46.3 八の宮の死

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 秋になって薫は中納言に昇進するの。仕事も忙しくなって中々宇治にも出かけられなかった薫なんだけど、ようやく八の宮を訪ねるの。街中の都はまだそうでもないんだけれど、宇治はすっかり美しい秋の景色なの。

 八の宮は自分が亡くなったあとの姫君たちのことを薫に頼み、薫もそれを引き受けるの。そしてもう一度あの琴が聞きたいと薫は八の宮にお願いするのね。八の宮は娘たちに琴を弾くように、それから若い者だけで楽しみなさいと部屋を出ていくの。


 お父さんから姫君を任せてもらえたのに、薫は特に口説いたりはしないで、我ながら奥手すぎるなって自分をディスるんですって。ゆっくりと自然に自分に姫君の気持ちが向いてくれたらいいと思っているみたいね。

 その夜は夜が明ける前に薫は帰り、また仕事の合間をぬって宇治に行こうと考えているの。匂宮も秋のうちに紅葉見物に宇治に行きたいと機会タイミングを探っているみたい。匂宮の手紙はときどき届くから、姫君たちは本気の恋とは思わずにあたりさわりのない返事を返しているのよね。


 秋が深まり、八の宮は阿闍梨の元で修行をするために山に行くの。姫君たちには万が一のときの心構えを話すの。自分が亡くなっても簡単に結婚などはしないように、宮家の名を汚さないように、皇族の娘としての品位を落とさないようにって伝えるの。姫君たちはお父さんが亡くなるなんて想像もできなくて、そんなお父さんの話に戸惑ってしまうの。

「留守の間も寂しがらないで。楽器の演奏でもして健やかに過ごしていなさい」

 そして八の宮は翌日に山の奥深くに旅立ったの。

「わたしたちひとりではとても暮らしていけないわね」

 大君も中の君もそんなことを言いながら寝るのも起きるのも遊びも勉強事も一緒に過ごすの。


 月日は過ぎて八の宮が山から戻る予定の日になるんだけれど八の宮は戻らず、代わりに使いの者がやってきて八の宮は病気だって言うの。驚いた姫君たちは急いで温かい着物などを山に届けさせるの。

 しばらくして八の宮は亡くなったという知らせが来るの。姫君たちはただただ悲しんでせめて亡骸に会いたいって言うんだけれど、後世に障りがあるからって阿闍梨が許してくれなかったの。


 薫にも訃報は届いて、この前話したのが最後だったなんてと悲しみにくれるの。それからすぐに阿闍梨のところにも宇治の山荘にもお見舞いの使いをやって、葬儀も薫が仕切ったの。姫君たちは薫の対応を有難く思ったの。






To be continued ✈✈✈



◇「八の宮さま、亡くなっちゃった」

 修行先の阿闍梨の元での逝去だったので、姉妹は死に目にも遺体にも会うことがかないませんでした。阿闍梨は具合が悪くなった八の宮が娘たちを心配しているのを「俗世のことは気にしなくていい」「成仏のさまたげになる」と諭しました。同じ理由で亡くなったあとも娘たちが八の宮に会うのを認めませんでした。


「お互い会いたかっただろうにね。なんだか可哀想だね」


 母親とは小さいころに死別している姉妹。父親も亡くしてしまいました。


「でも薫くんが来てくれて安心できたんじゃない?」

 そうかもしれませんね。





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46.4 匂宮と薫、大君と中の君

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