51.5 密会、恋の罪

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 2月になって宮中で詩会があったの。薫が古今集の和歌を使って宇治の橋姫のことを詠むの。


~ (さむしろに) 衣かたしき こよひもや (われを待つらん 宇治の橋姫)~ 古今集

(宇治ではひとり寂しく僕のことを待っているんだろう)


 匂宮は「あの子のことを詠ってんのかよ」って思うの。どうやら薫も遊びではないらしい。俺の想っている同じ彼女オンナのことを薫も想っているのかって匂宮は焦るの。そして雪の降る中、無理をして匂宮は宇治に向かうの。

 大雪の山道を宇治まで逢いに来てくれた匂宮に浮舟は心を動かされるの。女房の右近はまた薫がやってきたフリを装って匂宮を手引きするの。右近は今回はひとりではごまかしきれないので、侍従という女房にだけこのことを打ち明けて協力してもらうの。匂宮は人目につかないようにって川の対岸に家を用意していて、夜になってからそこに浮舟を連れて行こうとするの。侍従が付き添うことになって匂宮の従者が舟を漕ぐの。舟に乗るときも下ろすときも匂宮が浮舟を抱きかかえてあげるの。


~ 年経ふとも 変はらんものか 橘の 小嶋の崎に 契るこころは ~

(常緑の橘に誓うよ。オレの想いは千年経っても変わらないよ)


 宇治川の小島にある橘の木になぞらえて匂宮は愛の歌を詠うの。


~ 橘の 小嶋は色も 変はらじを この浮舟ぞ 行くへ知られぬ ~

(橘の色は変わらなくても私がどうなるのかはわからないの)


 ふたりは小さな家で2日間もふたりきりで過ごすの。見苦しいほど戯れたって書いてあるわよ。でも匂宮は彼女は薫ともこんな風に付き合っているのかってやきもちをやくの。

「オレとこんなことしてんのにまだ薫のことが気になんの?」

 匂宮は思いつく限りの口説き文句で浮舟を惑わして、彼女のカラダも心も奪いつくそうとするの。

「薫とは会うなよ? 寝んなよ?」

 できもしないことを要求されて浮舟は答えることができないの。


 帰りも匂宮は浮舟を抱いて舟に乗せてこんなことを言ったの。

「薫はこんなことしてくれないでしょ。オレがどんなにキミを大事に想っているかわかってくれるよね?」

 浮舟は素直に頷くんですって。





To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ 年経ふとも 変はらんものか 橘の 小嶋の崎に 契るこころは ~

匂宮が浮舟を連れ出し川を渡る際に通った小島の木になぞらえて詠んだ歌


~ 橘の 小嶋は色も 変はらじを この浮舟ぞ 行くへ知られぬ ~

浮舟が「どうしたらいいかわからないわ」と揺れ動く心情を詠んだ歌




◇宇治は都から離れています。牛車で通うのも大変な距離を雪の降る夜に馬に乗って匂宮は駆け付けました。外出が気軽にできない皇族の匂宮の想定外の大胆行動です。

そうまでして会いにきてくれたのかと浮舟も女房の右近も感動してしまいます。


「俺の好きな女のことを薫も想っているのかって、匂宮のほうがあとじゃんか」

 匂宮にとって浮舟自身の魅力に恋をしたというより浮舟が「薫の恋人」だから奪いたかったのかもしれません。女房の右近もこのあと面倒なことにならなければいいのだけれど、と心配しています


「どうするの? 浮舟ちゃんが薫くんの恋人ってオフィシャルにはなってないけれど、だからって匂宮が結婚しちゃっていいの?」

 薫はゆくゆくは都に浮舟の屋敷を用意して呼び寄せようと考えていますが、匂宮は将来のことまで考えていません。


「なんかなぁ……」

「なんていったらいいんだか……」

 口元に手をあてて考え込むこまちちゃんです。準備した板は……、今日は要らないようですね。




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51.6  揺れ動く浮舟

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