第4ー2話秋との出会い
その後わたしの昼休みは、一人テラスの隅の方で、楓ちゃんの作ってくれたお弁当を、食べてから、ゆっくりと本を読むと言うものでした。
それがある時から、何やら中央の方が騒がしかったのですが、わたしは特に気にしていませんでした。
大方、何か人気のある子が中心になって、話が盛り上がっていたのでしょう。
そうして、食後にわたしはエミリーに纏めてもらった、ミゲル・Nのソロ・アルバムの一覧と、内容紹介を少しずつ見ていました。
彼はギター・ボーカルのメンバーが死んだ事でバンドが解散してから、それはそれは大量にソロ・アルバムを出している人だったので、中古で集めるのも苦労して、幾つか少ない枚数しか持っていなかったのですが、こちらに来て配信サイトと契約した事がきっかけで、どれでも聴けるようになった事から、わたしは吟味しながら毎日どれが自分の気に入るか聴き比べていたのです。
そうしていると、人が一人わたしの座っている机の前に立っていたので、何かと思って顔を上げました。
ちなみにわたしは、幾ら集中していたとしても、周りの状況は敏感に見ている質なので、声を掛けても返事をしないとか、そう言う所はないのを断っておこうと思います。
顔を上げてみると、とても顔の整っていて、わたしの主観で言えば淡雪さんよりも数段格好良くて、女性としても綺麗な顔立ちで、背も高く知的な感じもする人が、わたしを見つめていたのです。
これは誇張ではありませんが、後から考えると、その時からわたしは既に彼女に気持ちが移っていたのでしょう、電撃的な感覚が宿っていたのを覚えています。
小説で書かれている事を信じるならば、昔の少女漫画の運命的な出会い方の様なものとでも言えばいいのかもしれません。その彼女がわたしにクールな微笑で話しかけて来ます。
「ねえ、ここいいかな?」
普通に相席を希望する言葉だと理解するのに、少しの間沈黙が下りてしまいます。そしてわたしはいつも他人と接したらこうなるのだと、自己嫌悪に陥りながら自己認識をしたのですが、
「別に席なら、どこでも空いてると思うけど」
とつっけんどんに返してしまうのです。
「いや、ここがいいんだ」
これをどう解釈したらいいでしょうか。
わたしはコミュニケーションに恐怖心も多少あり、自分がそう言うのを円滑に行える能力が低いのを自覚しているので、何故彼女がわたしに接触して来たのかわからないのです。
そもそも彼女は学年やクラス、どう言う女の子なのかもわたしは知りません。
「君、なんて名前なの?」
わたしはまだ返事をしていないのに、既に彼女は座っています。多少強引な子のようで、ちょっとわたしはその時点で怯えを隠せません。
幾らこんな美人だから見惚れると言ったって、逆に美人だから警戒心も起こるのではないかと思うのですが、どうですかね。
「人に名乗る時は、自分から名乗るのが礼儀って知らないのかしら。それにわたしはまだ座っていいって言ってないけれど」
雰囲気を壊す様な言葉を続けてしまうわたしに、彼女はにっこり微笑んで、それから不適に次の台詞を言います。
「ああ、私は
秋。それが彼女の名前です。ああ、これで彼女をぼかしながら登場させる事もなくなって楽になります。
皆さんご存知でしょうけど、わたし達の時代は結婚する時に、新しい姓を名乗ってもいいようになった前世紀から進んで、漫画とかに影響された様な名字を作ってしまう人も増えて、それも許可される流れになっていったので、こんな風に奇想天外な名前が増えたのも当然なのです。
しかしそうする事で、ある意味で昔の作家が、名前に意味を込めたみたいに、より名前の意味が深まると言う事では、姓名共に重要なポジションを昔以上に占めているとわたしは思います。
「ダブルなのかしら、ドイツ系の人って訳」
「そうそう、これまたお堅い両親で苦労してるんだけど、って私の事知らないの。この学校にいて?」
何か不思議な生き物を見る様な目をされました。そんなに秋の事をわたしが今まで知らなかったのがおかしいでしょうか。
