第9話

第9-1話恋人としての自覚?

9.




 冬休みがもうすぐ来ると言う所で、クリスマスももうすぐなのかと思い、そうだこの間の事を野分ちゃん達に相談しようと思い、朝に秋には皆に付き合い始めた事言っちゃっていいかなと聞くと、少し恥ずかしそうにしながら、うんいいよと素直に答えてくれました。

 何だか新鮮な反応で、秋もこんなに可愛い反応をエッチな雰囲気じゃない時もするんだ、なんて感動してしまって、ちょっと返事をするのが遅れてしまい、慌てる事になってしまう事態になったのは余計な話でしょうか。


 そうして話をすると、砂糖さんは真っ赤になっているし、野分ちゃんはやっとかって顔をしていて皆黙っているから、鬨子さんがやはり真っ先に声を出してくれます。


「いやー、まだ組んずほぐれつになってなかったのが不思議なくらいだよ。って言うか、キスくらい私らだってするよなぁ、さとちゃん」


 突然の告白に急な無茶ぶりに、砂糖さんは困惑します。


「それは、鬨子ちゃんが勝手にしてくるんだし、口同士ではした事ないでしょ。あんまり声を大きくして言わないでよ」


 何だか小声でなら言ってもいい関係ですと白状しているようですが、突っ込んでもいいのかと少し躊躇します。


「何だよ。さとちゃんが雰囲気やスポットが大事だとか言って、中々させてくれないんだろ。それにお風呂で髪の洗いっことかするじゃん。何、私との諸々は公言したくないものな訳?」


「そうじゃないけど、色々違う意見の人もいるから、他では言わないでって事。もちろん、月夜ちゃん達には言ってもいいんだけど」


「なら、問題ないじゃん」


 お風呂に一緒に入る!

 これほど今のわたしに耽美な響きがあるでしょうかと、その時は思いました。

 いや、と言うか突っ込むのが遅れましたが、鬨子さんよ、わたしらはまだ肉体関係にまで発展はしてないと言ってるでしょうに。何が組んずほぐれつですか。

 泥んこプロレスとか、あの手のアホな表現の見過ぎじゃないのかと疑ってしまいます。


「うーん、ならクリスマスに私がプレゼントよ、って言うのをやってみればどうかな。高校生でもヤっちゃってる子、意外に多いみたいだよ。うん、だって昔から性の問題は思春期に付き物だもんね。大人とヤっちゃったら、相手が捕まる訳だけど」


 爆弾発言。野分ちゃんはやはり一味違います。

 野分ちゃんの付き合ってる別のグループの子も既に誰か性行為を体験しているのでしょうか。


 しかもその場合、わたしの様なレズビアンとは違うだろうから、男としてるんですよね。

 うわー、名前を言ってはいけないあの人ではないけど、名前も形容もしたくないあの部分を受け入れないといけないって事でしょう。

 無理無理。絶対嫌だし、グロすぎる。


 そんな風に思ったのですけど、まあこれは別に見た事もないから想像で言っている訳でして、男と関係するのは襲われるのを警戒していないといけないくらいなので、まあわたしにはそれほど意味のない想定です。

 秋に突然生えて来る、とかエロ漫画みたいな展開には、人間の世界では手術でもしない限りあり得ない訳ですし。


 しかし、わたしはそれを本当に採用していいんだろうか。

 却下したい気持ちの方が強いなぁ、と思いながらそこまでして強引に迫れば、秋は色々してくれるのではと考えて、ふと秋はあんなに色々な事に疎いのだから、どう言う風に性行為をするとか、どうすれば感じるかとかあまりわかってないのかもと行き着き、ええとじゃあわたしが攻める側をずっとやるんですか、それは難しいなぁと思いながら、でも秋に満足して貰うのはいいかも、しかしそんなのこちらが相手にしてあげてる間に、こっちも我慢ならなくなってしまうのはどうするのかと言う疑問にぶつかり、いややはりもうちょっと性教育的なものを経てから、行為に及ぶ方がいいのだろうなと変に冷静になってしまいました。


 しかしお風呂は魅力的です。

 裸は恥ずかしいですが、恋人になったのですから、わたしだって秋の裸が見たいではないですか。

 だからその報酬を前にしたら、羞恥心よりスケベ心が勝ってしまうのは当然ですが、変にエロ目線ばかり向けていたら、ずっと一緒に入ってくれなくなってしまうし、どうしたものでしょう。


