第9-4話淡雪さん照れる。そして二人の夜

 遅れていた分の宿題をささっと済ませてしまい、夕食後にゆっくりしている時に、わたしは部屋に帰らずに楓ちゃんの部屋にまだいました。

 それは淡雪さんに色々聞いてみたくなったからです。

 秋もわたしがいるからか、まだこの部屋にいます。


「あの、淡雪さん。セックスの話は聞きましたけど、楓ちゃんともうキス・・・・・・はしたんですか?」


 ぶっとお茶を吹き出しそうになって咽せる淡雪さん。楓ちゃんは、もう何か用事をしているようで、ここにはいないのは確認済みですので、淡雪さんに聞きたいのです。


「そんな事聞いちゃ、失礼だよ月夜。ねえ、プライバシーの問題ですよね?」


「・・・・・・どうしてそんな事聞くのかな。さては、何か君らの間であったの」


 ううん、と少し躊躇して、わたしは秋の手を握り、言う事にしました。


「それがわたし達、付き合う事になったので、その心得を少しばかり伝授して欲しいなと思いまして」


「へえ。そりゃあめでたい。で、どうしたらいいか戸惑ってるのかぁ。でも私に何かアドバイスが出来ると思ったら大間違いだぞ。言っておくが、確かにキスはした事ある。しかし」


 一瞬間が空いて、わたしはどんな含みがあるのか気になってしまいます。


「ただし、私からはあんまり激しくした事はないし、舌は向こうが絡ませて来たら応える程度だ。あっちは、時々凄いのをやってくるけどな。

とにかく私はそう言うのにあまり精通してないし、上手に出来ないから、楓には悪いとは思ってるんだけど、どうしてもまだ一歩踏み出せないんだよ。

ああ、月ちゃんはエッチな事に興味があるから、そんな話するんだろ。やめてくれよ、そう言うのは楓に聞いたらいい。

って言うか、高校生は清い交際をしなさいって昔から言うだろ? 古い価値観かもしれないけど、とにかくあんまり乱れまくるのもよろしくないと思う。そんな訳で話はこれまで!」


 ばーっと言ってしまって、何か一方的な決めつけをされて、片付けられてしまったのですけど、まぁ当たっているとも思うので反論はせずに更に追及する事にしましょう。


「じゃあ、色々キスは試みてるんですね。じゃあ、キスはいっぱいしてもいいんだ・・・・・・」


「い、いや。とにかくそんなに私らだって進んでないんだから。楓は凄く我慢強く待ってくれてるんだよ。君らもあんまりに度が過ぎると、抑えきれなくなるぞ」


「それって、感じちゃうって事ですか?」


 わたしの発言に、真っ赤になって黙ってしまう淡雪さん。何でしょう、淡雪さんが可愛いです。


「あ、あのね。そりゃあ人間だから、生理的な反応はありますよ、ええ。でもだよ、それで何かしちゃったりするのもどうなのって話で」


 もう一歩突き進みますかと思って、会話してくれている内にまだ話をします。


「じゃあ、自分でしたり、とか?」


 隣で秋も赤面して俯いているのですけど、それわたしにも返って来ますよね。後で、オナニーの是非を議論する必要もあるかもしれません。


「わ、私はそう言うの出来るだけしないようにしてる。どうしても我慢出来なくなった時だけな。楓も忙しいから、そんなに頻繁にしないらしいけど、他人のオナニー事情なんて知らないってば」


「わかりました。じゃあ、戻りますね。秋、話があるから部屋に行こう」


「え。う、うん」


 呆然としている淡雪さんを残して、部屋に戻って炬燵に収まります。まだ茹で蛸みたいな秋に向かって、わたしは話を切り出します。

 いや、わたしも充分恥ずかしいんですからね。


「あのね、キスしたじゃない、この間。その時は何とか我慢出来たんだけど、どうしても股間が疼いて仕方ない時は、何も何かしてくれなんて言わないから、時間を貰って一人で発散させて欲しいの」


 秋は理解したと言う顔をしながら、それでも視線が彷徨っています。


「あ、ああ。それなら、その時だけ部屋を出てるとかすればいいんだね。私は大丈夫だから、月夜も体に負担にならない程度なら、いいんじゃないかな。この間、性愛の権利とか、そんな文章も読んだよ」


 ふーむ、どうもこれは二人でするまで、わたし達も大分かかりそうですよ。

 まぁ、欲望を解消する手段を得たので、良しとしましょう。


 それからわたし達は、お風呂に入り――一人でですけど――、お風呂を出てからは、お互いに勉強したり本を読んだり、わたしは私的な少し前から続けている感想文を書いたりなんかしながら、時を過ごしました。


 それで寝る時間になって、またもわたしは積極的に言葉を紡ごうとします。どうしちゃったんでしょうか、わたし、秋に対してこんなに積極性を示すなんて。


「秋、今日は何もしないから、一緒にベッドで寝て欲しい。キスしてくれるだけでいいから、ね。いいでしょ。変な事しないけど、同衾ってやってみたいの」


「え、ええと。いいけど、本当に何もしない? なんか月夜、最近エッチ過ぎるから、体の危機を感じるけど」


「本当だって! 何もしない。って変な言い訳する男じゃないんだから。とにかくわたしは、秋の匂いに包まれながら、安眠したいのよ。ね? お願い」


 ううう、と秋はたじろぎながら、仕方ないなぁと言って、


「でも狭いよね。くっついて寝るのは、月夜的に大丈夫なのかな。ちゃんと薬は飲んで寝ないと駄目だよ」


 わかってると言って、わたしは準備に取りかかります。薬を飲んで、トイレを済ませて。


 部屋に入ってベッドを見ると、秋が布団を被って、恥ずかしそうにこちらを見ています。

 ああ、何ですか、凄く可愛くて、可愛過ぎて、もうどうにかなりそうです。どうにかなっちゃったらいけないのですけど。


「早く電気消して、入って来て。キスはそっちからしてよ」


 そう言われて、わたしは電灯を消して、側に近寄ります。

 それで、ベッドに入って、しかし近頃は寒いなと思いながら、なら温めて貰えばいいんだと考えて、布団の中で秋に抱きつきます。

 そして、すかさず唇を奪います。ってわたしがタチ側だなんて、今まで想像した事もなかったんですけど。


「あ・・・・・・ん、むちゅ、ちゅ、は・・・・・・あん、ちゅ、んん」


「つ、月夜・・・・・・凄いよ。何だか冬なのに熱くなって来ちゃうくらい。月夜の唾液が入って来て、舌が絡まって、んん・・・・・・ああ。月夜ぉ、私も月夜が好きぃ!」


 絡み合って、ちょっと悪戯心で、秋の胸を触ってみると、秋は飛び上がります。


「あ! だめぇ、そっち触っちゃ、いやだよ。月夜ってホントにエッチなんだから。ん、ちゅ。今日はこれでおしまい。月夜が変な事するから、お預けだよ」


 ああ、そんな。ちょっとした出来心なんです、向こうを向かれてはわたしも寝るしかないじゃないですか。


 秋を後ろから抱き締めて、いい匂いと言ってぎゅっと感触を味わいます。

 そうすると、背中越しに恥ずかしそうにしているのがわかりますし、ちゃんといい感じなのも伝わって来ます。

 それでわたしは秋の方を向いたまま、枕に顔を埋めて、何とか寝るのに集中しようとして、少しばかり寝られませんでしたが、いつの間にか寝入る事に成功していたみたいです。



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