53.2 浮舟の苦しみ
✈✈✈Let' go to SenmojiGenji
大尼君の体調もよくなったので、妹尼は身元不明の姫も連れて小野(現・京都市八瀬、大原あたり)に帰ることにするの。
妹尼は献身的に看病するんだけれど、その姫の容態はなかなかよくならないの。困った妹尼はお兄さんの横川の僧都に助けてもらおうとするの。最初に見たときも美しいと感じたけれど、本当に優れた美貌の人だなぁと思うの。横川の僧都が一晩中祈祷を行うと、彼女に憑りついていた物の怪が姿を現したの。
「自分はこの世に未練があり宇治の美しいひとたちの所に住みついた。ひとりの姫(大君)は死んでしまい、この姫も早く死にたがっていたから死なせてやろうとしたが、お前(横川の僧都)に妨害されたから退散する」
物の怪はそう言って消えていったの。
正気を取り戻した姫はなぜ自分がこんなところにいるのかわからないみたいなの。それでもよく思い出してみると、あの夜悲しみのあまり川に身を投げようと決めた瞬間に匂宮が自分の手を引いて抱き寄せてくれたように感じたらしいの。でもそこからの記憶がなくて、今はどうしてここにいるかわからず混乱しているみたいなの。(川には飛び込まなかったみたいね)
「尼にしてください。もう生きてはいられないんです」
あの夜からどのくらいの月日が経ったのかわからないけれど、娘、そう浮舟は出家したいと願うの。小野の妹尼はせっかく助かった命なんだからと、出家はさせないで五戒(在家のまま受ける五つの戒)だけを受けさせてあげるの。
元気になれば気持ちも落ち着くでしょう、そう思って妹尼は浮舟の面倒をよく見てあげるけれども、浮舟の世を儚む気持ちは変わらないみたい。
「あなたはどのようなお家の方でどうして宇治にいらしたの?」
妹尼が尋ねるの。
「私が生きているということを誰にも知られたくないのです。誰かに知られてはとても困るのです……」
そういって浮舟は泣くの。その様子があまりにも苦しそうだったから妹尼はもう詮索するのをやめるの。
To be continued ✈✈✈
◇「やっぱり浮舟ちゃんだったね」
「川に飛び込まなかったんだね」
身投げはせず雨の中彷徨っていたようですね。
「匂宮の幻影が見えたの?」
美しい男が自分を誘い出して知らないところに置き去りにしたらしい、とあります。
「匂宮が浮舟ちゃんを横盗りしようとしたことは許せないけれど、幻影が浮舟ちゃんの身投げを防いだのはよかったのかな」
浮舟には宇治川を渡った匂宮との密会デートの記憶が残っていて「美しい男」から匂宮を連想したのではないかと解説しています。
「そこは薫くんじゃなくて匂宮だったんだね」
「なんにせよ、身投げしていなかったのはよかった……」
死ぬことのできなかった浮舟の苦しみがこれから始まります。
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53.3 想いは和歌にこめて
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