「あなた有名人なの。悪いけど、別にわたしは他人にはそれほど興味はないから」
「ふうん」
そう言ってじろじろ見て来ます。こんなに綺麗なのだから、見つめられると恥ずかしいのが、普通の感情ではないかと思います。
それでもう言いそびれそうになっていたので、早く言ってしまおうと、わたしも自分の名前を言います。
「
「ふたよか。君のもまた凝ってるね。で、いつも何でここに一人でいるのかな」
呆気に取られてわたしは、暫し言葉を継げません。ぽかんとしてから言うには、
「別に昼ご飯の後に暇つぶしてるだけよ。特別な意味なんてないわ」
「嘘。だって君、こんなに寂しそうな目をしてる」
そう言われた時、明らかにわたしの顔には朱が刺していたと思います。体温が上がるのも感じていたかもしれません。
何でこんなにずばっと、話した事もない人に、わたしのこの頃の悩みを見抜く事が出来るのかと真剣に不思議です。
「寂しくなんかないわ。そんな事を言って馬鹿にする為に、わたしに目をつけたんなら、悪いけどもうわたしの視界から消えてくれない。嫌なら、わたしがどこかに行くけど」
そんな風にして睨みながら、立ち上がろうとすると、秋に制されます。
「別に君をからかおうと思ってる訳じゃないよ。ちょっと可愛い女の子が、ポツンとしているのを放っておけないって言うか、ある意味同類かもとか思ったのとかなんだけど。月夜だっけ、私と友達になってくれないかな。どう、お互い親しい友人もそんなにいないだろうし、丁度いいと思うけどな」
これは願ってもない申し出だと思いませんか。淡雪さんの果報は寝て待てが、もう来たと思っていいのかも。
いや、罠だとも考えられる、なんてぐるぐる頭を回って、出て来た言葉がこれです。
「友達っていきなりなるものじゃないと思う。好きにしたら」
何とも典型的な素直じゃない人間の言いそうな台詞ですよね。秋は苦笑しています。呆れられても文句は言えませんが、結構怯えているのが、わたしの心を読めるなら、秋にもわかるでしょうか。
「まあ、そうだ。だけど私は君が気に入ったんだ。うん、じゃあこれから二人でご飯食べながら、ここで話しようよ。で、今は何してたのかな」
これは言わないでいた方がいい事柄だと黙っていると、何と裏切り者が発生。
「月夜さんは、今後の音楽生活向上の為に、気になるアーティスト情報を閲覧していたのです。恐らく、この時代の一般的な女子高生には興味のない事柄だと思えますので、友好的な関係を構築したいと貴方がご所望なら、深く追及しない方が月夜さんの為でもありますし、そっとしておいてあげては如何ですか」
タブレットの画面から、インストールしているエミリーの声。フォロー入れてるつもりだろうけど、逆効果になりそうな事言わないで欲しいです。
これじゃ、引かれそうな音楽の趣味してるって言ってるも同然じゃないですか。
エミリーはもっと冷静なUSAIだと思っていましたが、違ったのかもと一瞬思いました。
「へえ、結構細かく見てるんだね。わ! これ前世紀のじゃん。クールだなぁ」
「そうでしょ、やっぱりキモいって思うわよね。え? 今、なんて」
まるで漫画か何かのキャラが言っていて、現実でこんな返しをする人はいないのではないかと、こんな表現に出会った時はわたしも思いました。
すみません、それは改めます。と言うか、人のタブレットを覗くのはマナー違反だと思われますよ、秋さん。
「うん、だって古い音楽にはかなり文化をリードして来た、画期的なのもあるんでしょ。うちは、両親の言いつけで、そう言うサブカルチャーみたいなのには触れさせてもらえないけど、凄いなぁ月夜は。今時の子で、そんな事やってる子なんてそんなに見ないよ。やっぱり本を読んでる姿を見かけた時、特別にビビッと来たのは間違いじゃなかったんだ」
なんだか夢見る少年でもこんなにキラキラした瞳はしてないんじゃないかと言うくらいに、わたしを無邪気に見つめて来ます。
