第11ー4話野分ちゃんのスタンス

 秋は昼休みに野分ちゃんに詰め寄ります。


「ねえ、あの子らと本当にまだ付き合ってるつもり。あんな意地悪な人なんて、うんざりしないのかな。月夜が可哀想だよ」


 砂糖さんがおろおろしていて、鬨子さんはそんな奴ら構わなければいいし、野分ちゃんもこうして昼休みは今では一緒に昼食を共にするんだからいいじゃないか、と言うわたしと似た様なスタンスで傍観しています。


「うーん、でもなぁ。何かあった時の為に、情報網として色々な人間とコネクションがあるのは大事な事だよ。秋ちゃんには、そんなメリットだとかは考えられないだろうけど」


 うーん、ここに来て秋には予期出来ないだろう野分ちゃんのドライさが、出て来ました。

 それをわたしは世話して貰っていた去年から、淡々とこなしそんなに情を寄せて来ない態度から、友達として付き合うようになってからも、誰からも微妙に距離を置く野分ちゃんのスタンスは理解する運びとなっていましたが、そんな意識は秋にはなかったようです。


「大体、別に月夜ちゃんとは趣味も合うから好きだけど、一番仲良しって訳でもないんだし、それを秋ちゃんにとやかく言われる事じゃないと思うけどな。普通にそれはそれとして、仲良くすればいいんじゃないかな」


 まぁ、そう言う人がいるのはわかりますし、あまり誰とも濃密な関係になって、それと対立する人間を排除するなんて潔癖な形では、何かしら息苦しいでしょうし、こちらが嫌な相手とは付き合わないか、表面上の付き合いをすればいいだけの話でもありますし、白か黒かみたいに迫る秋は、わたし以上にきっちりしすぎている部分もあるのだなと思いました。


 これが母親の影響なのかもしれないなとも考えましたが、そうだとすると呪縛はかなり強いもので、結構悲惨に影を落としているのかもしれません。


「でもそんなので許せるの。それにじゃあ一番仲良しって誰。攻撃して来る人から、私達が守ってあげなくてどうするの」


 何だか、色々乱れた方向に言葉を投げますね、秋さん。


「うーん、だから誰が一番とかそう言う話でもなくて。後、その秋ちゃんの過保護なとこ、良くないと思うな。月夜ちゃんは独立した人格なんだから、月夜ちゃんが助けを請えばそれに応じればいいけど、勝手にすればってスタンスであの子達を放って置いてるんだったら、秋ちゃんが口出ししたってしょうがないでしょ」


 バチバチと火花が散っているようで、秋から発されているだけの様な気もします。野分ちゃんは柳に風みたいな感じです。


「あの、二人とも喧嘩は駄目だよ、鬨子ちゃんもそう思うなら何か言ってよ。ボク、気詰まりで嫌だよ。重苦しいよ。月夜ちゃんも黙ってるしさ」


 わたしは二人を観察、ウォッチしていたのですが、そうか当事者はわたしですよね。何か言わなければいけないのか。


「だからさ、さとちゃんが気にする事じゃないって。よっちゃんだってどこ吹く風みたいな感じで、あいつらと関わらない方法を採れるんだし、いじめにまでなるようだったら、アタシも黙ってないけど、そんな悪い事出来るやつなんか、この学校にはいないって。ハナからちょっとかぶくのもおっかなびっくりやる人間しかいないし、あいつらも口だけだろ。だから、秋ももうちょっと落ち着いたらどうだ」


 まぁ、大方の意見は皆言われてしまっているから、それを肯定する言葉だけ発すればいいのかな。


 結構、嫌な気分になって、昔の事も思い出したり、自己否定にも向かいそうで、その事は後で言おうと思いますし、落ち込んでもいるのですが、ここはわたしがキャラ変してもなんなので強がりを入れておきましょう。


「皆の言う通り、無視が一番だし、野分ちゃんは同調してる訳じゃないから、別にわたしは気にしないよ、秋。怒ってくれるのはありがたいけど、どうしようもない問題もあるから。それはわたしが嫌ってほど肌で知ってるし、見て来たわ」


 まだ納得出来ないと言う顔をして、秋は腰を下ろしてうむむと唸りながら、わたしに目を向けます。


「まぁ、月夜がそう言うなら。でもあの子らが突っかかって来たら、私は戦うからね」


 その場は何とも言えない空気のまま、次の授業まで気が重い感じであるのは、言うまでもありませんかね。



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