第11ー11話秋のモテぶりへの嫉妬と愛の深まり

 煽って来る女子も全然その後何もして来ないし、ほとんど意識していないのでわからないですが、男子もそんな女子の対立を知ってか知らずか、全くわたしに話しかけてくる事もないし、心配や苦痛は杞憂として平和に暮らせていました。


 いや、別の意味でわたしは心が穏やかではありませんでした。

 新学期もつつがなく進行して、ゴールデンウィークが終わる頃になると、秋の人気は前にも増して高まるばかりで、新入生にも何故かこの頃はテラスで食事をしているだけなのに、誘蛾灯に引き寄せられるみたいにどこからか寄って来て、秋にメロメロになっているのです。


 この時期辺りには、わたしと秋は家では秋が抱きついて来てスキンシップを取る事も多くなっていましたので、自然とどちらからともなく、貪るように口づけを求め合い、時々はいえ結構な頻度でどちらもが、服の上からまたは服の下に手を入れて、お互いの体を触るほどまでになっていました。


 わたし達はルールを決めて、性器には触れないように慎重になっていたのですが、上半身は結構触り合ったり、ボタンの付いた服なんかだと、脱がせてしまったりして、ブラをずらしたり、それも剥ぎ取ってしまったりして、わたしはあまりやった記憶がないのですけど、秋は大分わたしの蔵書の影響で、秋の母親からは洗脳めいていていけませんなんて言われそうになるほど、積極的になっていて、乳首に口づけされたり、わたしの小さな胸を弄ばれた事が多くなったように思います。


 それでも秋は淡雪さんみたいではないにしても、自分で一人する時も、性器を弄るのに躊躇いが多少あると告白してくれて、どうも虚無感とは違う、行為の後の罪悪感に苦しむ事に悩まされていました。


 それはそうと、とにかくすれすれのエッチまでいかないと言えない様な領域まで、わたし達は行為していたので、ラブラブなのは私自身も確信していましたし、秋のわたしへの気持ちの高ぶりも疑う事もしていなかったのですが、それでも自分自身の整理の為か何か知りませんが、秋に告白してくる女子が後輩に特に増えて、中にはラブレターを渡すと言う古風な方法で攻めて来る子まで表れて、ムカムカが止まらなくなっていた時期がわたしにはあったのです。


 つまり秋には公然と付き合ってる相手がいるんだから、どうせならファンクラブでも作るなりして、わたしとの関係を温かく見守って遠くで眺めてなさいよ、とわたしは言いたいくらい文句をぶつけてやろうかと思ったほどでした。

 でも秋はちゃんと告白には丁寧に解答して、付き合ってる何よりも大事な相手がいるからと、こっそり鬨子さんと覗いていた時は常にそんな受け答えをしていました。


 砂糖さんがその度に、覗き見は駄目だよぉと狼狽えながら、わたし達を窘めていましたが、二人でそれを完全に右から左にして、告白現場について行く連続です。

 それどころか、わたしが一人で逍遙していると、秋さんとお付き合いされてるなんて、とても羨ましいですわ、なんて比較的上品なグループの子に、何の含みもないでしょうけど話しかけられたりもして、何だかちょっと気が休まらない思いでもありました。


 ラブレターに返事を出したり、告白の場所に出向いたりする度に、わたしはどれだけ傍で秋はわたしの乳首も吸うくらいの愛し合う仲なんだぞ、とバラしてしまいたい様な気もしましたが、これは友達の皆にも内緒なので、キスしてる現場を見せるくらいしか、対抗手段はないに等しかったので、恋人はわたしなのにかなり悔しい思いでした。

 第一、友達になってくれた秋が恋人にもなってくれるまで、わたし達の周りはこんなに騒がしくはなかったはずです。もっと閉鎖的にわたし達の世界は、まるで二人だけで存在しているみたいに、秘めやかに学校の中でも確立されていたと言うのに。それともわたしが秋の事をこう一本気に思いすぎた為に、こんな日常的に人気が高い事実に目がいかなかったのでしょうか。


 秋に時々この事について、文句を言って拗ねてみせるなんて、相変わらず子供っぽい真似をしてしまうわたしですが、秋にいつだって耳元でこっそり「月夜だけが大大大好きだし、どんな事でもしたいと思うのは、月夜だけだよ。愛してる」なんていつからこんなに口説き上手になったのかと思うほど、キャラ変したんじゃないかと感じるくらい、わたしの反抗を封じる手立てを考えたみたいなのです。