わたしはそんな今までにない反応に、少しドギマギしてしまって、下を向くしかありません。
淡雪さんは年上でしたし、存在自体が格好いい人だから、ロックには興味を持ってくれたんだと思ってましたが、秋に至ってはカルチャーと来ましたか。
そう言う、人間の文化が生んで来た遺産を大切にする心のある人なら信じてもいい気が、その時のわたしにも芽生えていました。
そうなると、秋はまた質問攻めのように聞いて来ます。
「じゃあ、この間から読んでたりするのも、古典文学ってやつじゃないの。って事は、月夜は今現在死滅したと言われてる文学少女? うわー、クール! ますます気に入ったよ」
興奮は止まる事を知らないようです。秋の中でわたしの評価がうなぎ登り。そんなにこの趣味は凄いものじゃないとわからせるにはどうしたらいいでしょう。
もう放置するしかないと考えるのを放棄しようかと思っていると、予鈴がなったので、助かったとばかりタブレットを持ち席から立ちます。
「あ、私二組だからいつでも会いに来ていいよ。月夜は?」
「わたしは、三組。じゃあ」
「待ってるよ、またね」
道理で会った記憶もない訳です。二クラスずつの合同体育も、バッティングしないクラスじゃないですか。
と言うより、子供っぽいわたしと同じ学年だったんですね。あんなに大人っぽいのに、同じ一年か。
いや、でも年相応の顔も見せてくれましたっけ。
それにしても、有名人なのですよね。どう言う評判の人なのでしょうか、そんな事を考えて、わたしはその場を去って教室に帰っていたのでした。
野分ちゃんの様な同好の士を見つけた時より、なんだか持ち上げられた為に舞い上がっていたのでしょうか、私は午後の授業も手に付かず上の空で、いつの間にかそれを把握したエミリーが授業の内容を録音してくれていたので、後で復習する事が出来ました。
それで少し上気した気分のままアパートに帰ると、部屋ではまたしても淡雪さんがわたしの部屋で音楽を聴いていました。
しかも今度は楓ちゃんもいます。何故こんな風にたまり場に使うのかと聞いてみた所、
「だってエミリーのチョイスがいいんだよ。月ちゃんの好みも知れるしさ」
と言う事らしいです。それで何を聴いているのかと思えば、ケヴィン・エアーズの「おもちゃの歓び」なんてまた変な物を聴いています。
でもホール・ワールド名義のアルバムを選ばなかったのは、ある意味エミリーの英断でしょうか。
楓ちゃんもいますし、淡雪さんにもまだわたしの趣味の一角しか見せない方が良さそうです。
それでわたしは今そんな気分じゃなく、何かもっとロマンティックなのが聴きたかったので、変えていいかと聞くと、
「ええー、これなんかのんびりしたのも結構あるし、いいなと思ってた所なのになー。ちょっと今日はそわそわし過ぎじゃないか、月ちゃん」
とか何とか言うのですが、これには
「駄目よ、淡雪ちゃん。ここは月夜ちゃんの部屋なんだからね、聴きたかったら私達はもう戻りましょう。またご飯の時にお話すればいいじゃないの」
と言う楓ちゃんの一言であっさり引き下がってくれました。やはり二人っきりで聴く方が、何か効果があったりするんでしょうか。
誰かと聴いていると気も散るし、どうにもお喋りにもなってしまうので、音楽なんて一人でじっくり聴くものだと、わたしは思っていますが。
まあ、彼女らはとってもラブラブなので、立ち入る事はしなくてもいいんだと思います。
それでわたしはエミリーに、クイーンの「華麗なるレース」を掛けてもらう事にしました。
これなら多少は社会批判的な曲も入っていたりもしますが、「ユー・テイク・マイ・ブレス・アウェイ」や「ユー・アンド・アイ」とか「懐かしのラヴァー・ボーイ」なんかの、詩も曲のメロディもロマンティックに思える物が幾つも入っているので、いいんじゃないかと思ったのです。
シンセサイザーを使っていないのに、これだけ豪華で色々重ねているサウンドになっているのも、面白い所です。まだフレディ・マーキュリーがピアノをアコースティックに拘っているのも、また一つの特徴でしょうか。
