第8-7話キスをする体験
結構真剣にわたしの言葉を受け取ったのか、これまたわたしが洋楽を聴いているからなのか、秋はより外国語を勉強するようになっていました。
ドイツの血が混じっているからって、別に流暢に話せるとか読み書きが出来る訳でもないって事で、ネットで参考書を評判聞いたりしながら、学校の勉強とわたしの目標の手伝いに割く読書の合間に、しっかりその勉強時間を取っているのです。元々体が強い秋だから大丈夫だとは思いましたが、ちょっとハードワークに頑張りすぎだなと心配していると、それは月夜も同じだよと言われて、ハタとああわたしも空き時間は余力がある時は、ずっと読書しているなと思って、自己反省もするつもりでいましたが、そんな気にもならず、只管読みたい本を読みまくるのでした。
そうして秋の季節も秋は、元気に体育祭の準備に余念がありませんでしたが、わたしはもう残暑にへばりまくっています。
しかしこの季節は、密かにある理由から、わたしと秋の絆を結ぶ共通項がある季節だと思っているので、嬉しさを勝手に感じていたのです。
わかる人だけわかって欲しいとここでわたしが言うのは、これはわたしが勝手にロマンを感じている秘め事だからです。
体育祭の本番は、秋は全然運動部に参加しないでいたのに、わたしが見ている限りは活躍しっぱなしでしたが、わたしは日差しの暑さに駄目になったので、野分ちゃんに連れられて、保健室で後は休んでいました。
これについて後から、野分ちゃんにわたしの悪口を前に言っていたクラスメイトが文句をまた言っていたそうですが、野分ちゃんはどこ吹く風。気にしないでいいよ、と逆にわたしを励ましてくれるのです。
しかし、よく付き合いは表面上だけなのを気にしないと言っても、野分ちゃんは続けられるなと思います。メンタルはどうなっているのでしょう。
秋には競技に集中して欲しいから、野分ちゃん達にわたしが保健室にいるのは伏せておいて、と言っていたのですが、昼休みになってしまうと、秋はわたしを探して彷徨い歩いたらしく、保健室にまでついにたどり着いてしまいます。
とにかく今は落ち着いている様子を見て安心したのは見ればわかりますが、杏子先生に許可を取ってここで一緒にお弁当を食べようと言いますので、ちょっと恥ずかしい状況を先生に見られながら、少し甘い雰囲気を味わえたのかなと思って役得を感じていました。
その後はどう活躍したかは、野分ちゃん達や秋本人に聞いた話でしかわかりませんが、リレーやら何やら別に体育祭自体には興味もないので覚えていないのが不覚ですが、とにかく秋は活躍しまくってファンの女の子がとてつもなく騒いでいたそうです。
これってわたしは怒る所だったのでしょうか。秋はわたしのものなんだから、あんたらは別のヒーローを応援しなさいよ、と。
それとも秋に向かって、きゃーきゃー言われて、へらへらしないでよね、とでも言わなくちゃいけなかったでしょうか。
わたしはこの件については、別段何も言及せず黙っている事にしていましたので、秋も楽しかった事を大いに語ってくれるばかりで、やはり軋轢を生む様なコメントはしないで正解でした。
さて、それが時間も経過して、わたしに取っては多少過ごしやすい季節の冬がやって来て、とは言っても寒くなりすぎる時は布団の中でもどうしようかと言う場合があるので、色々と対策をするのですが、確かあれはクリスマスが迫った頃だったと記憶している時、秋がちょっと時間いいかな、とわたしにかなりトーンの落ちた声で語りかけてくるので、凄くわたしは怯えた様子をしていたと思います。
部屋には、ジーザス&メリーチェインの「サイコキャンディ」が流れていると言うおかしな状況。
ねえ、こんな風にノイズミュージックに近い音楽を掛けていても、文句の一つも言わないでスピーカーで流すのを許してくれる同居人なんて最高じゃないですか。