 ああ想像しただけでいけない気持ちになりそう、などと野分ちゃん達と別れて秋を待っている間にも妄想は止まらないで、クイーンの「キラー・クイーン」みたいに試みられる事を言われたら、もう罠に嵌まってしまいそうで、かなりわたしは単純なエロさであって、逆に言うならば変態的ではないんだよと言いたい気持ちもあるんで、エッチで何が悪いんだと今度秋に言われたらバシンと言い返してやろうだと思ってたら、愛しのダーリンこと秋さんがいらっしゃった。


 わたしは暖房の入っている教室から出るに当たって、コートを着てマフラーを巻いて、すばやく秋の横側に潜り込みます。潜り込むとは妙な表現をするなと思われるでしょうが、わたしはもう秋の彼女であるのです。


 だからこんな事をしたって許されるのです。甘々に過ごしたいではないですか。

 つまり何をしているかと言うと、腕を組んでいるのですよ、簡単な事実でしたね。

 ぎゅっと胸が当たっているくらいくっついて、もう有頂天です。


 秋はどうやら、最近のわたしを持て余し気味だと、わたし自身も感づいてはいるのですが、どうしてもこれまでの反動が強くて、甘えたくてしょうがないのはもうわたしだけの責任じゃないのはわかって頂けるでしょう。

 わたしをいかれさせたのは、秋なのですから。


 そう言えば、責任取ってよね、とか言った方が良かったのでしょうか。

 これは、ちょっと思い出しながらですからどうだったかわかりませんけど、チェックしておいて後で登場させられるかもしれません。


 そうして廊下を通って、靴を履き替える為に一旦離れて、名残を惜しみながら、靴を履いていると、そうだ保健室の杏子先生にも挨拶しに行かないとなと思って、再び秋と合流して密着します。


 秋は観察している限りでは、わたしの足りない胸の密着が気になって仕方ないみたいです。


 あれですか、秋はあれなのですか。

 所謂、むっつりスケベなのかしら。

 そうすると拗らせていくと、秋の方が変態度は上がっていくのかな、それをわたしは受け切れるのかな、でもあんまりアブノーマルなセックスは嫌だな、体力的にもわたしには難しいし、ああそれを秋は最大限に配慮してくれるだろうから、何も心配する事はないのでした。


 何と言っても、わたしは秋を信頼していますからね。秋の家庭環境は、これではいけないと思っていながら、何も出来ていないのだけど、とにかく秋自身はわたしを裏切る事はないと勝手に思っています。


 そうこうして校門付近には必然的に職員室があるので、そこを通りかかって保健室に行こうかと思っていると、中から桐先生と杏子先生がセットで出て来ました。

 お、何て桐先生は声をあげて、杏子先生はまあなんてちょっと興味深そうと言う目線を向けて来ます。


「あ、先生。今年はお世話になりました。来年も色々迷惑掛けると思いますけど、是非ともご指導ご鞭撻のほどお願いします」


「固いなぁ」


 と秋が苦笑している中で、桐先生はふーむと視線を向けて、


「まあ何だ、上手くやってるならそれでいい。集団生活は無理をしない程度にやる事やって、その中で学校だから友達と懇意にすればいいさ。うん、しかしお前らはちょくちょく色々な所で見かけたり話題になってるが、イチャつき過ぎだな。女同士で妊娠したとかはないにしろ、不純な関係に出来るだけ嵌まり込まないように注意しとけよ」


 そう言う桐先生に杏子先生が苦笑していますが、桐先生はいたって真面目なんでしょうね。


「桐先生、それじゃあある程度の乱れは認める様な言葉になってますよ。二夜さん、体は最優先に労らないといけないわよ。でもその辺は、ヘルプストナハトさんがしっかり管理してくれてるか。こほん、とにかく学生なんだから冬休みの課題にも余念はないようにね」


「ははは、何だか氷室先生の方が担任みたいだね。私は円座先生のクラスじゃないけど。じゃあ、さようなら」


「ああ、気をつけて帰れよ。ああ、私は面倒くさい仕事がまだ残ってるんだよなぁ。杏子よ、今晩付き合えよ」


「はいはい」


 何だか仲睦まじ気な二人の先生を尻目に、わたし達も負けないほどラブラブである事をアピールしながら、会釈をして帰途に着きました。



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