第9-2話お風呂と看病と
冬休みです。
一度病院にも行かなくてはいけないのは、いつもの事なので、もう秋にも知られているのですが、とにかくラブラブ出来るのではないでしょうか。
桐先生の認可を得た様なものですし、流石にセックスまで発展してしまったらマズいでしょうが、どこまでしていいかわたしには判断出来ないですし、ペッティングを経験している未成年の数の統計は結構多かったと記憶していますが、同性でのセックスはどこまでやってもペッティングではないかと知識のない頭で考えるのですが、じゃあヤっていいのかって問題で、未成年の性愛の権利ってどこまで認められてるのか知りませんし、感染症のリスクも考えたら、やはり今の段階でヤってしまうのは大変によろしくないし、そもそも秋はまだ早いと頑なな姿勢を見せるんではないかとも思う訳で、こんなに悶々としてるのは大変発情しているからなのだろうけど、一人で発散させるにも中々タイミングがなくて、秋の寝てる間にするのは至難の業なのですよ、ええ。
一回ヤってみて、かなり危険度の高い行為であったので、興奮するどころじゃなかったし、今でもあの時ちゃんと絶頂を迎えられたのか記憶にないくらいです。こう言う状況が興奮する人とは、わたしは違うようですね。
とりあえず帰って来て、炬燵が暖まるのを待って、飲み物もホットの紅茶を入れて、素早く冬休みの宿題に取りかかるのを二人でやっていて、その時は結構ちゃんと集中出来ていたと思いますが、夜ご飯を食べる時辺りから気が気じゃなくて、全然食事が喉を通らなかったから、少しだけしか食べられませんでした。
楓ちゃん達には、心配されましたが、秋は何やら察しているのか、こちらも不審な様子ではなかったでしょうか。
そうして、少ししてから、チラチラと秋を見て、わたしは段々ぼんやりして来ながら、勇気を出して話を振ります。
「ね、ねえ・・・・・・。今日さ、一緒にお風呂入ってくれないかな。いいでしょ?」
ぼんやりした頭で上目遣いになっていたら、秋は何だか真っ赤になっていって、うーんと唸っています。
「何だか変な目つきなのが怖いけど、まあお風呂くらいならいっか。そうだね、って私も月夜の裸見ちゃうけどいいの? 前凄く恥ずかしがってたじゃない」
「い、今はいいの。恥ずかしいけど、わたしも秋が見たいから・・・・・・あ、言っちゃった」
どうにかなりそうで堪らない様子のわたしを見かねてか、秋はじゃあお風呂のお湯張って来るよ、と言ってリビングを出て行きます。
いけません、もうじわっと濡れて来ているのですけど、どうすればいいのでしょうか。
それよりも何だかそればかり考えているからか、随分熱っぽくなって来たので、少し落ち着け冷静になれわたし、と呪文のように唱えて、それでも落ち着けるはずもなく、その時の経過の態度に死刑囚が執行の間際に待機している気分みたいになってそわそわしていました。死刑囚に知り合いはいないし、死刑囚の気持ちなんて何かの記述を読んだ訳でもないから、勝手な想像による比喩なのですが。
そうしてとにかく入る時間がやって来ました。脱衣所でそろそろと脱いでいると、結構向こうもそおっと脱いでいるみたいで、同じ気持ちなのかなと思うと少し安心しました。
わたしは身長も低いし、体重はあまり食べられない上に吐いたりする事もあるから、かなりのガリガリなので、よく考えたら人に見せられる様な体をしていないのを思い出して、ああそれに胸も小さいし、気持ち悪がられないかと思っていたのですが、秋は脱いだわたしを見て、ポツリと呟きます。
って言うか、あなたもはよ脱ぎなさいよ。
「肢体を見るって、芸術だね。ちょっと痩せすぎて心配になるし、ルノワールの裸婦像みたいなのも好きになって来たのでもっと肉づき良くなって欲しくもあるけど、やっぱり好きな子だから何でも綺麗に見えちゃうのかな。で、私はどうかな?」
そうやってするっと脱いでいき、かなりプロポーションが美しくて、それでいてスポーツをやっているからか、胸の形は綺麗なのにそれほど大きくなくて、いえもう少し言えば控えめであって、親近感湧いてもいいのかなって思っちゃうし、変に声が漏れてしまいます。
って言うか、筋肉がほどよくついている体って、これほどエロいなんて思ってもみませんでしたよ。
これがわたしの彼女って、よくよく考えたら、釣り合い取れてなさ過ぎで、ちょっとへこみそうになります。
「さ、早く入るよ。そんなにジロジロ見ないでよ。最近、月夜エッチな目で見すぎだよ?」
促されて怒られもしながら、お風呂場に入ります。
どうしようかと秋は言って、二人で洗いっこしないかと提案すると、ああ確かに背中は洗いにくいもんねと返されて、浸かる前に体を綺麗にする事にしました。
