第9-5話夢の残滓とお風呂リベンジ
ねっとりとキスをされて、押し倒されます。胸などを触られて、服も乱されます。
こちらが何だか羞恥に身を捩っていても、秋は再び口を塞いで、スカートを下にずらして来るのですが、こちらは力が抜けたようにぼんやりと口づけの甘い感情に支配されるばかりでどうする事も出来ないでいるのです。
しかし待って下さい、これはわたしが望んだ展開ではないでしょうか、秋に色々願望のままの諸々をされてみたい。
じゃあ、これは甘美で背徳的な性交渉ではないでしょうか。
そうやっている内に、パンツも脱がされていきますが、それによってぬちゃっとなった部分を露わにされて、比喩でぼかせばわたしのソフト&ウェットになった所を秋にじっくり眺められて、死にそうになりながら、その言葉で表してはいけないかもしれない箇所に秋の唇が宛がわれます。
それによって、何だか秘めやかな官能を味わって、痺れの様な思考が飛びそうな感覚でおかしくなりながら、ここでは言えない事を結構な時間掛けて、秋は凄く上手にわたしにしてくれていました。
・・・・・・汗をたっぷりとかいているのがわかるくらい、冬でも暑い気持ちで目が覚めて、ああわたしは何て夢を見てるんだと悶えながら、時計を見るともう正午過ぎですよ。
秋はとっくにわたしのベッドの中にはおらず、パンツもびっしょりでしたので、全部纏めて着替える事にしたのですが、汗を拭いたのに少し寒気もして、また体調崩したら嫌だなぁと思いながら、居間に行ってお湯を沸かしながら炬燵に入ります。
「ああ、おはよう。大分、しんどうそうに寝てたけど、大丈夫?」
そう何やらストレッチをしている秋が、いつも通りとてつもなくわたしには甘く響く、優しい声で語りかけてくれます。
「え、ええ。ちょっと寝汗をかいちゃったみたいで、寒気が少しするくらい。暖かい物飲んで、ゆっくりしてるわ。どこか行くの?」
何だか秋もわたしも疑問文ばかりで会話している気がしますが、その辺はあまり気にしない事にしましょう。
「うん、ちょっとランニングして来ようと思ってね。体が鈍って来てるから、健康の為にも運動しないとね。勉強ばかりだと息苦しくなっちゃうし」
「そう。あ、じゃあもうそろそろ梅干しと紅茶のリーフがなくなるから、買って来てくれないかな。いつも飲んでるやつ、わかるでしょ」
「オッケー。梅干しは、あの果肉の多いやつでいいんだよね。あれ、本当に好きだよね。梅干し好きなんて子、初めて見たなぁ」
そんな風に笑いながら、秋は上着を着て出掛けるのです。わたしは一人取り残されて、パンを食べながら、沸いたお湯で紅茶をレモンティーにして飲んでいました。
しかしわたしが無理に平静を装っているのがおわかりでしょうか。今、とっても乱れた気分なのですよ。だって、あんな夢見て平然としていられますか。
秋にあんな・・・・・・あんな行為をされるなんて・・・・・・。
夢の内容を記述するのだって、ちょっと言葉を選びながら書いたのに、どうこう論評出来ますか、いえ出来ません、反語ですよもう。
そうしてエミリーに暗い曲やら、ハードな曲やら、色々掛けて貰っていたのですが、一向に落ち着かなくて、そこでムーン・ティーの「パーフェクション」を聴く事にしました。
このアルバムは、時々どうしようもなく落ち込んだ時とか、とにかく集中したい時に聴くのですが、とにかくギター・ボーカルのゲシュタルトの遺作でもあるので、思い入れがとてつもなくあって、昔にもかなり必死に英語の歌詞を理解するのに努めた記憶があります。