夕飯の時はまだどこかぼんやりしていたので、楓ちゃんに心配されたのですが、あまりご飯も喉を通らないまま、そそくさと部屋に戻って来てしまいます。
それから、何を思ったかわたしは本を読む事もせずに、前述のクイーンを聴いたり、偶にプリンスの「キッス」を聴いたりしながら、枕を抱きしめたりなんかしながら、悶々としていました。
そうしていると、鋭くエミリーが一言。
「月夜さん、一目惚れですか」
ハッとして、わたしはエミリーのロボットに向かい合って、真っ赤になって恥ずかしかったのを押し隠そうとしましたが、無駄のようです。
「確かにかなり美形でしたね、貴方の基準で考えても、世間の指標でも」
もう枕を抱きしめるばかりで、わたしはエミリーに何も言えません。
「恥じる事はありません。貴方の恋が実るかはわかりませんが、そうやって人と交流を持とうとしていくのは、また良い傾向だと私は思います。自分の主張が出来ないままでは、社会に出た時に、損をする事も多いでしょうしね」
エミリーはやはり、どこまでもわたしの味方なのがわかっているので、安心出来る言葉を掛けてくれます。
しかし、秋はそれほどまでの人間なのか。
一目惚れなんて大抵は、交友を重ねていけば幻滅するのではないでしょうか。それとも恋は盲目、どこまでものめり込んでいくのかもしれません。
それをどちらにも断定しないで、どう転んでもわたしの糧になると、エミリーはわたしにとってのプラスだと見ているのです。
「でもわたし、秋だっけ。彼女の事、全然知らないし、秋だってわたしを知れば知るほど嫌になるかもしれないよ。それが正直、怖い」
「それは人間関係では誰でも抱く感情です。しかしそれだけに仲良くなりたいと言う気持ちも貴方にあるのです。その摩擦を恐れて、コミュニケーションを避けては、前進は絶対にしませんよ。もちろん、シミュレーション人格の様な相手だって、自分の都合のいいようにはいかないタイプに設定する事だって出来る訳ですから、実存よりも仮想が大事だと言い張る人には、それで充分でしょうが」
あまりにも適格に言われるので、自分の気持ちをどう考えていいかもわからなくなって来ました。そうしていると、ドアがノックされて、正体は淡雪さんでした。
「大丈夫か。月ちゃん、なんか今日はなんかおかしいよ。でも、あんまり悪い方に転がってる感じじゃなさそうだけどね」
全く、何でこうも鋭い人ばかりなのでしょうか。
わたしは淡雪さんを部屋に入れて、音楽をベートーヴェンの「第六交響曲:田園」に変えてみました。
少し、気分を変えたかったのもあったし、変に淡雪さんと一緒に今ロックは聴きたくなかったのですね。
「で、どうした?」
どうしても逃れられる感じはないみたいです。わたしは、エミリーにも目で制して(わかってくれるかはまた別の話ですが)、恋する気持ちの疑惑は隠して、友達になってくれそうな人がいるって体で、今日の事を話したのです。
「ふうむ、どうもそれくらい積極的に来てくれると、戸惑いもあるだろうね。でもそれだけに月ちゃんのトラウマで、怖い気持ちが強くもなるのかな。
そう言うのを乗り越えるのは、結構難しいんだよね。私も楓との関係を認められなかった訳じゃないけど、両親の影響で随分どう言う距離感で楓と付き合っていったらいいか、悩んでるんだ」
これは驚きです。何か言わせてはいけない事なのかと、こちらも身構えてしまいますが、わたしをそれだけ信頼してくれているのかもしれません。
もしかして、楓ちゃんと従姉妹なのもアドバンテージになったんでしょうか。
「実はね、私ってセックスについてかなり、気後れする所があるって言うか、そう言う発想自体罪悪感持つくらいなんだ」
どうもやはり重い話のようです。それでも聞く価値のある話であると、わたしはその時思いました。
「罪悪感って、つまり歪んだ抑圧みたいなものですか。そう言う性的な抑圧って、結構しんどいものだと思うんですけど」
