第3話
「私の仕事は主に誰かへの助力、協力者として仕事をこなさせる。道具はこの革手袋で、自在にコントローラーを動かすの。今はアナタの持ってたタバコ型の薬とあの怖い男性が持ってたタバコの配置を入れ替えた、わかる?」
「いや〝わかる?〟じゃなくて。
わからないから、勝手に説明しないで
万能手袋とか別にいいから。」
性格が几帳面なのか聞いてもいないのに仕様や状況を教えてくれる。だがこんなにもわかりやすい有り難迷惑は無いので、ちゃんと不快になる。
「今頃部屋で大火傷ね」
「爆竹なの、アレ?」
「まぁ何はともあれ良かったじゃない、私はスパイ。今回は味方だったけど、次は敵かもしれないのよ?」
「..まぁ、確かにもう会いたく無い」
「そうね
幸運を祈るわ、ぼうや。」
口笛を軽く鳴らし颯爽と去っていく。
「ダサ..口笛鳴らしてぼうやは激ヤバじゃんか。」
『何はともあれクリアですー!』
「急に出てくるなってば。」
『いや、アナタに決められる事じゃないのでそれは別に』
「我が強いな、気難し。」
『今頃部屋で大火傷ですね!』
「だから何その表現、爆竹なの?
ねぇ、あれって中爆竹なのかなぁ?」
怖いので、確認せずに部屋に戻る。
再度扉を開けるときは別の場所に変わっているので、確認する手立ては無い
「都合良いよねこの施設。」
『元々アナタに合わせて創ってないので、それは自分の都合なので!』
「我が強いってだから。〝なので!〟じゃないよ怖いなぁ」
とても機械の精神とは思えない、人が入っているのか。それとも既に人類の範疇を超える勢いで進化を遂げているのか...信じる者は信じればいい。
「一つ聞いていい?」『はい!』
「偶々だと思いたいんだけどさ、あんな厄介な人達が沢山いたりするの?」
『どっちですかー!』
「女の方だよ、爆竹坊主じゃなくて」
爆竹をかじるイカレた男より、気さくな女の方が苦手なようだ。厄介なのはどちらだろうか?
『いますよ、ゴッロゴロ!』
「はぁ..。
ていうかそもそもなんでやるの?」
『……』
「え、ちょっと。
なんでこんな事皆やらされてんの?」
『さぁ..』
「わからん訳ないでしょ、ねぇ!」
『わからないって言ってるでしょ!』
「我で誤魔化すなよ..。
横暴だよそれ、ズルいなぁ」
『続いてのターゲットはこちら!』
「なんかコーナーみたいになってる」
ルーレット形式の画面が更にバラエティを煽る。
『好きなタイミングで〝ストップ〟と言ってください!』
「え、ス..ストップッ!」
ピタリと止まればいいものを暫く動いて余韻を残しつつ停止する。
『ザンッ!この方です!』
「なにザンッ!て。
ていうか普通に教えて手間だから」
画面の顔は今までと違い大きな特徴は見られず、寧ろいい印象が持てる。
「マッチングアプリで人気ありそうな顔だ...やった事無いけど。」
『さぁ扉をお開け下サイッ!
ターゲットが待っていますよ!』
「んなポジティブな事じゃないでしょ良い事なんかないんだから外には。」
『いいから開ケロッ!』
「なんで強い感じ出すの?」
最近覚えたプレッシャーという武器で外へと誘う、というより家から追い出し閉め出す。
「うわ、スゴッ..。」
空には大きな観覧車が聳えていた。
そもそもの屋外設定に驚きだろうが、ここは遊園地の類いなようだ。
「ターゲットの名前は?」
『鈴木。』「うわすごい普通!」
特徴ある名であれば声を上げ呼び易いのだが鈴木は余りにも溶け込み過ぎる
『そして仕事内容は鈴木を倒す事!』
「倒すってまた物騒な..」
『薬で何とかして下さい!』
「薬で倒すはもう殺害じゃないの?」
『詳しく説明をしますね!』
「クセ強いけど仕事できるよね。」
ランダムに現れる職業人が襲って来る
それらの幾らを倒してもいいが、ターゲットは先に決められた一人。それを倒すまではフィールドから出られない
「え、ヤバくない?」
『ヤバイですよ、ターゲットは鈴木』
「鈴木の職業ってわかる?」
『フレイムです』
「フレイムって何⁉︎」
『フレイムです』「いやわかんない」
『……』「教えてくれないんだ...」
謎の職業フレイムにドラッグストアが叶うだろうか。
「この職業人って何?」
『職業を持つ者の呼称です』
「あ、そうなの。
今更知る事じゃないよね多分」
『さぁ..』
「現れたな職業人!」
「..うわ、なんか来た。」
『サンダーの佐藤です』
「鈴木的な人じゃん怖っ」
「くらえ!」
おかしな光線銃から電撃を放つ。
「うわヤバっ..」「ふん」
「貴様!」 「今度は何?」
似たような世界観の男が、風を巻き上げ電撃を防ぐ。
『ウインドの坂崎です』
「ミュージシャンみたいだね。」
「そう、オレは空を奏でる歌手。
風は一つ一つ違う詞を持っている」
「ダメだあいつ面倒くさいタイプだ」
「そんなもんに風吹かすなら、もっと森を見ろよ」
「お前は...!」
「アレはだれ?」
『ウッディフォレストの宮口です』
「もう林業だよね、それ」
雷を風が防ぎ風を木が邪魔をする、そうなれば次は木を崩す事になる。
「見る森が無きゃあどうなるよ?」
「うわ。」
焔が上がりたちまち大木が燃え上がる
「あれだな」『鈴木フレイムです』
「職業プロゲーマーだっけ?」
格闘キャラが集まりメディスンを囲む
「決着をつけようぜ、いい加減?」
「奏でよう、風とともに。」
「草木に恵みを」
「燃え尽くしてやるぜ!」
「なんか始まりましたけど。
..ていうか鈴木一番苦手なタイプだ」
『薬を渡してみては?』
「そんな上手くいかないでしょ。」
睨み合う連中の隙間を抜い鈴木の元へ向かい肩を叩く。
「全部灰となれ..え、なに?」
「あーあの、これどうぞ。
内臓に良いので、早めに飲んで」
普通の丸い錠剤形の薬を渡す。
「あ、どうも。
うん..なんか効きそう」「それじゃ..」
『クリアーです!』
「なんか...普通に飲んだ」
大口なものほど、隙は大きい。
『お目覚めですか?』「あぁ..」
『次のターゲットは、大造です。』
「ああ彼か、久しぶりだな」
釣り上がった目が、血走って光る。
「服従でもしてもらおうかな...!」
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