ムーン・ティーについてあれこれ語るのは、止した方がいいでしょうね。四枚のアルバムしか残さなかった、カルト的なバンドなのですが、ベースのミゲル・Nは今でも山のように、それこそフランク・ザッパかみたいなペースでアルバムを出しているのですけど、それはまた別の話ですし、それほどこの国で気にしている人もいないでしょうしね。
そうして、しんみり聴いていると、「完全なものなどどこにもないのに目指す地点は完全な境地なんだ」とか、「世界を極端に見るのはやめにしよう僕自身の見るものを歪んだ視線で見ないようにしよう世界を愛する為に」なんて文言を聴いていると、何だか禅の世界みたいなイメージが湧いて来るのはわたしだけでしょうか。
空の思想って言うのは、凄く深淵な世界に導かれる様な気持ちになるのですけど、どうやら世界中でこれはニヒリズムと誤解される事も多いようです。
ここで一つ言っておくと、空と言うのは、つまり永遠不滅の実体、霊魂の不滅とかそう言う類のものはなくて、これはインド思想ですから輪廻転生する中で、絶対的な自我などなく、それ故色である、つまりこの現象世界がそうやって空でしかない状態で成り立っているって事なのです。
それでその空の思想を推し進めていけば、偏った考えに支配されてはいけないって事でもあって、更に偏った思考をしてはいけないって言葉に囚われてもいけない、みたいな無理でしょくらい難しい世界になっていく。だから、道元は悟りに完成なし、なんて言ったんですね。
いや、ムーン・ティーは海外のバンドですし、仏教的な影響があったかはあまり情報がないので、わたしにはわからないのですが、とにかく究極の世界を求めていって、それでも敗れていく、それでもまだまだ漸化線のようにチャレンジしていくって事かなぁ、と勝手に想像するのですけど、しかしそれでいて音楽としてもかなり面白い事をやっていて、ロックバンドがロックを逸脱するのは昔から山のようにあった訳ですけど、ムーン・ティーもそうやってヘンテコなアルバムを作ったのではないでしょうか。
そうやって聴いていると、秋が帰って来ました。呑気な感じの息づかいで、よくランニングして買い物もして疲れないなと感心してしまいます。
「おかえり」
とボソッと言って、わたしは寝転んだまま、秋を見つめます。
秋はズボンを穿いていたので、パンツが見えるなんて事はありませんが、上着を脱いでいる様を見ていると、どうも今まで落ち着く為に音楽を聴いていたのが無駄になりそうで、わたしの心はどうしてしまったんだ、しっかりしろ月夜、と自分を励まして起き上がります。
冷蔵庫に梅干しを入れて、棚に紅茶のリーフを入れる秋。それを何だか馬鹿みたいに見つめるわたし。
惚れたが悪いか、なんて小説の言葉が浮かんで、いや確かにそうなったら負けだなぁと思いながら、紅茶を一口飲んで本でも読もうと思って、炬燵机に置いてある本を手に取ります。
宿題も順調に進めながら、秋も自分の勉強をより頑張っているようで、邪魔はしないでいる為に、わたしはあまり話しかける事もせず、ムーン・ティーを他のアルバムにまで手を伸ばして、延々聴いていたのですが、時々秋と目が合うと、秋はニコッと微笑んでくれるので、恋する乙女としてはとても気配りの出来るこのやり口に、ただただほあっとボケッとするだけしか出来ません。
夜になっていつも通り夕ご飯の手伝いをして、四人で食べてから、部屋に戻ってお風呂のお湯を入れながら、またも昼間の事など何も反省してないんじゃないかとか言われそうですけど、場面場面で気持ちは変化するのですと言い訳しながら、秋に切り出します。
「あ、あのさ。わたし、お風呂・・・・・・リベンジしたいんだけど」
「ほえっ? あ、ああ。一緒に入るって事ね。うーん、確かに今日体調は良さそうだけど、本当にのぼせたりしないかなぁ」
「だ、大丈夫。頑張る」
ポンポンと頭に手を置く秋。あの?
