第11ー12話夏の過ごし方はそれぞれ

 夏休みに入ってしまうと、その辺の秋の人気について煩わされる事もなく、完全にわたしが秋を独占出来るのでいいのですが、例年通りわたしはずっと暑さと気圧の変化に負けてへばっています。

 クーラーはつけっぱなしですが、それにも体調は崩されて、もうダメージは最大であって決してマシになる様な事態にはなってくれません。


 そうやって宿題を適度にこなした後にダラダラしていると、砂糖さんからメールが来て、何やら最近はちょっと抵抗感も薄れて来たから、今度鬨子さんとデートすると言うのです。

 それはお熱い事でおめでたいのですが、その後にわたしは秋とはデートしたりしないのかと問い質されてしまったので、そう言えばデートってした事ない、でも秋は家でいちゃつくだけで満足してるようだし、わたしもあまり深く考えて来なかったし不満はなかったのですが、そう意識させられたらデートしてみたい気もします。


 しかし、しかしですよ。

 こんな炎天下の中、わたしみたいな体力もなければ病気がちな人間が、すぐにクーラーのある教室にたどり着く訳でもないのに外へ出掛けたらどうなるでしょう。

 屋内でデートならいいですけど、大きな総合商店でショッピングするとかでしょうか。

 遊園地とかそんなのには絶対に行きたくないですし、大型書店になら一日居ても飽きない自信がありますが、そんな所でデートになるかと言われたら疑問ですし、何より書店って勝手に各々で好きな棚を見ていく訳ですし、一緒に回るとするとどれだけの気苦労があるのか考えると、ちょっと嫌な気もしてしまいます。

 あ、でもどうせ隅々まで見るのなら、秋とあれこれ話しながら次々に順番を決めてから棚を眺めていくのはいいかもしれません。


 問題はそんな都心にまでは行く気力が湧かないって事です。

 それなら近場で何か済まないかと考えて、そうだ紺さんのお店で宿題でもしてみたらどうだろう、あそこなら音楽も掛けているし、ちょっと違う気分を楽しめるかもしれない、それならそうしようと思って、秋が外から帰って来るのを一日千秋の思いで待っていました。


 秋はこの頃図書館などで、色々と勉強になる本を探しているみたいです。

 今も地道に続けているわたしの執筆の助けになるようにと、文学作品も借りれば、評論とか読書関連の本なんかも借りたりしているみたいです。


 またどこから見つけたのか、音楽の棚にあったと言うロックのガイド本なんかも読んでいましたね。

 わたしがあれこれ言うより、ああ言う物の方が体系的に博覧会の要領で大体の有名なバンドと代表作は総覧出来ますし、いいんでしょうね。

 わたしなんかは、細かいジャンルのガイド本を見て、色々なアルバムにたどり着いたので、大まかな物より細分化されたガイドが重宝したくらいで、今度貸してあげようかと思っている所です。


 ああ、そう言う意味では読書ガイドの本なんかもあるようなので、それも借りたりしていましたね。

 その辺りは色々な物が出ているので、何が何だかわからないくらい選べない量があると秋は言っていましたが、どれも結構被っている事も多いので、これもまたどう言う意図で編集されたガイド本かを考慮して選ぶといいと言っておいた記憶があります。


 しばらくボンヤリしていたら、眠たくなったので、しばらく横になって寝ていたら、結構な時間寝てしまっていたみたいで、起きた時は当然秋さん家にいて、借りて来たとおぼしい本を読んでいました。


 そこで顔を洗って来て、秋に喫茶店デートをしようと言う旨伝えると、割と乗り気である様子。


「うん、いいね。ああでも、デートに誘ってあげなかったなんて、不覚だな。夏場は確かに外で遊ぶのは月夜の負担になるから止めた方がいいし、冬の寒い時も駄目だから、結構難しいね。だから是非、その店で勉強しよう。いい事言った」


 うーん、大分悪い気がして来ました。

 デートを催促していた訳でもないし、本当にわたしの事を気遣って遊びに消極的だったのですから、責めているんでもないですし、そう返されると面倒くさい人間な自覚はありますが、酷い女な気分です。


「ごめんね。気候のいい時なら散歩だったり、本屋とか図書館になら行けるし、極力わたしも外出る習慣つけるから。秋が悪いんじゃないのよ。わたしも砂糖さんに言われるまで、全然気にしてなかったし。家でいつでも秋の顔が見られるし、愛されてる今が幸せだから、不満なんてある訳ないじゃない」


 あーでも、と秋は一言。


「でもさ、この間から私が誰かから告白されたり手紙渡されたり、アクションがあったり接触が多くなると、月夜って機嫌悪くなってたよね」


 ちょっと恥ずかしさで、顔が赤いかもしれません。何でそんな事言うんでしょう。


「そ、それはだって、秋にわたしだけを見てて欲しいんだもん。乙女心がわからないのかしら。わたし自分で気づいたんだけど、結構独占欲強いんだから、嫉妬もするし面倒くさい事言ったりするわよ」


 はははと秋は笑いますが、苦笑って感じではありません。そこが素直な優しさではないかと愚考します。


「まぁ、ね。月夜って束縛するタイプだったんだね。いいよ、私も他の子にフラッといく訳じゃないし、月夜だけを普段は見てたいしね。でもちょっと月夜のむくれた顔も可愛いなって思っちゃったりするから、色んな顔が見たいなっとも想像してしまうんだけどね」


「何それ、からかわないでよ。おもちゃじゃないんだから、そんなに雑に扱わないで」


 ふふふ、とニコっと笑う秋。秋の笑顔はなんか悪い時でも魅力的だから困ります。


「わかってますよ、お姫様。エスコートなんて出来るかわからないけど、ちゃんと当日は手を繋いで行きましょうね」


 それはいい提案だと思い、でも何だか気恥ずかしいと一瞬考えてから、いやでも学校に一時もっとくっついて登校した事を思えばマシかとなって、ああそれに学校ではもっと何かアクションをわざと起こして、周りの女子を牽制したりもしていましたっけ。


 そう言う話をつけてから、わたしももう少しの夕飯までの間に読書をする事にして、そうだ、とその前に部屋に行ってお勧めのガイド本を取り出してから、秋に渡して聴く音楽や読書の参考にしてと言って、再び自分の世界に入って行く事にしたのです。



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