51.4 揺れ動く心

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 二条院に戻っても匂宮は中の君を見ると浮舟のことを思い出してしまうの。その浮舟が二条院にいたことを中の君は匂宮に隠していたわよね。

「俺が死んだら心変わりするんだろ? そしたら薫と結婚できるもんな?」

 薫への嫉妬もあって中の君に恨みがましいことをついつい言っちゃうの。


 体調不良と偽って出仕出勤しないでいると、薫がお見舞いにやってくるの。落ち着いた態度の薫を見ていると、浮舟はこの薫と自分を較べてどう思っているんだろうって不安になるの。


 月日は経つけれど、匂宮は身分柄気軽に宇治に出かけられなくてストレスをためているの。一方の薫は久しぶりに宇治に出かけるの。浮舟は匂宮とあんなことになってしまって薫に会うのが恐ろしいの。匂宮を想い出したりもしているのに薫に対して素知らぬふりをしなきゃならないのもなんて情けないのかしらって思っているの。それとは逆に今薫とこうして会っていることを匂宮が知ったらきっと私を憎んでしまうわなんて心配もしているの。


 薫は長い間来られなかったこともクドクド言い訳はしないの。「恋しかった」「逢えなくて悲しかった」なんてことも直に言ったりはしないけれど、中々逢いに来られない辛さは感じられてそれは浮舟にとって誇張表現オーバーリアクションよりずっと心惹かれる様子なの。

 でも自分と匂宮とのことを薫が知ったらどんなに嘆いて自分を軽蔑するんだろうって浮舟は怯えるの。


 自分が知らない間に浮舟と匂宮が関係を持ったなんて夢にも思わない薫はしばらく見ないあいだに浮舟がずいぶんとオトナの女性になったなぁなんて見当違いな感想を持っちゃうのよね。


「あなたが住む家もできてきたよ。春には引っ越そうね」

 三条宮薫の本宅からも近いから毎日でも逢えるよと薫は言うの。

(匂宮さまも隠れ家を用意するって昨日の手紙に書いてあったわ……)

 浮舟は匂宮からの手紙を思い出すの。そうはいっても薫のことを裏切って匂宮のところになんて行くなんてそんなことできないわって思うんだけど、そう思えば思うほど彼の顔が目に浮かぶみたいなの。


~ 宇治橋の 長き契りは 朽ちせじを あやぶむ方を 心騒ぐな ~

(宇治橋のように末永い約束は朽ちたりしないから心配することはないんだよ)


 元々大君によく似ていた浮舟だけれど、あか抜けて随分美しくなったなぁなんて薫は思っているみたい。


~ 絶え間のみ 世には危ふき 宇治橋を 朽ちせぬものと なほたのめとや ~

(会えないときが心配なのにどうして安心なんてしていられるの?)


 浮舟は匂宮の男らしい強さや優しさに惹かれながらも、誠実で落ち着いていて雅な薫を拒絶することもできないの。そもそも最初に薫が夫になっているんだから、拒まないといけないのは匂宮の方なのに浮舟にはそれができないのよね。






To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ 宇治橋の 長き契りは 朽ちせじを あやぶむ方を 心騒ぐな ~

「これからのことは心配しなくてもいいんだよ」と浮舟を慰める薫の歌


~ 絶え間のみ 世には危ふき 宇治橋を 朽ちせぬものと なほたのめとや ~

(匂宮とのことがあって)負い目を感じる浮舟が詠んだ歌


◇「浮舟ちゃん、ぐらぐらだね」

 突如現れた匂宮に急速に惹かれますが、落ち着いていて誠実な薫を前にすると自分はなんてことをしてしまったんだろうと後悔もしています。


「なんてことをしてしまったって、女子じゃ抵抗できないじゃん」

「しかも薫のフリして来るなんて匂宮の計画的犯行じゃんか」

 確かにそうですが、その匂宮に気持ちが傾いてしまっていることは薫に申し訳なく思っているようです。


「なにも知らない薫くんが可哀想だね」

 しばらく見ないうちに大人っぽくなったなぁなんて感動しています。

「あああああ、知らせてあげたいような、知らない方がいいような、どうしたらいいの?」





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51.5 密会、恋の罪

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