「それじゃ駄目だって。リラックスして。私もそりゃあドキドキするけど、月夜はあんまりにも突っ込んで自滅する感じだからね」
ああ、わたしの駄目な所はお見通しですか。そりゃあ、わたしは自意識過剰のポンコツな子供なのにエッチな人間ですよ。開き直る態度も出来ず、モジモジしていると、
「わかった。じゃあ、一緒に入ろう。月夜の裸は確かに綺麗だから、ちょっと興味はあるし」
ボボボと効果音が出た様な顔になっていたのではないでしょうか。
とにかく、気が気でなく秋が蛇口を止めてくれてから、心ここにあらずで、いつ着替えを持ったのかも定かでないまま、脱衣所にいて服を脱いでいる、みたいなちょっと自分でも怖くなる行動をしていました。
服を脱いでいると、今日はまだ脱いでいない秋が、ほおーっと見つめて来たので、
「恥ずかしいから、脱いでる間は、こっち見ないで・・・・・・」
と言うと、何やら感極まった感じで、
「はああ、月夜、可愛いねぇ」
なんて変な感じになっているのです。ここだけ切り取ったら、秋が変態みたいに見えるのですが、秋は多分至って普通の性欲を持っているだけでしょう。
いや、性対象に見られているのは嬉しいのですが、何だかそう考えるとどんどん恥ずかしさが上昇していきますね。
わたしは急いで脱いでしまって、先にお風呂場に入ります。そうして、掛かり湯をして湯船に浸かっていると、秋が入って来ます。
何て理想的な肉体美でしょうか。
秋さん、普段のイケメンな顔だけでも、わたしだけじゃなく皆惚れ惚れとしているのに、体まで美しいのはどうしてこんなに格差が生まれるのでしょうかと思わずにいられません。
それは、秋は運動を適度にしているからですって? ええ、その通りですね。わたしとは違うのはわかっていますよ。
本当にこの前は全然見えていなかったのだなと思って、秋の乳房の部分なんかも凝視しながら、じっと秋が座るのを見ていますと、秋も照れながら微笑みます。
一応わたしも体を洗う為に、湯船から上がって、もう一つの椅子に座るのですけど、秋の方をチラチラ見ながら、わたしは緊張しながら体を洗います。
丁寧に洗っているのは、この後に何かしたいと言う深層心理だとかではないと思います。それで顔も洗って流してから、秋が顔を洗ってる所を見つめながら、わたしはどうしようかと思案します。
秋が顔について石鹸を洗い流してから、ふうと息を吐いている所に、わたしは後ろからまたも抱きついて、挙げ句の果てに胸を秋の背中にぎゅっと押しつけながら、秋の胸に手を回します。
「つ、月夜! 何してるの、駄目だったら、ああ柔らかいのが当たってる。それに手が、手が。どうしちゃったの」
もう我慢仕切れないのです。これだけに止めているのを逆に褒めて欲しいくらいですよ。
「だって、好きなの。どうしようもないの。一人でするって言ったけど、こんな風に近くにいたら、秋を求めちゃうのよ。好きで好きで堪らないの。秋は同じ気持ちじゃないの?」
「だ、だって。恥ずかしいじゃない。私だって月夜には、いけない気持ちになっちゃうけど、月夜の体の事もあるし、とにかく抑えてるんだよ? していいって言うんなら、こうするよ」
そう言い振り向いた秋は、向かい合ったわたしを抱き締めて来ます。ヤバいです、体が密着して、お股も擦れて来て、本当にヤバいです。
「私だって、月夜が好き! でももうちょっと普通にこれからはお風呂に入ろう? いつでも一緒に入ってあげるから。ね? 私だって、訳わかんなくなって、どうにかなっちゃいそうだから、とにかく湯船に浸かって出ようか」
そう言い、わたしを離した秋は、お湯に入り、ブクブクブクとやっています。
仕方なく、わたしも狭い所に入って、互いに見つめ合いながら、熱くなるのですぐに出る事にしました。
秋はその後は普通にしていましたが、わたしは恥ずかしさでいっぱいで、どうしようかと思っている所に今までの事はなかったかのように、秋が優しく話をしてくれたので、ようやくわたしも冷静に会話を交わす事が出来ました。
とにかく、この辺の経験も踏まえて小説を考えるのもいいかもしれませんと思っていたら、多少は逞しくなったでしょうか。
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