46.2 匂宮と中の君

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 匂宮は薫の代わりにノリノリで返歌をするの。


~ 遠近をちこちの みぎわの波は 隔つとも なほ吹き通へ 宇治の川風 ~

(そちらとこちらとを波が隔てていても風は吹き渡りお互いを通わせるよ=んなもん、あっという間に飛び越えるぜ?)


 薫は八の宮を訪ねることにするの。他にも音楽が好きな同僚や八の宮に興味がある人も一緒に行くんだけれど、身分の高い匂宮は出かけられないの。匂宮は自由に行動できない身分の重さを恨むのね。

 夕霧の山荘も別荘らしい趣のあるお屋敷だけれど、八の宮邸はもっと風情があってわびさびの世界なの。薫たちお客を出迎えた八の宮は琴の演奏を披露するの。


 出かけられなかった匂宮は少しでも姫君たちに自分をアピールしたくて桜の枝を添えて手紙を寄越してきたの。


~ 山桜 にほふあたりに 尋ね来て 同じ挿頭かざしを 折りてけるかな ~

(美しいと評判のここの桜をキミたちの髪飾りにアクセサリーにね(^_-)-☆ = キレイと噂のキミ達に逢いたくてやってきたんだ。仲良くしてもらえないかな)


 こんな恋の歌をもらったことのない姫君たちはお返事が書けないわとふたりで譲り合っているんだけれど、もったいつけるとかえって期待させてしまうからさりげないお返事をした方がいいって女房たちがアドバイスするのね。そこで中の君が返事を書いたの。


~ 挿頭かざし折る 花のたよりに 山賤やまがつの 垣根を過ぎぬ 春の旅人 ~

(アクセサリーの材料集めのついでに立ち寄る程度の春の旅行者なのですね = ほんのいっとき通り過ぎるだけの方でしょう?)


 とても美しい文字で書かれていて和歌としても匂宮の恋の歌を上手に交わしている歌で匂宮はグッときちゃったみたい。後ろ髪をひかれる思いで都へと帰っていったのよ。

 それからは薫の仲介なしでダイレクトに匂宮の手紙が八の宮邸に届くようになるの。けれども八の宮は都でも有名なモテ男が軽いお遊びで書いているんだろうから、求婚などと重くとらえないでおこう、「思わせぶりなことはしないで、当たり障りない返事をしておきなさい」と娘たちに話すの。大君はとても軽い気持ちでなど恋の歌が詠めないと言うので中の君が返事は書くことにするの。


「いっそのこと不美人ならこんなに悩むこともないだろうに」

 美しい姫君の将来をどうしたらいいかと八の宮は迷っているみたい。このとき大君が二十五歳、中の君が二十三歳になっていたの。

 ふたりの姫君のうちひとりでも結婚してくれれば、残りの姫も(経済的に)面倒を見てもらえるだろうからどちらかを結婚させようと思うんだけど、大切な姫を託すことのできる相手が見当たらないの。みんな興味本位でからかっているだけだと思っているの。でも匂宮は熱心に想ってくれているように八の宮にも見えるみたいね。






To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ 山桜 にほふあたりに 尋ね来て 同じ挿頭かざしを 折りてけるかな ~

匂宮が姉妹にアピールしたくて贈った歌


~ 挿頭かざし折る 花のたよりに 山賤やまがつの 垣根を過ぎぬ 春の旅人 ~

中の君が匂宮の恋の歌を上手にかわして返した歌


◇「薫くんは八の宮邸に行けたのに、匂宮くんはダメなんだ?」

 薫はいち貴族ですが、匂宮は現天皇の皇子です。とても高い身分です。薫は普段でも八の宮に会いに宇治に出かけられますが、皇子の匂宮はそれもできません。ですからわざわざ「初瀬詣で」というイベントを企画してその帰りに宇治に立ち寄るという作戦をたてました。


「初瀬詣でじゃなくて、帰りに宇治に立ち寄るのがメインなんだね」

 行動が制限されている匂宮が必死で考えた作戦だったのでしょうね。

 

「でも八の宮邸までは行けなくて残念だったね」




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46.3 八の宮の死

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