わたしは長時間イヤホンで聴いてると、気持ち悪くなって来るので、いつもスピーカーで音楽を再生して、秋には悪いなと思っていたのですが、大分スルーして許容してくれる人なんていないでしょう。
そうそう、秋は今でも父親の所に行っていると母親には言い通していて、いつの間にか父親にも口裏を合わせて貰うように、頼み込んだみたいで、まあわたしはいいのですが、秋はいつまでもこれを続けられるのかと少し疑問です。
ちょっと寄って貰えるって言うから、わたしはこの時期には結構な家庭が出しているだろう炬燵から怪訝に思いながら脇に寄るようにすると、当然のように秋は横に入って来ました。
いやいやいや、あの何を考えているのでしょうか。秋さん、お戯れを。
「ねえ、いいかな。ずっと月夜は私を想ってるのに我慢してくれてるし、私もずっと考え続けて、ちゃんと答え出さないと駄目だと思うんだ。だから、まず、キス・・・・・・してみないかな」
じっと見つめられて――いつも秋はわたしの目を覗き込むように視界を外させないのですが――一瞬、何を言われたかわからなくて、ポカンと間抜け面をしていたと思います、それが瞬く間に桃色な思考に染まりそうになって来て、キスしている所を想像し始めそうになって、もう冷静ではいられなくなり、真っ赤になって絶句していると、
「いいでしょう。私もそう言うのわからないけど、本当は興味あるんだ。月夜を眺めてたら、可愛くて仕方なくなって来ちゃうし、ねえ、この気持ちって恋だと思うかな?」
あ、あ、あ、とわたしはまともな口がきけず、ちょっと間が空いて、その間も秋はじっと待っていてくれたのですが、とにかくわたしは反論しようとします。
「そんな事したら止まらなくなっちゃうわよ。好きの気持ちを出来るだけ閉じ込めようとしてるのに、秋にはわたしは負担になっちゃうから、相応しくないわよ。それにキ、キスなんてした事ないから、恥ずかしすぎてまともに出来る気がしないし」
しかし秋は尚も目を離しません。
しかしこの子は、本当に顔を近づけて話しますね。
今にも強引にキスされるのではないかとドキドキしていますが、秋はしっかりした淑女なので、そう言う手には及びません。
「いいよ、私の人生、月夜に預けたい。月夜は誰かが支えてあげないと壊れちゃうよ。ね? 私も月夜の事好きだって言えば許してくれる?」
感極まって、こんなに急展開で秋の心理の変遷はどうなってるんだ、吊り橋効果みたいなのの作用でのぼせてるんじゃないのかと、変に冷静になろうとしましたが、わたしも欲望を止める事は出来ないので、素直にここはならなくちゃと思い、真っ直ぐ言葉を返そうと試みます。
「嬉しい。わたし、秋が好き。大好き。好きぃ。大好きなの。キスしていいの? わたしみたいなポンコツで本当にいいの? キス、したい。したいよぉ」
うん、うんと言いながら秋は、
「じゃあちゃんとしよう。ほら、目を閉じて・・・・・・」
ロマンチックさの欠片もない状況だと言うのを整理しましょうか。
部屋には前述した過激な音楽が掛かっているのです。
こんなBGMを背景にキスしたがるカップルはいません。
だけれども、わたし達は最高潮にロマンチックな雰囲気になっています。
いいのでしょうか、満たされていいのでしょうか、姉はわたしの事を心配していましたが、姉の分も幸福になれると言う単純な構図に落ち着いても本当にわたしはわたしを許せるのでしょうか。
そんな事が咄嗟に脳裏に過ぎりましたが、秋の甘すぎて格好いい陶酔を感じさせる声に、何も考えられなくなり、素直に言われたように目を閉じます。
するとしばらくして、秋の口が触れるのがわかりました。
少しの間軽い口づけをしていると、わたしは我慢出来なくて、貪るように秋の口を求めていってしまいます。
