撫となると、ほとほと困ったと言った感じで臆病で、どうしていいかもわからないみたいで、手本となるほどわたしも知識がなかったにも関わらず、わたしが主導権を握らされる羽目になってしまったのです。


 しかし、ここで詳細に描写する事はしたくないのですが、わたしは少しばかり知識が邪魔して、口淫をしてもいいものか躊躇っていました。

 秋にしてあげるのはいいですし、手でもしているので何も問題はなかったのですが、どうやら今の医学的観点からは、クンニリングスは喉頭癌のリスクを高める事になるらしいのです。これは男性器にするフェラチオでも同じ事ですが、わたし達にはそれは考慮の対象外ではあります。


 しかし、これは言うと何かストップをかけられそうだし、それほど自分が最初から長生き出来る気もしないし、でも出来るだけ秋とはいたいけれど、秋にももっと喜びを与えたかったし、その性器への干渉への抵抗感を減らしてあげてリラックスして貰いたかったのもあって、ついにいきなり行為の流れでわたしはしてしまいました。

 でもわたしは後悔していませんし、秋の嬌声が凄くわたしの官能も刺激したので良しと判断します。


 そう考えると今までの事を顧みて、わたしが秋を性的刺激に導いて、それはもう書けないくらいの状況を作れた事は、望外の喜びでもあったのです。

 秋が何とも可愛くて、あんなに格好いい普段からは想像出来ないくらい、こんなにもベッドでの可愛さと言ったらないのですから、わたしの新しい世界への扉がまた開かれてしまったと言っても過言ではないではありませんか。


 しかしわたしも触って欲しくて堪らなくなっていたのにも関わらず、秋は躊躇いを隠せませんでした。

 相当に抑圧が強くて、耐性をつけるのに必死だったのに、まだ踏み出せないようなのです。そこにはわたしを傷つける事への恐怖もあったのかもしれません。


 ちゃんとした手順と方法なら、傷はつかないし、秋なら乱暴にするはずもないと思うのですが、自分の何かを恐れている秋に無理強いは出来ませんから、その日は秋を満足させて、わたしは気に病む必要はない、徐々に慣れていこう、淡雪さんからしたらマシだよ、とか何とか言って一人で慰めてから、またベッドに戻って寝たのをまざまざと思い出します。



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