48.2 中の君、二条院へ

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 2月になり大君の服喪期間(喪中)も終わり、二条院への引っ越しを翌日に控えた日に薫は宇治の山荘を訪れるの。中の君の衣装やご祝儀の品などの用意もしてあげるの。本当は自分もこうして大君を妻として都に迎えたかったのに、結局は大君からは友人以上には想ってもらえなかったんだなって薫は残念に思うの。

 自分も二条院の近くに引っ越すから何でも相談にのるよと中の君に話すんだけれど、まだ中の君は宇治を離れたくなくて沈んでいるの。


~ 見る人も あらしにまよふ 山里に 昔覚ゆる 花の香ぞする ~

(もうこの梅の花を見る人もいなくなるのに、昔を思い出させる梅の香りがするわね)


 中の君がそんな歌を詠むの。


~ 袖ふれし 梅は変はらぬ にほひにて ねごめうつろふ 宿やことなる ~

(今も昔も変わらない梅の香りだけれど(あなたの美しさは変わらないけれど)、引っ越してしまう先は他のオトコのところだよね……)


 弁の君は年をとっているので晴れがましい都には戻らず、髪を下ろして尼になって、山荘に残ることにするの。薫は大君を失ってしまうくらいなら彼女もいっそ尼にして、そうしたらその功徳で今も生きていてくれたかもしれないのにとまた後悔をするの。


~ 身を投げん 涙の川に 沈みても 恋しき瀬々に 忘れしもせじ ~

(涙の川に身を投げて沈んだとしても、大君を恋したときのことは忘れられないんだ)

 

 弁の君と大君のことを偲びながら、いったいいつになったら心が癒えるんだろう、きっと終わりなくいつまでもこんな気持ちでいるんだろう、って話したの。


 翌日、匂宮がよこしたお迎えの人たちで山荘が賑やかになるの。本当は匂宮自身が迎えに来たかったんだけれど、大げさになってしまうので都で待つことにしたみたいね。薫も使者を行かせたり、必要なものを用意してあげたの。ウキウキはしゃいでいる女房達と沈み込んでいる中の君が対照的なの。

 とても遠く険しい山道を越えて都へ向かうので、中の君はこんなに遠くまで大変な思いをして匂宮は通ってきてくれていたんだわ、たまにしか来られなかったのも無理はないわって思うの。


 中の君を迎える二条院は煌びやかなお屋敷で、調度品インテリアも立派で素晴らしいの。匂宮は中の君の到着を今か今かと待っていて、自分で中の君を車から抱きおろしてあげるの。この結婚話を聞いた人々は最初は「匂宮の愛人」としか思っていなかったんだけど、あの匂宮がここまでするのだから中の君はよほど素晴らしい女性ヒトなんだろう、「立派な奥さま」とウワサしあうの。

 薫も火事で焼けてしまった三条の宮(女三宮の屋敷)を新築中で匂宮の二条院のすぐ近くなの。中の君が無事二条院に輿入れした報告を聞いて、薫は安心しながらも大君ゆかりの姫君を完全に匂宮に渡してしまった寂しさとで複雑な気持ちだったみたいね。




To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ 見る人も あらしにまよふ 山里に 昔覚ゆる 花の香ぞする ~

大君との想い出の詰まった宇治を離れたくない中の君が詠んだ歌


~ 袖ふれし 梅は変はらぬ にほひにて ねごめうつろふ 宿やことなる ~

匂宮のところに行ってしまう中の君を想って薫が詠んだ歌


~ 身を投げん 涙の川に 沈みても 恋しき瀬々に 忘れしもせじ ~

亡くなった大君を今も想う薫の恋の歌




◇源氏が紫の上と暮らした二条院を匂宮は譲り受けました。その二条院自宅に中の君を迎えました。最初は自宅の近くに中の君の家を用意するなんてことも言っていましたが自宅に招いたということは「愛人」ではなく「奥様」という位置づけになりますね。思いつく限りの心遣いで中の君を迎えました。中の君の部屋はもちろんのことお付きの女房達の部屋まで気を配りました。牛車から抱き下ろしてあげるのは最上級の出迎え方です。


「これで宇治まで通わなくていいから中の君ちゃんといつも一緒にいられるね」

 宇治を離れたくなかった中の君ですが、都と宇治の道中の険しさには驚いたようです。


「なんだかんだいっても匂宮くんも頑張って通ったんだね」

「オシャレな二条院で幸せに暮らせるといいね」





NEXT↓

48.3  薫の想い 匂宮のけん制



☆こまちのおしゃべり

【別冊】源氏物語のご案内

今回は二条院お屋敷トピックスだよ。見てみてね。


topics41 愛と想い出の家

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054887556930

紫ちゃんを思い出しちゃうね。

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