11.美弥子、動物達と戯れる。
最近気付いたんだけど。
ここって、色んな動物が集まってくるんだね。
「チュンチュン」
朝一番に現れたのは、真ん丸とした雀ちゃん。
私よりも一回り大きいサイズで、その胸毛ならぬ胸羽に顔を埋めると、ふわっふわで物凄い気持ちがいい。
「ワフ」
次にやってきたのは、これまた丸っとしたワンちゃん。
柴犬っぽい見た目で、くるりと丸まった尻尾を振り乱しつつ、私や子カンガルー達と一緒に走り回る。警察官的な男の人達にもじゃれ付いて、非常に人懐っこい性格のようだ。
愛嬌もあって可愛らしいけど、人の顔をべろんべろんに舐めてくるのはちょっと困る。
他にも、狸や鳩、リス、モグラ、トカゲなんかも、日によってはやってくる。彼らの毛や肌を触らせて貰う時間は、中々の癒しとなっております。
特に毎日のように顔を出してくれるのは。
「ニャアン」
真っ白い毛が美しい、美人な猫ちゃんです。
目が糸のように細い女の子で、長い尻尾をくねらせながら、音もなく現れる。周りのカンガルー達とすれ違う度、ニャアン、ニャアン、と声を上げた。まるで挨拶をしてるかのようだ。
「こんにちは、シロちゃん」
私が声を掛けると、シロちゃんとあだ名をつけたその猫は、ワントーン高い声で鳴いた。目も一層細め、首を傾げる。その仕草がどうにもたおやかで、はんなりとしてる。鳴き声も柔らかく、人間で言う所の京都弁でも喋ってるかのようだ。
『あらー、ミャーコちゃんやないの。こんにちはー。昨日ぶりやねぇ』
とでも言わんばかりに、私へ顔を寄せるシロちゃん。すりすりとおでこを擦り付け、ついでに尻尾を私の体へ巻き付ける。
『はぁー、相変わらず可愛らしいなぁ。何でこんなに可愛いんやろか。カンガルーの奥さんが羨ましいわぁ』
『ありがとうございます。猫の奥さんも、しっかりしたお子さん達がいらっしゃって、羨ましいわ』
『いやいや、うちの子なんか、まだまだ半人前ですわ。図体ばっか大きゅうなって、中身は子猫ん時となーんも変わりまへん。下に弟なり妹なりいたら、多少は違ったんかもしれまへんけどなぁ。
あぁ、そうやわ。ミャーコちゃん、うちの子の妹になってくれへん? ミャーコちゃんみたいな妹がいれば、きっとあの子らも一人前になってくれるやろ。そやそや、それがいいわ。ミャーコちゃん、うちの子になろう。な? そうしよう』
と言ってるかは分からないけど、シロちゃんは私の襟首を咥えた。ひょいと持ち上げ、そのままくるりと踵を返す。
そんなシロちゃんの前へ、ママが素早く回り込んだ。
真上から、シロちゃんを見下ろす。
聖母のような微笑みを浮かべてるも、どことなく、威圧感が滲んでる。
私とシロちゃんは、静かにママを見上げた。
数拍後。
ぽとりと、地面へ着地する。
『いややわぁ。冗談よ、じょーだん。それ位可愛らしいって事。なー、ミャーコちゃん』
シロちゃんは、誤魔化すかのように私を舐めて、毛繕いをしてくれる。そしてするりと尻尾で一撫ですると、『ほな、さいならー』とばかりに去っていった。
『全く、毎度毎度油断も隙もないんだから……あなたも気を付けるのよ? 悪い猫さんに攫われちゃうからね?』
とばかりに、ママは私の顔を覗き込む。
了解です、という気持ちを込めて、ママの口元を撫でた。
「キュッ」
「クゥーッ」
昼食を食べ終わると、私は子カンガルー達と一緒に、広場の隅で砂遊びを始める。これもある意味修行の一環なのか、子カンガルー達は魔法で土を集めては、それぞれ山を作ってく。
私は魔法など使えないので、兄ちゃんと姉ちゃんが築いた砂の山を、一緒に触らせて貰った。
小学生以来の砂遊びだけど、中々に面白い。トンネルを掘ったり、手形足形を付けたり、カンガルー型に成形してみたりと、凝ろうと思えばいくらでも出来た。
特に棒倒しは白熱した。
最初は兄ちゃんと姉ちゃんと三人でやってたんだけど、気付けば子カンガルー全員で棒の刺さった山を取り囲んでた。各々の性格が垣間見られる取り方をしては、歓声や悲鳴を上げる。
因みに、一番勝率が高かったのは、私です。
まぁ、中身は腐っても大学生ですからね。どうしたら棒が倒れるのか、どこだったら大丈夫なのか、理論的にある程度分かるのです。加えてこの小ささですから、子カンガルー達よりも繊細に砂が取れるのですよ。
お蔭で皆が緊迫する中、余裕しゃくしゃくで一掬いしてやりましたわ。なんなら他の子カンガルーに、アドバイスを求められたりもします。
いやー、勝つって気持ちいいわー。ふははははー。
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