51.3 横恋慕

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 匂宮と浮舟は一日中一緒に過ごすの。「オレがいないときはこれを眺めてて」と絵を描いてあげたりもするの。どんなに眺めていても見飽きないなぁと匂宮は思うの。欠点が見当たらなくて愛嬌のある美しさなんですって。

 そうは言っても中の君には勝てないかなぁとも思うの。それに正室の六の君(夕霧の娘)の華やかさにも負けるなぁとも思うんだけど、今は気持ちが盛り上がっているから「すっげぇ、いいカンジ!」「マジ可愛いぜ!」って思っているらしいわ。

 浮舟は薫ほど高貴で美しい男性は他にいないわって思っていたんだけれど、匂宮の華やかさやストレートな愛情に触れて心が揺れてしまうの。


~ 長き世を たのめてもなほ 悲しきは ただ明日知らぬ 命なりけり ~

(これからもずっとって約束するけれど明日からどうなるのか不安なんだ)


 キミのことを好きになりすぎて不安でたまらないんだって匂宮が歌を詠んでから筆を浮舟に渡して返歌を求めるの。


~ 心をば 歎かざらまし 命のみ 定めなき世と 思はましかば ~

(寿命だけじゃなくて心だっていつどうなっちゃうかわからないわ……)


 匂宮には浮舟が可愛らしく拗ねているように見えるのね。

「へぇ、誰に心変わりしちゃうの? 言ってみ?」

 名前は出さないけれど暗に薫のことを匂わせるのね。もちろん浮舟は答えに困っているんだけど、そんな姿も可愛らしくて仕方がない匂宮なの。


 夜になって従者が匂宮の所在をごまかすのも限界だって言ってきて、匂宮は名残惜しいけれど都に戻らなくてはならないの。


~ 世に知らず 惑ふべきかな 先に立つ 涙も道を かきくらしつつ ~

(涙で道が暗くなってこれからどうしたらいいかわからないよ)


 帰り際も浮舟と離れることができない匂宮の歌なの。


~ 涙をも ほどなき袖に せきかねて いかに別れを とどむべき身ぞ ~

(小さい袖ではぬぐいきれない涙だわ。どうしたらお別れを止められるかしら)


 浮舟も別れるのは悲しいみたいね。


 昔は中の君に逢うために必死で通った都と宇治を結ぶ道だったのに今は別の女子と恋する道になったなぁなんて、自分と宇治との不思議な因縁だなと匂宮は感慨にふけったの。






To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ 長き世を たのめてもなほ 悲しきは ただ明日知らぬ 命なりけり ~

「キミのこと好きだけどどうなるかわからない」と詠った匂宮の歌


~ 心をば 歎かざらまし 命のみ 定めなき世と 思はましかば ~

「わたしだってわからないわ」と返した浮舟の歌


~ 世に知らず 惑ふべきかな 先に立つ 涙も道を かきくらしつつ ~

~ 涙をも ほどなき袖に せきかねて いかに別れを とどむべき身ぞ ~

離れたくない匂宮と浮舟が交わした恋の歌




◇「浮舟ちゃんも匂宮のこと好きになっちゃってんの?」

 浮舟から見れば匂宮はお世話になっているお姉さん異母姉の夫です。中の君さまに顔向けできないと最初は戸惑っていますが、気持ちは匂宮に傾いてきていますね。


「なんか、匂宮のメッチャ好きってあてにならなくない? 中の君ちゃんのときもそうだったし、六の君さんと結婚した時もすぐ好きになってたじゃん」

 皆さんお気づきですか? こまちちゃんの匂宮呼称が呼び捨てになってます。


「おじいちゃんの源氏以上にチャラくない?」

「ただのチャラ男が女の子口説いてるだけならまだしも、浮舟ちゃんって関係がややこしいんじゃないの?」


 シュッ、シュッ、フゥゥゥゥゥ……

 こまちちゃんの素振りと精神統一が始まりました。

 ハァァァァァァァ……。



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51.4 揺れ動く心

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