46.4 匂宮と薫、大君と中の君

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 匂宮もお見舞いの手紙を送るんだけど、悲しんでいる中の君は返事を書くどころじゃないのね。匂宮は「薫にならこんな態度をとらないだろうに俺はスルーかよ」ってがっかりするのね。紅葉見物に宇治に行こうとも考えていたけれど、姫君たちが喪中だからそんな計画も実行できなくなったわね。それでもまた長文の手紙を書くみたい。


~ 牡鹿をじか鳴く 秋の山里 いかならん 小萩が露の かかる夕暮れ ~

(鹿が鳴く秋だけれど、どうしてる? まだ気持ちはしんどいよね?)


 中の君があまりにも泣いていて匂宮の手紙に返事をしないから、大君が代わりに返事を書くの。


~ 涙のみ きりふさがれる 山里は まがきに鹿ぞ もろ声に鳴く ~

(涙ばかりで霧に覆われている山里で声をそろえて(ふたりで)泣いています) 


 するといつもと筆跡が違うからいつも返事をくれているのがどっちで、今回返事をくれたのがどっちなんだ? と匂宮は悩むの。


~ 朝霧に 友惑はせる 鹿の音を 大方にやは 哀れとも聞く ~

(悲しんでいるキミ達のことを放ってはおけないんだよ)


「俺だって悲しんでいるよ」


 そんな手紙を匂宮はまた送るのね。姫君たちは匂宮のことを軽い気持ちでからかい半分の男の人たちとは違うって思っていて、男の人のステキなお手紙だとも思っているけれど、もうお父さんの八の宮もおらず、自分達は身分不相応だからこのままふたりで宇治で暮らしていこうと決めているみたい。


 日にちが少し経ち忌中が明けたので薫は宇治に行くの。すると、姫君たちと顔を合わすどころか物越しでの会話もしてもらえないので、不純な気持ちではないのにあんまりなんじゃないの? って薫がめずらしく女房の弁の君に不平を言うの。

 何年間も薫が八の宮に心を込めて尽くしてくれていたことを思い出した大君は少し近くで話してみようと思うの。けれども親兄弟でない他人に声を聞かせるなんて、まるで相手の気持ちやお金を頼りにしているように見えてはしたなく思えてしまうの。そんな気持ちも薫はわかってあげているの。


~ 色変はる 浅葱あさぢを見ても 墨染めに やつるる袖を 思ひこそやれ ~

(前にお見かけしたあなたが墨染の喪服を着て悲しんでいる気持ちを察するよ)

 

 ひとりごとのように薫が和歌を詠むと、


~ 色変はる 袖をば露の 宿りにて わが身ぞさらに 置き所なき ~

(喪服の袖も涙に濡れていて気持ちは癒えることはないのです)


 消えてしまうような声がして大君はそのあと奥の間にさがってしまうの。


 匂宮と薫が会うといつも宇治の姫君の話になるの。結婚の許可をとらないといけないお父さんの八の宮がいなくなったので、本人さえ了承してくれれば決められるんだけれど、姫君たちは匂宮を警戒しているの。匂宮の女好きのウワサは知られているのね。






To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ 牡鹿をじか鳴く 秋の山里 いかならん 小萩が露の かかる夕暮れ ~

匂宮が姉妹を心配して贈った歌


~ 涙のみ きりふさがれる 山里は まがきに鹿ぞ もろ声に鳴く ~

大君が落ち込む中の君の代わりに匂宮に返した歌


~ 朝霧に 友惑はせる 鹿の音を 大方にやは 哀れとも聞く ~

「俺も心配しているよ」と姉妹に再度贈った歌



~ 色変はる 浅葱あさぢを見ても 墨染めに やつるる袖を 思ひこそやれ ~

ひとりごとのように薫が詠んだ歌


~ 色変はる 袖をば露の 宿りにて わが身ぞさらに 置き所なき ~

大君が控えめに薫に返した歌



◇「姉妹からの歌はどっちが詠んだか匂宮くんはわからないんだね?」

 差出人も書いてありませんしね。ただ字体が違うのでいつもくれる方からでない歌だとわかったようですね。


「匂宮くんたちは結婚したいんだよね? でも大君さんたちはそんな気にはなれないってことかな」

 お父さんからも「簡単に結婚をしないように」と言われていましたしね。


「女好きの匂宮くんてやっぱり遺伝??」

 なんてったっておじいさまは伝説の(?!)プレイボーイですものね。





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46.5 ふたりの恋

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