51.7 信じていたのに

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 浮舟のところに薫からも匂宮からも手紙が届くの。

「具合が悪いって聞いたけれど大丈夫?」これは薫の手紙。

「まだ迷ってんの? オレんとこに来いよ」こっちは匂宮ね。


 このとき薫の手紙を届けた男が偶然匂宮の手紙を届ける男を目撃するの。そのことを薫に報告するの。


 匂宮と浮舟が付き合っている? まさかそんな。いやありえなくはない。むしろ大いにありえる。あの女好きで手が早い彼ならありえる。ありすぎる。宇治の屋敷に匿って安心していた自分がバカだった。中の君とうまくいくようにサポートしてやったのにそっちはその恩を仇で返す気かよって薫は悔しく思うの。


「こっちは中の君のことが気になっていても不貞は犯していないのに」

 友人である匂宮にやましい気持ちを持ちたくないから中の君のことも我慢していたのに。僕は馬鹿みたいじゃないか。

 ここんとこ匂宮は病気がちだったぞ? でも時々行方不明になってみんなが探していた……。

 そういえば最近浮舟の様子もヘンだった。そういうことかよ。考えれば考えるほどすべてのつじつまが合ってくるの。


 薫は浮舟に手紙を送るの。


~ 波こゆる 頃とも知らず 末の松 まつらむとのみ 思ひけるかな ~

(あなたが浮気してるだなんて思いもよらなかったよ。僕のことを待ってくれていると信じてたのに)


 浮舟は「このお手紙は宛先違いです」なんて薫の追及をかわそうとするんだけれど、とうとう匂宮のことがバレてしまったと恐れてしまうの。


「より心惹かれる方をお選びになればいいのですよ」

 事情を知っている女房の右近と侍従が浮舟にそうアドバイスしてあげるの。

 どうしても薫さまじゃなくてもいいんですよ、と浮舟が匂宮に傾いているのを見透かしたみたいに話してくる女房たちなんだけれど、浮舟自体は本当にどちらも選ぶことができないの。

「もう死んでしまいたいわ」

 突っ伏して泣いてしまうの。


 すると次は手紙ではなくて武士が宇治にやってくるの。薫の命令で屋敷の警護をするらしいの。

 匂宮からも絶対に連れ出すから待ってろという手紙が届くの。浮舟はその手紙を顔に押し当てて声を上げて泣くの。もうどうしたらいいか混乱してしまって返事も書けないの。すると匂宮は薫に妨害されて返事が書けないと勘違いして宇治に向かうことにするの。

 けれども武士たちが警護していて匂宮が屋敷に近づくことはできないの。


~ いずくにか 身をば捨てんと しら知ら・白雲の かからぬ山も なく無く・泣く泣くぞ行く ~

(どこに行ったらいいんだよ。雲がかった山を泣いて帰んのかよ)


 匂宮は悲しみの中でひとりそんな歌を詠うの。結局浮舟には会えないまま匂宮は心引き裂かれる想いで都に戻るの。




To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ 波こゆる 頃とも知らず 末の松 まつらむとのみ 思ひけるかな ~

浮気を知った薫が浮舟に贈った歌


~ いずくにか 身をば捨てんと しら知ら・白雲の かからぬ山も なく無く・泣く泣くぞ行く ~

宇治まで逢いに来た匂宮が薫の派遣した武士によって妨害され悲嘆にくれた歌




◇とうとう薫が浮舟と匂宮のことを知ってしまいました。「キミがまさか浮気するなんてね」と浮舟に浮気を知ったことを伝え、武士を派遣して匂宮が浮舟と逢えないように警備を強化しました。一方匂宮も宇治から浮舟を連れ出す計画を立てているようです。


「もう浮舟ちゃん、どうしたらいいかわからないよね」

 女房たちは匂宮に惹かれているならそれでもいいのですよと話していますが、浮舟は完全に匂宮に心を移したわけではなく、薫にも惹かれています。


「でもその薫くんに匂宮のことを知られちゃった」

 身分の低い自分との将来をきちんと考えてくれている誠実な薫を裏切ってしまった。そして気持ちも少し匂宮に傾いてしまっている。言い訳の余地はないし、こんなふしだらなことをしてしまい薫に合わせる顔がありません。


 女房の右近は自分の姉の話をします。地方でふたりの男性と付き合っていて、片方の男がもうひとりの男を殺してしまった。すべては女が悪いということで勤め先のお屋敷を解雇され、辺境の地での暮らしを強いられたと。薫と匂宮が殺し合いをするとは思えないけれど、どちらかおひとりに気持ちを決めた方がいいですよとアドバイスをしました。


「浮舟ちゃんはどっちかを選べるのかな」

 次話が第五十一帖【浮舟】最終話です。





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51.8 浮舟の選択

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