腕や足など前を洗ってから、背中なのですけど、先にわたしが洗って貰う事になって、秋のタオルが擦る感じが何とも言えない気持ちになりそうで、もう感無量としか言えないです。
それでわたしが秋を洗う番になって、秋の背中を擦っていると、秋の今でもジョギングとかやっているみたいなので日焼けしている肌を見ていると、何だかじんわりして来てぼんやりもして来てしまうので、わたしはそのまま後ろから抱きついてしまいました。
「ちょ、ちょっと月夜! 駄目だよ、そんな事しちゃ。あ! 何か柔らかいものが当たってるけど、これってもしかして・・・・・・。ああ、変になっちゃうから駄目だったら」
そんな風に言われていますが、わたしはどうもこのままおかしくなるんじゃないかと別の世界に飛ぶんじゃないかみたいな感覚になっていました。
「? 月夜? あれ、ちょっと大丈夫なの。しっかりしてよ、ああ、もう流してすぐ出るよ!」
そうして、秋にされるがままになって、お風呂場を出ます。
あれ? まだ浸かってませんよと反論する余裕も今はなく、ぼーっと突っ立っていると、秋はわたしの体を拭いて来ます。
その後に自分も素早く拭いているので流石の早業です。
「ほら、下着とパジャマ着て」
秋に手伝って貰いながら、全部もたもたしながら着ていき、リビングに行こうとすると、
「ああ、駄目駄目。ちゃんとベッドに行くの」
と強く言われ、はて?と思いましたが、今は何故か従っていた方がいいと、部屋に向かいます。
「ほら、体温計持って来るから。温かくしてゆっくり寝るんだよ。何だ、熱っぽい顔してたのは、体調が優れないからだったんだね。無理してエッチな行動を遂行しようとしないでね。何より月夜の体が一番大事なんだから」
ああ、そうか。
わたしはまたこんな風に迷惑を掛けて、自分の欲望も思うように遂げられずに、ベッドでうなされなきゃいけないのですね。
そう思うと段々朦朧として来るのですけど、秋が戻るまで何とか意識を保っていようと思って、待っています。
体温計を片手に秋が戻って来て、わたしの脇に差し挟むと――これ本当に万歳してとか言いながら秋にして貰いました――側に座ってくれます。
しかし、わたしはかなり自己嫌悪に陥って、重い言葉を吐いてしまいます。
「ごめんなさい。時々、負担になるよね、わたし。
何だか秋がわたし中心で回ってしまうみたいで、わたしは自立出来てないし、エミリーもいるのに何で秋にばっかりお世話になってるんだろう。
わたしはどうして、秋と同じように立っていられないんだろう。
ちゃんと自分の面倒は自分で見て、尊敬出来る人間になれるように努力しないと、秋に呆れられちゃうし、わたしが寧ろ秋に何かしてあげたいのに、して貰うばっかりで、どうしようもなく性格も暗いし、体の自由がきかないなんて、介護されてるみたいだよね」
はあはあ言いながらも、途切れ途切れにわたしは嫌な事をぶちまけてしまっているのですが、これはわたしの悪い癖ですね。
どうしようもない自己嫌悪はそれこそ昔から張りついていて、わたしはそれ故に何か没頭するもので気を紛らわしていた所もありますし、秋はこんなわたしをどう思うでしょうか。
「全然私は気にしてないよ。と言うのも変だけど、私だって月夜にしてあげたいんだから。月夜がお月様なら、私は何になればいいのかな。
そう言う比喩を使うのは、月夜のこれまでの孤独を感じるからで、地球になれば足りるのかな。それとも太陽? 月世界のように隔絶した孤独な世界なら、ずっと二人っきりでいたいよ。
私は月夜がこれから、ずっとこんな病弱なのを一人で抱えていくのは見てられない。私が支える柱になりたい。
エミリーさんよりもずっとずっと何か出来る女になれるように努力するし、それをアピールするし、どれだけ月夜が自分を嫌いでも私はずっと月夜を肯定し続けて好きだって言い続ける。やっと見つけた片割れみたいに思ってるんだから」
そうやって捲し立ててから、秋はえへへと照れながら、じゃあと言って出て行こうとします。その秋にわたしは一言だけ。
「じゃあ、寝るまで側にいて。安心して寝つきたいの」
秋はかなり嬉しそうにしながら、頷きます。
「うん、ずっと見ててあげる。あ、薬を先に飲まないとね。忘れてたけど、持って来る所までは覚えてたんだよ。はい、どうぞ、お水も」
わたしはその秋の手際の良さ、いや既にわたしの処方されている薬を把握している手口にいつの間にチェックしてくれていたんだと思って、飲んでからありがとうと言って、秋の頬にキスをして布団の中に入って目を閉じます。
ですから秋がどんな顔をしていたかは、わたしにはわかりませんが、秋がまだ側にいるのを感じながら、意識は遠のいていった、いえ安眠と言えばいいかもしれない眠りに落ちていったのでした。
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