53.4 浮舟の出家

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 そんな妹尼の留守中にまた中将がやってくるの。お付きの人たちは浮舟と中将をくっつけようとしてくるので、逃げ場がなくなった浮舟は大尼君の寝室に隠れるの。それほどまでに浮舟は恋愛するのが怖かったのね。

 大尼君の寝室で眠れない夜を過ごしながら浮舟は我が身を振り返るの。


 お父さん(八の宮)には会ったこともなく、お母さんと遠い田舎を転々として、ようやくお姉さん(中の君)と会うことができたのにすぐに会えなくなり、薫と結婚してこれで幸せになれると思ったのに、匂宮と罪を犯してしまい、今こうしてさすらっているんだわ。

「常緑の橘に永遠の愛を誓うよ」

 匂宮の言葉にどうしてトキめいてしまったのかしらって浮舟は思うの。もう愛も恋もめてしまったみたい。匂宮のような激しさはなくてもいつでも優しく愛してくれた薫のことばかりが想い出されるの。

「こうして生きていることを(薫に)一番知られたくないわ」

 そんなことを考えながら夜は明けたの。


 その頃、僧がきて、横川の僧都が病気の女一の宮(匂宮のお姉さん)の祈祷のため都に行くって聞くの。そこで立ち寄った僧都に出家させてもらおうって浮舟は決心するの。夕方になって横川の僧都がやってきて浮舟の出家のことを聞くの。どんな理由があってもまだ若いし世を捨てるのはもったいないよと説得するんだけれど、浮舟の意思は固く、泣いて懇願するので横川の僧都は髪を下ろして出家させることにするの。でも髪を切る段になってあまりに見事な黒髪(当時の髪は美人の第一条件)だったのでハサミを持った手はしばらく動かせなかったんですって。


~ なきものに 身をも人をも 思ひつつ 捨ててし世をぞ さらに捨てつる ~

(死んでしまおうと自分も大切な人も捨てたのに私はまたその俗世を捨てるんだわ)


 やっと思いが聞き入れられて浮舟はホッとするんだけれど、中将はショックを隠せないみたい。初瀬詣でから帰ってきた小野の妹尼も驚いて悲嘆にくれちゃったのよね。




To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ なきものに 身をも人をも 思ひつつ 捨ててし世をぞ さらに捨てつる ~

浮舟が出家するときに詠んだ歌




◇「こうやって浮舟ちゃんの人生を振り返ると波乱万丈だねぇ」

 自分自身で冷静に思い返していますね。


「匂宮への気持ちは褪めたんだ」

 そのようですね。また薫の浮舟への想いも純粋な恋情ではなく、大君の身代わりだったと指摘する学者もいるようです。

「浮舟ちゃんも気づいていたのかな」

 薫が浮舟を宇治に連れて行くときに「亡き姫(大君)の形見」と和歌も詠んでいます。(episode50.4 薫と宇治へ)


「そんなふたりに振り回されて、思い悩んで出家しちゃった」

 薫のことを想い出すことはあっても、生きながらえていることは知られたくない。

 それに中将との恋愛なんて考えられませんしね。


「知らないからしょうがないけれど、浮舟ちゃん、今は恋愛どころじゃないもんねぇ」

 浮舟が出家すれば中将はあきらめるでしょうね。




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53.5  浮舟を想う涙

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