秋は少し戸惑っている気がしましたが、求めに応じてくれて、わたし達はキスを続けます。やがて、わたしはもうここまでしているのなら、いいだろうと、今回が初めてなのに舌を入れてしまって、暴走は止まりません。
「ん・・・・・・・ちゅ・・・・・・あ、秋・・・・・・ちゅ、れろ・・・・・・んん! 好きぃ! もっと! もっと!」
「あ! 月夜、激しすぎるよ、ん・・・・・・ん、ちゅちゅ、っは」
秋はまだまだ控えめに舌を絡ませて来て慎重なんですが、わたしはどこか理性が崩壊していて、技術がある訳ではありませんでしたが、色情狂かと思われるほど、吸い付いて舌を絡ませて、唾液を交換する事に陶酔していました。
逆にわたしが抱き合うだけで、秋の胸に手を伸ばしたり、そう言う行為に及ばなかった事は、褒められてもいいとちょっと思うんですけどね。
炬燵は狭すぎるほどで、もう二人とも外に出てしまっていましたが、何だか熱いのは多分呼吸も荒くなるほど、愛し合う行為が高ぶっているからだと思います。
まだ足りないとわたしが思っていると、秋は唇を離し、
「きょ、今日はもうおしまい! あんまりしてると、月夜の体が心配だよ。変に発作が起こる時、あるって言ってたでしょ。それにこっちが何かいけない気分になりそうで、どうにかなりそうで、言葉に出来ないよ。月夜ってこんなにエッチだったんだね・・・・・・」
そうやってそそくさと自分のスペースに戻る秋。
え、エッチですか・・・・・・。やはりそう見えてしまいますか。
女だってエッチなんですよ、あなたもそのエッチな気分に支配されそうになってるじゃないですか、自分は違うとでも言いたいんですか、と何か言ってやりたい気持ちもありましたけど、恍惚とした感情でいっぱいになっていたので、わたしは黙ってこの高まった気持ちを静めるにはどうしたらいいだろうかと苦悩していました。
大体、高校生がそこまでの行為をしていいかはわかりませんが、わたしの下半身は湿っているどころじゃなく、パンツはぐしょぐしょですよ、どうしてくれるんですか。
エロい小説とかなら、ここは責任取って慰めてくれる、とかそんなパターンですが、現実は非情です。
と言うかエロ小説みたいにわたしが発情していても、秋には理性が働いたのですよね。
わたしは秋がいる為に自分でする事も出来ず、悶々としてあり得ないくらい興奮していましたが、またも発作は出ませんでした。
息苦しい状態は続きましたが、世界が反転しそうになる所まではいかないと言う感じでしょうか。
それでも気持ち悪いくらいドキドキが止まらないので、とりあえず頓服薬は飲んでおいて、ゆっくりしている事にしました。
本なんて読めないし、音楽も止めてしまいました。
と言うか、この状況普通に考えてエミリーはウォッチしてたんでは?
あの人には全てお見通しなのですね、とわたしは単純に考えていましたが、秋はどう思うのかなと考えます。
わたしは、いつでも彼女と一緒だったから、一人でいたりしてオナニーをするのもエミリーにやり方の情報を調べて貰ったくらいで、別人格ではない様な錯覚に陥るほど、信頼を寄せていて、オナニーも見られるとか考えていませんでしたが、これから性行為にわたしと秋の関係が発展してしまったら、エミリーはどうするつもりですかね。
そう思っていたら、翌日にこっそり彼女は、
「大丈夫ですよ、プライバシーはちゃんと守るつもりです。昨日も行為が始まったのを確認したら、音声で問題がなくなるまで、カメラは切ってありましたから」
と言ってくれて、わたしは秋の事を思ってホッとしていたのでした。
あれ、でも情事の音声は聞くと言う事なの、エミリー? と言う疑問を発する事は、わたしには出来ませんでした。
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