51.6 引き裂かれる心

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

~ ながめやる そなたの雲も 見えぬまで 空さへくるる 頃のわびしさ ~

(キミに逢えなくて真っ暗な空みたいでツライよ)


 こんな情熱的な歌を匂宮から贈られて浮舟も同じ想いを抱いてしまうの。浮舟は薫と匂宮の板挟みになってしまい、どちらの気持ちに応えればいいのか悩んでしまうの。

 もし薫に匂宮のことがバレたらどんなに軽蔑されるんだろう。考えただけでも恐ろしい。かといって匂宮についていっても浮気性なカレにいつまで愛してもらえるか保証はないし、匂宮の妻の中の君(自分の異母姉)にも申し訳ない。どちらも選べない状況になっているのよね。そんなときに薫からも手紙が届くの。


~ ながめやる をちの里人 いかならん はれぬながめに かきくらすころ ~

(長雨が続くけれどどうしていますか? いつも以上にあなたが恋しいよ)


 立て続けにふたりの男子から恋歌ラブレターを贈られて浮舟は自分がとてもふしだらに思えてしまうの。


~ かき暮らし 晴れせぬ峰の 雨雲に 浮きて世をふる 身をもなさばや ~

(真っ暗な空の雨雲みたいに空に消えていく煙になってしまいたいわ)


 浮舟からの返歌を受け取った匂宮は彼女も自分を想っていてくれているって声をあげて泣くんですって。


~ つれづれと 身を知る雨の をやまねば 袖さへいとど かさまさりて ~

(降り続く雨のように寂しくて泣いています。涙をぬぐう私の袖がもっと濡れてしまいます)

 

 こっちが薫宛ての返歌なの。かわいそうに、寂しい想いをさせているなって薫は愛おしく思うの。


 薫は浮舟を4月に都に迎えることにするの。匂宮も都の目立たないところに隠れ家を用意して浮舟を匿う予定だって彼女に伝えるの。どこに隠れても見つけ出して迎えに行くと書いてある手紙が送られてきて、浮舟はもうどうしたらいいかわからないの。

 お母さんに相談しようかとも思ったんだけど、実家では娘(浮舟の異父妹)のお産で忙しく、お母さんは薫との結婚を喜んでいるので現在の三角関係の話はとてもできないの。


「二条院で匂宮様とニアミスしたって聞いたときは生きた心地がしなかったわ。万が一だけれど娘が匂宮様とマチガイを起こしたら中の君様に申し訳がたたないわ。娘とは親子の縁を切るしかないわね」

 お母さんがあのとき匂宮のちょっかいをを阻止した浮舟の乳母にそんな話をしているのを浮舟は聞いてしまうの。


 はしたない三角関係が世間に知られて物笑いにされたらお母さんにも迷惑をかけてしまう。こうなったらもう死ぬしかないんだわ。浮舟はそんなことを考え始めるの。





To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ ながめやる そなたの雲も 見えぬまで 空さへくるる 頃のわびしさ ~

匂宮が浮舟に贈った激情的な恋の歌


~ かき暮らし 晴れせぬ峰の 雨雲に 浮きて世をふる 身をもなさばや ~

浮舟が匂宮に返した恋に苦しむ歌


~ ながめやる をちの里人 いかならん はれぬながめに かきくらすころ ~

薫が浮舟に贈った誠実な恋の歌


~ つれづれと 身を知る雨の をやまねば 袖さへいとど かさまさりて ~

浮舟が薫に返した自身の辛さを嘆いた歌




◇「困ったね。浮舟ちゃん、どうしたらいいんだろう」

 激情的な匂宮に誠実な薫、タイプの違うふたりから熱烈な恋の歌が届けられます。

「どっちかに決められないんだね」


 母親に相談しようかとも考えましたが「万が一にでも匂宮様と間違いがあったら親子の縁を切る」と話しているのを聞いてしまいました。

「これじゃ、ママにも話せなくなっちゃった」


 ふたりからの想いにどう応えたらいいかわからない。

 三角関係などというはしたないことをしてしまった。

 このことが知られたら母親からは親子の縁を切られてしまう。


 揺れ惑う彼女の心情はまるで激流に翻弄される浮舟のようです。この巻名ですね。





NEXT↓

51.7 信じていたのに


【別冊】源氏物語のご案内

関連するトピックスがあります。よかったらご覧になってくださいね。


topics43 これぞテッパン中の大テッパン!

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054887212069

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る