 と言うか夏になるにつれて段々わかって来た事ですが、ムカつくとか何とか言ってた女子グループも、何ならクラスの男子連まで、時間が経つと秋にメロメロに皆がなっていってると、わたしの自意識過剰気味の精神から見た周囲の状況は、そんな風に変化していたようなので、秋が誰もを骨抜きにしてしまう様なジゴロの素質を持っていると思った方が、的確な分析ではないかと思うようになって、わたしはそれだけのコミュ力とアイサレンダーっぷりに、何だか嫉妬心とか嫉みみたいな感情も沸いてしまいそうになって、状況もあれこれ変化しているのに混乱して、もうどうしていいかショート寸前です。


 しかし当の秋はと言うと、そんな周囲をまるで気にしないで、仲良く出来るならそれでいいと言うスタンスで、ずっといつでも思えば出会った時からその傾向はあったんじゃないかってくらい、わたしに熱をあげているのです。


 そりゃあそれだけ愛される事なんて、全くなかったわたしですから、幸福の絶頂なんて言葉で片付けられないくらい、浮かれてもいましたが、ふっといつか熱が冷めたらとか、言い寄って来る誰かに寝取られたらどうしよう、それも男子に向いたらどう立ち直ればいいんだ、だって秋は完全にレズビアンかどうかはわからない訳で、運動部のテストステロン値の高いフェロモンを出している男子とかにコロッとイカれたら堪ったもんじゃないと思って暗い気持ちになったり、何だか情緒不安定みたいになっていたので、秋が心配してどうしたのか聞き出すから、わたしの不安をぶつけると、案の定笑ってそんな事はあり得ない、月夜だけがわたしの運命の人だよ、なんて言うのでその時はキュンとする気持ちで治まるのですが、どうしてこうもネガティブに考えてしまうのか、それは切り替えていく思考法を試す習慣をつけるように外来の診察で言われていても、中々難しいのは当たり前ではないですか。


 上半身裸にされる度に、そう言う不安があるものだから、秋は背中をさする事も増えて、肌が綺麗だとか形がいいとか、月夜の匂いが凄く官能的だとか言って嗅ぎまくったりするし、前に遺伝的相性だとか言っていた事を取り上げて、こんなに月夜の体にも夢中なんだから、他の子に靡く訳ないとか、とにかく甘い言葉をたっぷり浴びせてくれるようになってしまい、わたしは益々秋にイカれてしまって、恋の病とでも言う症状になってしまいそうで、それとももう嵌まり込んでしまっているのか、秋への好きが止まらなくなって、しかしそうは言うものの秋にされるがままになって、可愛い声をあげるんだね、なんて言われて死にそうなくらい秋の顔が見られないようにその時はなってしまいます。


 何だかその上、「ゲット・ダウン・メイク・ラヴ」だとか「ラヴセクシー」みたいなエッチな曲を、頭おかしいんじゃないのって感じに思うくらい、色々選曲して秋が掛けるので、どこからそんなの見つけて来たんだと思いますが、何やら性の抑圧から解放されるのを意識的にやらないといけないと考えている節です。

 それは秋の先述のジレンマとも関係していて、だから積極的に敢えてわたしに愛を囁いてエッチなテクニックを駆使しようとするんでしょう。

 そこにはわたしの不安を解消しようとする思いやりだけでは説明出来ない、秋自信のコンプレックスが介在していると邪推してしまうのです。


 そうされていると、段々自信もついて来ていいものですが、わたしは自分に自信は全然ないし、プロポーションだって痩せぎすで理想とはほど遠いし、秋みたいな美人と釣り合ってるなんて思えないし、だから秋に褒められると嬉しくて堪らないのですが、そこに何だか自分自身にもジレンマが存在しているようで、もうちょっと素直に愛のある生活を享受したいと思っていますが、どこまでも自分の性質からは逃れられないので、それは秋にも言ってしまうと、それも含めて全て受け入れてくれるので、その場ではとにかく多幸感に溢れるのではありました。


 我ながら、単純な時と沈む時のギャップの違いに、振り返ってみると変な気分です。それだけ精神が落ち着かない不安定な状態になっていたのでしょう。

 幸せになるほど、それを失った時の事を考えて、泥沼の心になるパターンですね。



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