「そうだね、特に私達みたいな同性愛者はそうかもしれない。月ちゃんもそう言う経験もあるんだったね。しかし、私のはまたちょっと違うかな。簡単に言えるかわからないけど、両親による刷り込み、なのかな。つまり、両親はセックスって言うのは、子供を作る以外には、基本的に必要ないものだなんて、いつも言ってたんだよね。処理するのも、そんなに欲望のない人達だったみたいだし、父さんに至っては、病気の気が結構若い時からあったから、そんなに勃起とかもしないみたいだったんだ。
セックスとかオナニーって、ある意味脳内麻薬の関係で、すればするほど嵌まっていって、中毒のようになっていくのかな。最初から彼らは、そんなに必要としないって言うか、そう言う抑圧を全部仕事とかに打ち込むのに夢中で、昇華していたのかもしれない。それで性教育とかも受けてたのに、周りの友達に仲間外れにされるくらい、私は性知識に疎かった青春だったよ」
なるほど、セックスに罪悪感って言うのは、その妄想や行為がいけない事だと思い込むようになったって訳みたいです。
「で、ね。私が同性愛者だとカミングアウトした時も、エロが少しでも載ってる作品とか見たりしていた時も、笑い話的にからかうんだよ。それで、なんかそれっておかしい事なんじゃって思わせられたんだろうね。恋の悩みもだから親には相談出来なかったし、ラブソングとかがテレビで流れていたりするのも、かなり気まずかった。
今でも恋愛小説とかラブコメ漫画なんかとか、ちょっとエロい展開のある作品なんか見ると、かなり恥ずかしいんだよね。
だから、こんなの言えるの月ちゃんくらいだけど、楓ともまだセックスはしてないんだ。あれだけ長くいるのにって思うでしょ。でも楓はそんな私を受け入れてくれたから、随分気長に待ってくれてるどころか、認知療法みたいなのの真似事もしてくれてる。
ちょっとは進歩したかなって思えるのは、楓と一緒に風呂に入るくらいだとか、一緒に布団で寝たりなんかは出来るようになったんだ。だけど、中々恥ずかしいもんだよ。
だからさ、月ちゃんのトラウマも、簡単に解決は出来ないって言うのは、月ちゃん自身が重々承知だと思う。だから気長に行こう。あんまり悩みすぎても良くないしさ、友達は自然に付き合っていける相手なら、仲良くすればいいって思ってればいいと私は思うよ。そんなに気難しく考えても、考えてるようには行かないもんだしね」
多分、淡雪さんはここまでまくし立てるように一気に話してくれたのは、わたしが思い込み過ぎて、自分で自分の掘った落とし穴に嵌まるみたいな事をしそうだったからなのかもしれません。
何も一日でそんな風に考えるのは早すぎるだろうって、そう気にし過ぎだって思う人もいるでしょう。
でもわたし達には、それくらい慎重に行動しながら、それで時には暴走しないように手綱を握りながらの、勇気を出す一歩が必要なのではないでしょうか。
これから秋と仲良くなれるかは未知数ですけれど、それに希望を持って臨む方がいいと、淡雪さんは遠回しに励ましてくれているのだと思いたいです。
そうして淡雪さんが帰ってからは、少し落ち着いて来たのですが、あの綺麗な秋を思い出すだけで、寝る時間になっても再び襲って来るドキドキが収まりませんでした。
それがあまりにも収まらずに、とうとう中々寝付けないのもあって、発作まで起こって苦しい思いもする事になってしまいました。
確か野球選手にもこの病気の人がいたと思いますが、もしかしたら活躍したりして興奮した時にも、あまりの熱狂に圧されたりして、発作が起こっていたのではないかと、わたしは推測するのですが、実際はどうだったんですかね。
とにかく、色々な状況で緊張が高じると、この発作が起こる事はしばしばだったので、もうそれに慣れてしまったとは言っても、いつもこの世が終わるかと思うくらいの苦痛に苛まれるのは嫌なものです。
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